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第一章 転生そして成長
第75話 VSミリア
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まず先に動き出したのは由良だった。
「妖術……朧。」
そう唱えた瞬間に、由良の姿が半透明になり、まるで実体がないかのような姿へと変貌を遂げた。
「へぇ、面白いのを使うね。」
目の前で変貌を遂げた由良を興味深そうに眺めながらミリアは言った。
「攻撃は通るのかな?……それっ!!」
ミリアは自分の爪を鋭く、長く伸ばすと朧を使った由良へと切りかかる。
しかし、ミリアの攻撃は由良を通りすぎるだけで実体を捉えることができない。
「攻撃も通らない……か。随分厄介な魔法だね。」
ミリアは攻撃が通らなかったことに残念がるどころか、口角を吊り上げて不敵に笑う。
「その笑みがどこまで貫き通せるか……見物じゃな。悪いが……一瞬で片をつけさせてもらうぞ!!」
「へぇ……。」
由良は人指し指と中指を立てて口元に当てると、ある魔法の詠唱を始めた。
「我仙狐へと昇華した者なり……。」
由良がそう詠唱を始めると、ルアの頭の上で居座っていた東雲が眉を細めながら由良の方を眺め始めた。
「ほぅ……いよいよ仙狐の技を使うか由良よ。」
「仙狐の技?」
東雲の下からルアが問いかける。
「文字通りだ。仙狐という膨大な魔力を持つ魔物しか扱えぬ魔法だ。使えるようになるのはまだ先だと思っていたが……どうやら妾は由良の成長速度を見誤っていたらしい。」
そう東雲がルアへと説明している間にも由良は詠唱を続ける。
「九尾の力を以て……道を阻む者を滅する。わしの呼び掛けに応えよ、禍津火。」
由良が詠唱を終えると、彼女の足元に真っ黒な色の魔法陣が描かれ、そこには五芒星が描かれていた。
その光景にルアは見覚えがあった。
「え!?あ、あれって……。」
「見覚えがあるだろうが、あれは以前お前が使ったものとは違う。まぁ言うなれば、下位互換の魔法と言ったところか。妾は禍津火どもの神を使役したが、今の由良では禍津火を使役するのが限界ということだな。」
そう説明する東雲にロレットが問いかける。
「先程からマガツヒと言っているが……それはなんなのだ?」
「まぁ実物を見た方が早い。今にあの魔法陣から現れる。」
そしてルア達が由良の方へと視線を戻すと、五芒星の頂点に暗い火が灯り、魔法陣の中央から黒い炎でできた体を持つ大きな狐が現れた。
「あ、あれは……なんなのだ!?」
「仙狐へとなれなかった者の成れの果て……それが禍津火だ。」
禍津火とは妖狐から仙狐へと至る過程で、その膨大な力に飲み込まれ獣に慣れ果てた者のことを示す。もちろん、理性などは残っていないため、あまりある力を暴走させ辺りをひたすらに破壊してまわる危険な存在だ。
故に、仙狐へと至る儀式の際には必ず当代の仙狐が付き添い、仮にその者が禍津火になってしまった場合にはすぐさま災厄の封印を施すのだ。
「そ、そんなものを呼び出して由良はどうするつもりなのだ!?」
「まぁ普通なら式神として使役する位しか用途はないが……由良のやつは面白いことを考えているようだぞ?くくくくく……。」
そう笑った東雲の視線の先には禍津火に寄り添う由良の姿が写っていた。
「なかなか面白い魔法だね。だけど……そんな獣一匹召喚した程度で何をするつもりだい?」
「こやつは貴様と戦わせるために呼び出したのではない。」
「なんだって?」
不思議そうに首をかしげたミリア。
