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リラリオの魔王編
356.魔王レアのファーストキス
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「……」
「……」
無言でレアとラクスは視線を交わす。やがてレアは表情を崩して笑みを浮かべながら口を開いた。
「こんな時間まで起きていたら、明日の鍛錬に遅刻するわよぉ?」
そういうレアに向けて『ラクス』は苛立ち交じりの声をあげた。
「お前が居ない鍛錬なら、遅刻もクソもねぇだろうが」
その言葉にレアはこれから龍族の元へ行こうとしていたことを悟られている事を知る。そこで沈黙したレアに、更にラクスは言葉を浴びせる。
「まだ俺は足手まといか?」
どうやらラクスはレアに怒っているのではなく、レアに頼られない自分の力の無さから自分に対して腹を立てているようだった。
「そうねぇ……。これから行く戦場に貴方を連れていくという選択肢は存在しないわぁ」
レアの言葉にラクスは泣き笑いの表情を浮かべる。
「そうかよ、だったら仕方ねぇよな……」
そう言った後にラクスは素直にレアに道を開ける。
「ラクスちゃん?」
「さっさと龍達を滅ぼして帰ってこい。お前を倒すのは俺の役目なんだ。龍族なんかに負けてみろ、ただじゃすまさねぇからな!」
レアはその言葉に微笑んでゆっくりと足を前に出す。ラクスの前を通り過ぎようとして、そこで足を止めてラクスに顔を向ける。
「?」
通り過ぎるとばかり思っていたラクスは、突然こっちを向いて止まったレアにどうしたとばかりに声を掛けようとして、掛けられなかった。
――その口をレアの唇が塞いだからである。
「!?」
突然の出来事にラクスは体が硬直して動けなくなった。やがてゆっくりとレアの唇が離れていく。
「セレスちゃんをお願いね?」
そう言ってレアは唖然として固まっているラクスに可愛らしく、そしてラクスが見たことのない程の満面の笑みを見せるとゆっくりとその場を去っていった。
「あ……。え……?」
去っていくレアの後姿を見ながら顔を真っ赤にして、自分の口に手を当てるラクスだった。
魔王レアはこれまで魔人ラクスと接してきた事で、彼が自分に対して、どういう感情を抱いているか。それをしっかりと理解していたのであった。
――そしてこれが魔人ラクスと魔族レアが交わした最後の言葉となるのであった。
……
……
……
「来たかっ!! あんまり意味はねぇかもしれねぇが『広域結界』を張っとけ! 感知装置代わりにはなるだろう」
ターティス大陸にある中央の宮殿。その玉座に居座るキーリは、いち早くここに近づいてくる魔族の魔力を感知して直ぐに側近達に命令を出し始める。
「分かりました! 部隊の配置はどうされますか?」
『十体の守護龍』の筆頭『ディラルク』は主に尋ねる。
「そうだな」
キーリは玉座の前に並び立つ側近の守護龍達の顔を見回して口を開く。
「『ディーザ』『アイン』『ドラン』『フィルク』。お前達は宮殿の外に居る奴らを連れて先陣をきれ」
「「御意に!!」」
始祖龍キーリに命令された『十体の守護龍』の四体は直ぐに外へと転移していった。
「『ゼグ』『ノイス』『アハク』『ズィーク』、お前達は上位龍達と合流して『アイン達』が突破された場合に備えて大陸中央で待機しろ」
「「御意に!!」」
龍族の中で最も力の強い守護龍達に命令を下した後、この場に残された十体の内『ディラルク』と最近『ブリューセン』と入れ替わりで新たに守護龍に任命された若き龍『ミルフェン』に視線を向ける。
「お前たちは、俺の傍に居ろ」
「「御意に!!」」
こうしてターティス大陸では、龍族たちが迫りくるレア一体に全軍で迎撃態勢に入るのであった。
……
……
……
「エリスちゃん、それに私に従ってくれた最高の者達……! 私が魔族をこの世界で、最強の種族に変えてあげるからねぇっ!!」
ヴェルマー大陸から『二色の併用』を利用して、恐ろしい速度で『ターティス』大陸へと向かうレアであった。
そしてレアの為に忠義を尽くして死んでいった魔族の者達に、せめてもの手向けとして魔族がこの世界で最強の種族となる歴史の転換時に『レア』に仕えた最も優秀なる者たちという、今後の『リラリオ』の世界の歴史にエリス達の名を遺そうという気持ちを胸にレアは戦場へ赴くのであった。
