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リラリオの魔王編
355.セレスに残すレアからの手紙
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そしてそれから数日過ぎた夜。レアは音を立てずにセレスが眠る部屋に入った。
ベッドの上ですやすやと眠るセレスの顔を見てレアは柔らかい笑みを浮かべる。そしてセレスの頬を撫でながらそっと横に手紙を置く。
「行ってくるわね、セレスちゃん。元気でねぇ……」
その言葉を残して彼女はゆっくりと部屋の扉を閉めて出る。
もうほとんど誰も居なくなった『ラルグ』魔国の城の廊下をレアはコツコツと音を立てて歩く。
これから向かう場所はこの『リラリオ』という世界の頂点『龍族』がいるターティス大陸である。
思えばこの日が来るのは短いようで長かった。すでにレアがこの世界に来てから、十年近くが過ぎている。まだまだこの世界に来たときのレアは未熟で『真なる魔王』の領域がやっとの状態だった。
「色々あったわねぇ……」
この世界に来る前は数日で世界を取るつもりだった。しかしこの世界に来て早々に無視できない程、大きな力を持った存在『龍族』を知り、レアは簡単にはこの世界を支配することは出来ないと知った。
そこでまずは腕を磨きながら手足となる兵隊が必要だと感じて、ヴェルマー大陸の支配から始めた。
この世界の魔族は笑ってしまうくらい弱く、数をいくら集めた所で何の足しにもならないと感じた。仕方なくこの世界の同胞である『魔族』を育てる事を決意した。
叩けば反応が返ってくる程に素直な魔族達は、思った以上に鍛えがいがあり、面倒だと思った魔族の育成は思いのほか楽しめて『エリス』という逸材は自分の思っていた以上に強くなった。
そして他の魔族もこのままいけば『最上位魔族』を大量に生み出せるかというところで、魔人達に襲われた。このままレアが手を出さなければ『ヴェルマー』大陸は魔人族に支配されてしまう。そう考えた彼女は仕方なく襲ってきた魔人を全滅させる事にした。
魔人の王とやらはレアが思っていたよりは、遥かに弱く大した労力も感じなかった。
しかしその大陸で思わぬ拾い物をした。昔の自分と同じ嫌な目つきをした子供の魔人だった。
――レアはその時にフルーフ様はどういうつもりで自分を拾ったのかを知りたくなり、同じ目を見せた魔人の子供を連れて帰り鍛えてやる事にした。
当初こそは私の命をとる為に寝室に忍び込んだり、入浴時を狙ってきたりもしてきた。あの時は流石は子供が考える事だと、笑いが止まらなかった。
しかし正攻法にやらないと私を殺せないと知ったラクスちゃんは、真面目に研鑽を積み始めた。徐々に私に懐き始めていつしか私に対する殺意は、薄れていったように思う。
そんな頃だっただろうか。精霊が私に気づかせもせずにこの大陸へと入りこんできた。
そして私の情報を得るために配下の魔族達を操ってきた。そのせいでラクスちゃんは嫌な思いをさせられて、あろうことかエリスちゃんの片手を失う事件が起きた。流石の私も頭に血が上って直接手を下したラクスちゃんに手を出しかけた。でもそこで大怪我を負って、熱を出すエリスちゃんの説得で私は冷静になれた。
――今でもやはりエリスちゃんは、本当によくできた魔族だと思う。
もし私が逆の立場だったならば、他国の魔族の問題、ましてや魔人の為に同じことが出来ただろうか? 本当にエリスちゃんは優秀な魔族だった。
そんなエリスちゃんの手を奪った元凶の精霊ジウとやらは、私が種から消滅させてやった。
そして二度と同じことをさせないように精霊族を滅ぼすことに決めたのよねぇ。しかしそこで一つ大きな問題を発見した。この世界の『理』は、精霊が生み出した物であったという事。
私は別世界から来たからこの世界の『理』を使わずとも魔法を使えるけど、エリスちゃんやこの世界の魔族達は、精霊を失えば魔法を使えなくなるようだった。
私は悩みに悩んだ末に『フルーフ』様の大魔法『空間除外』の存在を思い出して精霊達を深い海へと大陸ごと、沈めて時を止める事にした。そうして試行錯誤を繰り返した結果は、これ以上ないほどの大成功だった。
エリスちゃんの手を奪った精霊をこの手で成敗出来た上に、この世界の『理』を残せた。
しかし精霊族と魔人族を滅ぼした事で、私は『龍族』に世界の敵と認識されてしまった。そのせいで魔族達は襲撃されて多くの同胞を失ってしまった。
私のこの世界の理解者で家族とまで思っていた『エリス』までもを失った。
―――決して許せる筈がない。
「今の私ならあの龍族に勝てる」
回想に耽っていたレアは、目を『金色』に輝かせながら廊下を歩いていく。そしてそこで起きているとは思っていなかった一体の魔人に遭遇した。
