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封印式神編

797.満たされた気持ち

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 リディアは『金色きんいろ』のオーラを纏いながら、目を紅く発光させる。

 どうやら目が紅くなっているのは『紅い目スカーレット・アイ』を使っているワケではなく『スクアード』を使用している証であった。

(私が一つ強くなれば、貴方は三つ程強くなっていく。全くその差は埋まらないですね)

 その姿を結界の内側から見るラルフは『目標』である存在が更に、上へと上がった事に満足そうに頷く。

 ――自分は祖先に魔人の血を引いているわけでもなく、そして同じ人間であるエルシスのように魔力が秀でているわけでもない。

 かつてのラルフだったならば、同じ視線をリディアに送ってはいても、同じ感情を抱く事は出来ずに、羨望の視線で眺めているだけであっただろう。

 しかし他でも無いリディアに『立ち止まるな』と発破をかけられた事でラルフは、その空けられた差を埋める為に強くなろうと思えるようになっていた。

(ですが私は私なりに前へ進ませて頂きますよ。道は違えど辿り着く場所は、同じだと信じていますからね)

 ラルフは『』を纏いながら、静かに牙を尖らせるように力を溜め込むのだった。

 …………

 リディアは静かにスクアードと、金色のオーラを解除して通常状態に戻していく。その様子にフルーフと掛け合いを行っていたエルシスは、静かに結界を解いた後、心配そうにリディアに声を掛けた。

「同時に発動させる事はかなり辛そうだね?」

「ああ。俺は生粋の魔人では無く、あくまで人間だからな。この力はまだまだ使いこなすには時間が掛かりそうだ。それにお前に教わった金色も同時に使うとなると、戦闘の間に使う事が出来る時間は相当に限られそうだ」

 その言葉に同じ感覚を共有しているかの如く、エルシスは強く頷いた。

「キミはまだ若い。無理をしなくても大丈夫さ。もっと強くなれるし、ボクも協力する」

 リディアを自分の思想の後継者として選んだエルシスは、そう言って笑みを浮かべた。

「分かっている。俺とお前の利害は一致しているからな。俺の為にも精々利用させてもらうさ」

 そう言ってその笑みに笑みを返したリディアは、最後にその『目標』としている小さな体をしている、ソフィを一瞥するのだった。

「期待しておるぞ」

 そしてその視線に応えるようにソフィがそう呟くと、リディアは真剣な表情を浮かべて頷くのだった。

 ……
 ……
 ……

 その後もサイヨウの修行は続けられるようだったが、ソフィはもうその修行を見る事はせず、当初の予定通りに『アレルバレル』の世界に戻る事にした。 

「お主達の研鑽の形は見させてもらったが、何も心配する事はないようで安心をさせてもらったぞ」

 元の世界に戻ろうとするソフィを見送る為にその場に残っている者達。

 その中でソフィはリディア、ラルフ、ユファ、レアの顔を順番に見ていく。

 それぞれ足並みを揃えているわけではないが、一人一人が強くなる為に努力をして、一人一人が結果を出していた。

 その様子にソフィは言葉で発した通り、何も心配する必要がないと判断するのだった。

「貴様に勝ち逃げされたままで終われないからな」

「貴方に頼られる自分になると約束します」

「レア、私たちも負けてられないわね」

「あったりまえでしょう? この身体でも立派に

 ソフィはそう話す者達の顔を再度見ながら、満足そうに頷くのだった。

「それでは準備はよいか?」

概念跳躍アルム・ノーティア』の用意を終えたフルーフは、そうソフィに確認をする。

「うむ、頼む」

 ソフィのその言葉に『概念跳躍アルム・ノーティア』の為にスタックされた魔力が、発動を始めて魔法陣に乗せられていく。

「ソフィ殿。前にも話をしたと思うが何かあれば、この前に渡したモノをいつでも使うが良いぞ」

 跳ぶ寸前にサイヨウにそう告げられたソフィは、そういえば何か渡されたものがあったなと、懐にある物を掴みながら笑みを見せる。

「うむ。サイヨウ殿。

「任せられよ。お主の期待通りにしてみせよう」

 その言葉を最後に魔法陣が高速回転を始めて効力が発揮されて、ソフィを囲む光が一層強くなったかと思うと魔法が展開された。

 ――神域『時』魔法、『概念跳躍アルム・ノーティア』。

 フルーフの魔法によって、アレルバレルの世界へとその体が運ばれるのだった。

 アレルバレルの世界からリラリオの世界へ来る時とは違い、今のソフィはあらゆる意味で満たされた気持ちを抱く事が出来たのであった。
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