「……」
無言でレアとラクスは視線を交わす。やがてレアは表情を崩して笑みを浮かべながら口を開いた。
「こんな時間まで起きていたら、明日の鍛錬に遅刻するわよぉ?」
そういうレアに向けて『ラクス』は苛立ち交じりの声をあげた。
「お前が居ない鍛錬なら、遅刻もクソもねぇだろうが」
その言葉にレアはこれから龍族の元へ行こうとしていたことを悟られている事を知る。そこで沈黙したレアに、更にラクスは言葉を浴びせる。
「まだ俺は足手まといか?」
どうやらラクスはレアに怒っているのではなく、レアに頼られない自分の力の無さから自分に対して腹を立てているようだった。
「そうねぇ……。これから行く戦場に貴方を連れていくという選択肢は存在しないわぁ」
レアの言葉にラクスは泣き笑いの表情を浮かべる。
「そうかよ、だったら仕方ねぇよな……」
そう言った後にラクスは素直にレアに道を開ける。
「ラクスちゃん?」
「さっさと龍達を滅ぼして帰ってこい。お前を倒すのは俺の役目なんだ。龍族なんかに負けてみろ、ただじゃすまさねぇからな!」
レアはその言葉に微笑んでゆっくりと足を前に出す。ラクスの前を通り過ぎようとして、そこで足を止めてラクスに顔を向ける。
「?」
通り過ぎるとばかり思っていたラクスは、突然こっちを向いて止まったレアにどうしたとばかりに声を掛けようとして、掛けられなかった。
――その口をレアの唇が塞いだからである。
「!?」
突然の出来事にラクスは体が硬直して動けなくなった。やがてゆっくりとレアの唇が離れていく。
「セレスちゃんをお願いね?」
そう言ってレアは唖然として固まっているラクスに可愛らしく、そしてラクスが見たことのない程の満面の笑みを見せるとゆっくりとその場を去っていった。
「あ……。え……?」
去っていくレアの後姿を見ながら顔を真っ赤にして、自分の口に手を当てるラクスだった。
魔王レアはこれまで魔人ラクスと接してきた事で、彼が自分に対して、どういう感情を抱いているか。それをしっかりと理解していたのであった。
――そしてこれが魔人ラクスと魔族レアが交わした最後の言葉となるのであった。
……
……
……
「来たかっ!! あんまり意味はねぇかもしれねぇが『広域結界』を張っとけ! 感知装置代わりにはなるだろう」
ターティス大陸にある中央の宮殿。その玉座に居座るキーリは、いち早くここに近づいてくる魔族の魔力を感知して直ぐに側近達に命令を出し始める。
「分かりました! 部隊の配置はどうされますか?」
『十体の守護龍』の筆頭『ディラルク』は主に尋ねる。
「そうだな」
キーリは玉座の前に並び立つ側近の守護龍達の顔を見回して口を開く。
「『ディーザ』『アイン』『ドラン』『フィルク』。お前達は宮殿の外に居る奴らを連れて先陣をきれ」
「「御意に!!」」
始祖龍キーリに命令された『十体の守護龍』の四体は直ぐに外へと転移していった。
「『ゼグ』『ノイス』『アハク』『ズィーク』、お前達は上位龍達と合流して『アイン達』が突破された場合に備えて大陸中央で待機しろ」
「「御意に!!」」
龍族の中で最も力の強い守護龍達に命令を下した後、この場に残された十体の内『ディラルク』と最近『ブリューセン』と入れ替わりで新たに守護龍に任命された若き龍『ミルフェン』に視線を向ける。
「お前たちは、俺の傍に居ろ」
「「御意に!!」」
こうしてターティス大陸では、龍族たちが迫りくるレア一体に全軍で迎撃態勢に入るのであった。
……
……
……
「エリスちゃん、それに私に従ってくれた最高の者達……! 私が魔族をこの世界で、最強の種族に変えてあげるからねぇっ!!」
ヴェルマー大陸から『二色の併用』を利用して、恐ろしい速度で『ターティス』大陸へと向かうレアであった。
そしてレアの為に忠義を尽くして死んでいった魔族の者達に、せめてもの手向けとして魔族がこの世界で最強の種族となる歴史の転換時に『レア』に仕えた最も優秀なる者たちという、今後の『リラリオ』の世界の歴史にエリス達の名を遺そうという気持ちを胸にレアは戦場へ赴くのであった。
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