「ようレア、こんな夜更けにまたお出かけか……?」
「ラクスちゃん……」
……
……
……
ベッドの上ですやすやと眠るセレスの顔を見てレアは柔らかい笑みを浮かべる。そしてセレスの頬を撫でながらそっと横に手紙を置く。
「行ってくるわね、セレスちゃん。元気でねぇ……」
その言葉を残して彼女はゆっくりと部屋の扉を閉めて出る。
もうほとんど誰も居なくなった『ラルグ』魔国の城の廊下をレアはコツコツと音を立てて歩く。
これから向かう場所はこの『リラリオ』という世界の頂点『龍族』がいるターティス大陸である。
思えばこの日が来るのは短いようで長かった。すでにレアがこの世界に来てから、十年近くが過ぎている。まだまだこの世界に来たときのレアは未熟で『真なる魔王』の領域がやっとの状態だった。
「色々あったわねぇ……」
この世界に来る前は数日で世界を取るつもりだった。しかしこの世界に来て早々に無視できない程、大きな力を持った存在『龍族』を知り、レアは簡単にはこの世界を支配することは出来ないと知った。
そこでまずは腕を磨きながら手足となる兵隊が必要だと感じて、ヴェルマー大陸の支配から始めた。
この世界の魔族は笑ってしまうくらい弱く、数をいくら集めた所で何の足しにもならないと感じた。仕方なくこの世界の同胞である『魔族』を育てる事を決意した。
叩けば反応が返ってくる程に素直な魔族達は、思った以上に鍛えがいがあり、面倒だと思った魔族の育成は思いのほか楽しめて『エリス』という逸材は自分の思っていた以上に強くなった。
そして他の魔族もこのままいけば『最上位魔族』を大量に生み出せるかというところで、魔人達に襲われた。このままレアが手を出さなければ『ヴェルマー』大陸は魔人族に支配されてしまう。そう考えた彼女は仕方なく襲ってきた魔人を全滅させる事にした。
魔人の王とやらはレアが思っていたよりは、遥かに弱く大した労力も感じなかった。
しかしその大陸で思わぬ拾い物をした。昔の自分と同じ嫌な目つきをした子供の魔人だった。
――レアはその時にフルーフ様はどういうつもりで自分を拾ったのかを知りたくなり、同じ目を見せた魔人の子供を連れて帰り鍛えてやる事にした。
当初こそは私の命をとる為に寝室に忍び込んだり、入浴時を狙ってきたりもしてきた。あの時は流石は子供が考える事だと、笑いが止まらなかった。
しかし正攻法にやらないと私を殺せないと知ったラクスちゃんは、真面目に研鑽を積み始めた。徐々に私に懐き始めていつしか私に対する殺意は、薄れていったように思う。
そんな頃だっただろうか。精霊が私に気づかせもせずにこの大陸へと入りこんできた。
そして私の情報を得るために配下の魔族達を操ってきた。そのせいでラクスちゃんは嫌な思いをさせられて、あろうことかエリスちゃんの片手を失う事件が起きた。流石の私も頭に血が上って直接手を下したラクスちゃんに手を出しかけた。でもそこで大怪我を負って、熱を出すエリスちゃんの説得で私は冷静になれた。
――今でもやはりエリスちゃんは、本当によくできた魔族だと思う。
もし私が逆の立場だったならば、他国の魔族の問題、ましてや魔人の為に同じことが出来ただろうか? 本当にエリスちゃんは優秀な魔族だった。
そんなエリスちゃんの手を奪った元凶の精霊ジウとやらは、私が種から消滅させてやった。
そして二度と同じことをさせないように精霊族を滅ぼすことに決めたのよねぇ。しかしそこで一つ大きな問題を発見した。この世界の『理』は、精霊が生み出した物であったという事。
私は別世界から来たからこの世界の『理』を使わずとも魔法を使えるけど、エリスちゃんやこの世界の魔族達は、精霊を失えば魔法を使えなくなるようだった。
私は悩みに悩んだ末に『フルーフ』様の大魔法『空間除外』の存在を思い出して精霊達を深い海へと大陸ごと、沈めて時を止める事にした。そうして試行錯誤を繰り返した結果は、これ以上ないほどの大成功だった。
エリスちゃんの手を奪った精霊をこの手で成敗出来た上に、この世界の『理』を残せた。
しかし精霊族と魔人族を滅ぼした事で、私は『龍族』に世界の敵と認識されてしまった。そのせいで魔族達は襲撃されて多くの同胞を失ってしまった。
私のこの世界の理解者で家族とまで思っていた『エリス』までもを失った。
―――決して許せる筈がない。
「今の私ならあの龍族に勝てる」
回想に耽っていたレアは、目を『金色』に輝かせながら廊下を歩いていく。そしてそこで起きているとは思っていなかった一体の魔人に遭遇した。
「ようレア、こんな夜更けにまたお出かけか……?」
「ラクスちゃん……」
……
……
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