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ルードリヒ国王の指名依頼編

425.恐怖の屋敷2

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 ソフィの屋敷に泊る事になったリマルカは、案内された客室で寛がせてもらっていた。

「いやはや、流石は『破壊神』だな。配下にあんな恐ろしい者達を従えているとは」

 Aランク冒険者であり『ミールガルド』大陸では一流の冒険者とされている『リマルカ』が、ブラストという『破壊神』の配下に『開示スペクト』を使ったところ、

『ミールガルド』大陸であれば、あの男は直ぐにAランク冒険者となれる程であろう。それに10歳程にみえた『キーリ』と呼ばれていた子供にしてもそうだ。

 自分程の大男を軽々と持ち上げて、気絶した私を難なく中へ運び込んでくれたらしく、只者ではないという事は簡単に理解出来る。

 そして何といっても『破壊神』と戦い敗れた後、ソフィの配下になったと噂をされていた元A級の殺し屋『微笑』。

 あの『ラルフ』がこの場に居てソフィに付き従っている様子をみるに、噂通りで間違いないだろう。

 そんな者達が全員『破壊神』の部下ということなのであれば、ソフィという器の大きさは如何ほどなのかと、Aランク冒険者となった今でも『リマルカ』は理解が追い付かなかった。

 そんな事を考えていると、部屋にノックの音が響いた。

「は、はい!」

 客室のベッドで横になっていたリマルカは、慌てて起き上がりノックをした主に返事をするのだった。

「夕食の準備が出来たらしいわよぉ?」

 そう言って部屋に教えに来てくれたのは、長い黒髪が印象的な少女だった。

「ああ、ありがとうお嬢ちゃん。すぐに行くよ」

 部屋に呼びに来たのがあのブラストという目が怖い男でも『微笑ラルフ』でもなかった事に安堵を覚えながらそう言って立ち上がり、少女の後をついていくのだった。

 ……
 ……
 ……

 案内されたリビングでは、多くの者達がテーブルを囲んでいた。この場に居るのは『ソフィ』『リーネ』『ラルフ』『ユファ』『キーリ』『レア』『ブラスト』そして自分を含めて計八人となった。

「来たか、リマルカ! それでは食事にしようではないか」

 ソフィがそう言うと、皆が一斉に頷く。

 ヴェルマー大陸では初めての食事であったが、温かそうなスープにパン。スライスされたボアの肉と、色鮮やかなサラダが並んでおり、どれもこれも美味しそうだった。

 ソフィが食べ始めると皆が食べ始めたので、リマルカもご相伴に与るのだった。

「それで『レイズ』魔国の方はどうだったんだ、レア?」

 食べ始めて数分後に『キーリ』と呼ばれていた子供が、先程の黒髪の子に話しかける。

「ええ。最初はレイズにあるギルドの『レルバノン』ちゃんを紹介してもらってねぇ? 私も冒険者ギルドに所属させてもらう事になったわぁ」

 黒髪の子がそう言っているのを聞いた『リマルカ』は驚いてそちらの会話に耳を傾ける。

 どうみてもこちらも10歳くらいの子供が、この魔族が蔓延る大陸の冒険者ギルドに所属するなどと恐ろしい事を言っていたからである。

「まぁ基本的には、戦争で私や私の配下達が、壊した建物を魔法で修繕することが、メインになるだろうけどぉ。どうやらこの大陸にはもう一つの冒険者ギルドがあって、そこでは『闘技場』っていうのがあるみたいだから、いつかはそこに出てみたいわねぇ」

 レアがそう言うと、キーリは笑い始めた。

「そりゃいい。今のお前は『代替身体だいたいしんたい』とやらの状態なのだろう? つまり『オーラ』を纏った状態でくらいか? 闘技場Aランクまでくることが出来れば、俺がボスだから相手をしてやるぜ?」

 今のキーリであれば『代替身体だいたいしんたい』のレアにはあっさりと勝てるだろう。三千年前のレアの素の戦力値と今の『金色』を纏った状態のレアの戦力値はほぼ同値だからである。

 キーリはレアが断ると最初から分かっているからこそ、冗談で相手をしてやってもいいと口にしたのだった。

「貴方が闘技場のボスなの? 貴方も実際には越えてるわよねぇ? 今のままの身体じゃ絶対無理よぉ」

「ほう? キーリとか言ったか? お前なかなか見所があるとは思っていたが、そこまでやるのか? 魔族ではないよな?」

 それまで黙々と食事をしていた、ブラストがキーリに話しかける。

「俺は魔族じゃなくて『』だ! ソフィ様の配下にしてもらってからは大人しくしているが、だったんだぜ?」

 ――リマルカは完全に食べている手を止めてしまった。

(あの子が戦力値4億!? それにキーリって子が、こ、この世界を支配していた龍族だって!?)

 まだ話は続いていたが、リマルカの耳にはもう何も入らなかった。

 今のリマルカは早く明日になって、から出ていきたいと切に願い始めるのだった。

 そして皆の話を聞いていたソフィは、ゆっくりと口を開いた。

「皆、少し聞いてもらいたい事があるのだが……」

 ソフィがそう言った瞬間。その場に居た者達は口を閉ざして、一斉にソフィの方を見る。

「我は明日、ミールガルド大陸にある『ルードリヒ』王国へ行く事になった」

? それはこの世界の人間たちが治める国でしたか?」

 ブラストがソフィに質問をする。

「うむ。我も今まで『ケビン』王国としか親交がなかったものでな。今回初めて向かうことになるのだが」

「分かりました、それでは私が護衛を致します」

 ブラストが喜々としてそう告げると、その場の空気が一転する。

「お待ちください! 人間の国へ向かうのでしたら私の方が適任でしょう! 暗殺者等が居た場合、元殺し屋の私が居た方が対策によろしいかと」

「待て待て。護衛なら俺の仕事だろう? それに万が一敵が軍隊を動かしてきたならば、同胞達を配備させて空から一斉に襲撃をかけられる。準備を今直ぐに整えられる俺が数の上では適任だ」

「何を言っている! ソフィ様に対して『敵対行為』をとってくるというのならば、奴らが軍など動かしてきた瞬間に、俺が瞬時に奴らを粉々に破壊したあとに、恐れ多いことをした代償に、二度と生存が出来ぬように、人間共が生きている大陸ごと全て沈めてやるわ!」

「何でルードリヒ王国と、戦争を起こす前提になっているのよ……」

 リーネがそう言って、この場に居る者達の冗談か本気か全く分からない会話に苦笑いを浮かべていた。しかしリマルカは次から次に出てくる恐ろしい発言に手を震わせながら、考えないように必死に食事を続ける。

「そうだな。どういう話を聞かされるか分からない以上は、何かあったときにすぐに『ヴェルマー』の者達に事情を説明出来る者は欲しいな、そこでだユファ、お主に頼めるだろうか?」

「あ、私ですか? はい、もちろん。それでは私が同行致します」

「お主たちは我の留守の間ここを頼む」

「分かりました。しっかりソフィ様を守れよユファ」

 キーリがそう言うと、ユファは当然と言いたげに頷いた。

「それでは我の留守の間は、ここを頼むぞお主達よ」

「御意に」

「分かりました」

「分かったわぁ」

「気を付けて行ってきてね?」

 それぞれがソフィに返事をするのだった。
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