そんな彼女を他所に、由良は禍津火の額に手を当てた。
「グルルル…………。」
「お主の力はわしがもらう。同化せよ!!」
由良が禍津火に向かってそう言うと、禍津火の体が徐々に由良の体へと吸い込まれていき、彼女の尻尾が金色から純白へと変わっていく……。
そう、まるで東雲のように…………。
そして禍津火が全て由良の体へと取り込まれると、彼女の体毛が全て純白に染まり、彼女のことを守っていた朧も消え去り由良本体がミリアの前に立った。
「あはっ♪あははははははははっ!!!!すごいすごい!!一気に魔力が増えたね。」
一気に魔力を増した由良を目の前にしたミリアはさぞかし楽しそうに笑う。
そんな彼女が気が付かないほどのスピードで音もなく由良は一瞬で距離を詰めると、彼女の耳元で囁いた。
「間合いじゃぞ?」
「っ!!」
その瞬間、一瞬だがミリアの表情から笑みが消えた。それと同時に由良の手がミリアの腹に当てられる。
「ふんっ!!」
「うあッ…………!?」
由良が魔力を手に込めて放出するように動かすと、ミリアの体が軽く宙を舞った。
空中で翼を広げ、ミリアはゆっくりと地に足をつけると口元から熱いものが伝っていることに気がついた。
「っ!!へぇ……血を流したのなんて何百年ぶりだろうね。やるじゃん?」
ペロリと真っ赤な舌で口元から流れていた血を舐めとると、ミリアは再び口角を歪に吊り上げた。
「あはっ♪それじゃあ今度は~ぁ…………。」
一つ笑うと、ミリアは由良の目の前から消えた。そして次の瞬間には、先程由良がやったように彼女は由良の耳元で囁いた。
「私の番ね♪」
「なに………ぐっ!?」
一瞬のことで頭の整理が追い付かずにいた由良の腹にミリアの拳がめり込んだ。
すると由良は闘技場の壁に叩きつけられるように吹き飛ばされてしまう。
しかし、もくもくと上がっていた土埃の中から無傷の由良が姿を現した。
「あははっ♪流石に1発じゃ倒れないよね~?」
「当たり前じゃ。……っ!!がほっ……ごほっ!!」
突然咳き込んだ由良の手にはベットリと血がこびりついていた。
それを見たミリアはあることに気がついた。
「…………なるほど、君はまだその力を使いこなせてる訳じゃないのか。無理なパワーアップで体が悲鳴をあげてる。」
「はんっ……この程度なんてこと………………。」
「ダメだよ。」
「っ!!かはっ…………。」
強気に反論しようとした由良だったが、突然目の前から姿を消したミリアに後ろから首に手刀を振り下ろされ、意識を刈り取られてしまう。
「君達の血は一滴たりとも無駄にはしたくないんだ。ホントはそこの地面に滴った血も舐めとってあげたいところだけど……砂まみれの血はちょっとね。」
由良のことを抱き抱えると、ミリアはルア達のもとへと歩み寄り、由良のことを預けた。
「さ、早く治療してあげてよ。その間に次を始めようか。」
「ルア……由良のことは頼んだぞ。」
「えっ!?ろ、ロレットさん!?」
ルアに由良のことを預けると、ロレットはミリアの前に立った。
「望み通り始めるぞ。」
「あはっ♪そうこなくっちゃ!!君は簡単に壊れないといいなぁ。」
そして今度はロレットとミリアの戦いが始まった。
闘技場の隅っこでルアは由良へとひたすらに回復魔法をかけ続けていた。
「お母さんっ!!」
「……そんなに焦るなルア。幸い、あやつが早期に由良のことを止めたお陰で魔力回路の損傷は少ない。焦らず回復魔法を流し込むのだ。」
「っ!!わかりました……。」
ロレットが戦ってくれている間、必死にルアは由良のことを治すため回復魔法をかけつづけるのだった。
「妖術……朧。」
