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第三章 終焉を呼ぶ七大天使
第211話 嫉妬の暴走
しおりを挟むパン!!と由良は両手を合わせると、瞳に宿る青色の炎を煌めかせながら口を開く。
「獄門……解。」
以前東雲とバトルを繰り広げたときに使った獄門を由良が開くと、あのときとは違い青い色の炎が由良の体に宿る。
「第一の門……等活。」
由良の足元に展開された魔法陣の一角に青い炎が灯ると、彼女の体を覆っていた青い炎が両手に濃縮され禍々しい爪を象った。
「その攻撃は……流石に生身で喰らうわけにはいきませんね。」
ルシファーは自身の神器である明星を目の前に出現させると、それを剣の形へと変化させる。
臨戦態勢に入るルシファーに、由良はゆっくりと体を揺らしながら近付いていく。
「妬ましい……ルアに近づくものすべてが……妬ましい。ルアはわしの愛する子供だというのに……。」
ポツポツとそう呟きながら近づく由良は、ギロリとルシファーのことを睨み付けると、一瞬でルシファーの目の前まで迫った。
そしてルシファーへと向かって由良の青色の炎の爪が振り下ろされる。
「くっ!!」
由良の炎の爪をルシファーは明星で象った剣で受け止める。すると、黒い稲妻と青い炎がバチバチとぶつかり合い弾けた。
「由良さんどうか正気に戻ってください。嫉妬に飲まれてはなりません!!」
「五月蠅いっ!!お前にわしの気持ちの何がわかるっ!!」
由良の言葉に強く感情がこもると、それに呼応するように由良の攻撃の威力が徐々に増していく。耐えきれないと踏んだルシファーは自ら飛んで後ろに下がると、由良に視線を戻した。
(嫉妬の力の底が見えない。それほど由良さんのうちに眠る嫉妬の欲が強いということですか……。さらにそれに加えてこの暴走具合、少しまずいですね。)
ルシファーの頬を冷や汗が一つ伝う。
(それに私の声も届いていない。普通の方法で正気に戻すのは無理ですね。)
方法を模索しているルシファーだったが、思考を巡らせる暇もなく由良が歩み寄ってくる。
「逃げるでない。」
瞳の青い炎を燃え上がらせると由良は両手を合わせた。
「第二の門……黒縄。」
「っ!?」
由良がそう口にしたと同時に、ルシファーの足元に青い炎で描かれた魔法陣が現れ、そこから無数の炎をまとった鎖が飛び出した。その鎖はルシファーを拘束すべく追尾する。
「とんでもない力の込められた鎖ですね。捕まっては抜け出すのは難しそうです。」
空へと飛びあがったルシファーへと向かって鎖が迫るが、彼女はそれを明星で象った剣で弾き飛ばしていく。しかし、圧倒的手数に圧され、少しずつ対応が間に合わなくなってきていた。
そしてついに鎖の一本がルシファーの左腕に絡みつく。
「しまっ!?」
その一瞬の隙に乗じて次々にルシファーの体に鎖が絡みついていき、彼女は身動きが取れなくなってしまう。
「くっ……私としたことが、やはりまだ力は戻っていないということですね。」
空中で身動きが取れなくなってしまっているルシファーのもとにゆっくりと由良が近づく。
「捕まえたぞ。」
由良の手には青い炎を纏った大きな爪が揺らめいている。
ルシファーの目の前に近寄った由良がその爪を大きく振り上げたその時だった。
「お母さんダメっ!!」
翼を生やしたルアが二人の間に割り込んだのだ。
「ルア退くのじゃ。」
「退かないっ!!」
「どうしてお主はそやつを守る?やはりわしのことはもうどうでもよいのか?」
「そんなことないよ!!ボクにとってお母さんはすごく大切な人。でも他のみんなも大切なの!!」
ルアの言葉に由良の様子が一変する。
「ぐぐぐ……じゃが人一倍ルアに愛情を注いでおるのは……。」
「それはお母さんだよ!!ボクだってわかってる。」
ルアがそう叫ぶと、由良は突然頭を抱えて苦しみだした。
「ぐぐぐぁぁぁぁぁっ!!」
由良が苦しむと、彼女が纏っていた青い炎が徐々に小さくなり、体の中へと収まっていく。
そして元の姿の由良に戻ると、意識を失ったように地上へと落ちていく。それをルシファーはそっと抱き止めた。
「ルア様感謝いたします。おかげで助かりました。」
「うぅん、ボクもお母さんを助けたかっただけだから……。」
「それでも命を救っていただいたことに変わりはありません。この恩はいつか……必ず。」
そしてなんとか由良のことを正気に戻したルア達は再びロレットの城へと戻っていくのだった。
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