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第三章 終焉を呼ぶ七大天使
第212話 二人の秘密
しおりを挟む嫉妬で暴走した由良を何とか正気に戻すことに成功したルアたち。一方嫉妬により暴走してしまった由良は深い眠りについてしまっていた。そんな彼女を傍らで眺めていたロレットがポツリとルシファーに問いかける。
「由良は大丈夫なのか?」
「体の方は問題ないでしょう。ですが精神にどんな影響が出ているのかまでは私でもわかりません。」
「……そうか。」
ルシファーの答えにロレットはうつむいた。
「欲の修業というのはこういうものがつきものなのか?」
「このように制御が利かなくなってしまうのは由良さんが嫉妬の適性があったからです。嫉妬というのは、周りの影響を強く受けます。おそらく今回は周りの方々がルア様と親しく接する姿を見て嫉妬が溜まっていった結果でしょう。」
「由良だったから……ということか。」
ルシファーから見解を聞くと、ロレットは1人立ち上がった。そして部屋を後にしようとする。そんな彼女の行動を見て、クロロが声をかけた。
「ろ、ロレットさん、もう由良さんのことを見守らなくて良いんですか?」
「我は由良ならば問題ないと信じている。我が親友と認めた者がこの程度乗り越えられない筈がない。由良は必ず戻ってくる。」
それだけ言い残すと、ロレットは部屋を後にした。
「あ…………。」
そして部屋のなかに取り残されたのは、ルア、東雲、クロロ、エナ、ルシファーの5人のみとなった。
真琴とミリアはアルに連れられてどこかへと行ってしまっているため、今この場にはいない。
一瞬の静寂が部屋の中を支配したが、それを打ち破ったのは東雲だった。
「ロレットの言うとおりだ。由良はこの程度でくたばるようなやつではない。お前たちもこんなところでしょぼくれている暇があったら、こやつが起きたときに見返せるように修行に励むのだ。」
そう言うと、東雲はクロロとエナのことを掴み部屋の外へと引きずっていく。
「あっ!?ちょ、東雲さん!?」
「由良さん~……私達も頑張りますからぁ~。絶対戻って来て下さい~!!」
そして遂には部屋に残ったのはルアとルシファーの二人のみとなってしまった。
再び沈黙が流れるが、今度はルアがそれを破った。
「ルシファーさんもみんなのこと……見てあげてくれませんか?」
「それがルア様の意向ならば……。」
「お願いします。」
「承知いたしました。では、失礼致します。」
ペコリとルアに一礼すると、ルシファーも部屋を後にしていった。
そしてルアと由良……二人のみとなったこの空間で、ルアは彼女にポツリと話しかける。
「ごめんね……お母さん。」
そうルアが謝ったその時だった。由良が突然パチリと目を開けたのだ。
「あっ!?お、お母さん!?」
「……ルア。謝るのはわしの方じゃ。迷惑をかけてしまったの。」
「うぅん!!そ、それよりも体は大丈夫なの?」
「ちとまだ体は動かせんようじゃ。全身筋肉痛のようなものに苛まれておる。回復魔法を使ってみたのじゃが、回復する気配もない。」
由良が目を覚ましたことに、ホッと胸を撫で下ろすルア。そんな彼に由良はあるお願いをした。
「ルアよ、すまぬのじゃが……しばらくわしの面倒を見てくれんかの?この体ではろくに動くこともできそうにないのじゃ。」
「うん!!任せてよ!!」
「それと、わしが目覚めたことは皆には言わないでいてほしい。」
「えっ!?なんで?」
「これだけ迷惑をかけておいて皆の前に姿を現すのはちと羞恥心があるのじゃ。それに、ロレットはかなりやる気を見せておったようじゃし……。」
「も、もしかして……結構前から目を覚ましてた?」
由良の言葉に違和感を覚えたルアはそう問いかけた。
「うむ……。実はロレットが立ち上がる時に目が覚めたのじゃが、あやつの言葉もあって完全に目覚めるタイミングを逃してしまった。」
「そ、そうだったんだ。」
どうやら由良はロレットたちの士気が高まってしまっているのを見て目覚めるに目覚められなかったらしい。
そんな彼女の全ての事情を察したうえでルアは一つ大きく頷いた。
「うん分かった。このことは皆には言わないよ。」
「助かるのじゃ。体調が万全になったらわしから皆には知らせる。」
「そのほうが良いね。」
こうして由良は意識を取り戻したことは二人だけの秘密になったのだった。
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