そう唱えた瞬間に、由良の姿が半透明になり、まるで実体がないかのような姿へと変貌を遂げた。
「へぇ、面白いのを使うね。」
目の前で変貌を遂げた由良を興味深そうに眺めながらミリアは言った。
「攻撃は通るのかな?……それっ!!」
ミリアは自分の爪を鋭く、長く伸ばすと朧を使った由良へと切りかかる。
しかし、ミリアの攻撃は由良を通りすぎるだけで実体を捉えることができない。
「攻撃も通らない……か。随分厄介な魔法だね。」
ミリアは攻撃が通らなかったことに残念がるどころか、口角を吊り上げて不敵に笑う。
「その笑みがどこまで貫き通せるか……見物じゃな。悪いが……一瞬で片をつけさせてもらうぞ!!」
「へぇ……。」
由良は人指し指と中指を立てて口元に当てると、ある魔法の詠唱を始めた。
「我仙狐へと昇華した者なり……。」
由良がそう詠唱を始めると、ルアの頭の上で居座っていた東雲が眉を細めながら由良の方を眺め始めた。
「ほぅ……いよいよ仙狐の技を使うか由良よ。」
「仙狐の技?」
東雲の下からルアが問いかける。
「文字通りだ。仙狐という膨大な魔力を持つ魔物しか扱えぬ魔法だ。使えるようになるのはまだ先だと思っていたが……どうやら妾は由良の成長速度を見誤っていたらしい。」
そう東雲がルアへと説明している間にも由良は詠唱を続ける。
「九尾の力を以て……道を阻む者を滅する。わしの呼び掛けに応えよ、禍津火。」
由良が詠唱を終えると、彼女の足元に真っ黒な色の魔法陣が描かれ、そこには五芒星が描かれていた。
その光景にルアは見覚えがあった。
「え!?あ、あれって……。」
「見覚えがあるだろうが、あれは以前お前が使ったものとは違う。まぁ言うなれば、下位互換の魔法と言ったところか。妾は禍津火どもの神を使役したが、今の由良では禍津火を使役するのが限界ということだな。」
そう説明する東雲にロレットが問いかける。
「先程からマガツヒと言っているが……それはなんなのだ?」
「まぁ実物を見た方が早い。今にあの魔法陣から現れる。」
そしてルア達が由良の方へと視線を戻すと、五芒星の頂点に暗い火が灯り、魔法陣の中央から黒い炎でできた体を持つ大きな狐が現れた。
「あ、あれは……なんなのだ!?」
「仙狐へとなれなかった者の成れの果て……それが禍津火だ。」
禍津火とは妖狐から仙狐へと至る過程で、その膨大な力に飲み込まれ獣に慣れ果てた者のことを示す。もちろん、理性などは残っていないため、あまりある力を暴走させ辺りをひたすらに破壊してまわる危険な存在だ。
故に、仙狐へと至る儀式の際には必ず当代の仙狐が付き添い、仮にその者が禍津火になってしまった場合にはすぐさま災厄の封印を施すのだ。
「そ、そんなものを呼び出して由良はどうするつもりなのだ!?」
「まぁ普通なら式神として使役する位しか用途はないが……由良のやつは面白いことを考えているようだぞ?くくくくく……。」
そう笑った東雲の視線の先には禍津火に寄り添う由良の姿が写っていた。
「なかなか面白い魔法だね。だけど……そんな獣一匹召喚した程度で何をするつもりだい?」
「こやつは貴様と戦わせるために呼び出したのではない。」
「なんだって?」
不思議そうに首をかしげたミリア。
そんな彼女を他所に、由良は禍津火の額に手を当てた。
「グルルル…………。」
「お主の力はわしがもらう。同化せよ!!」
由良が禍津火に向かってそう言うと、禍津火の体が徐々に由良の体へと吸い込まれていき、彼女の尻尾が金色から純白へと変わっていく……。
そう、まるで東雲のように…………。
そして禍津火が全て由良の体へと取り込まれると、彼女の体毛が全て純白に染まり、彼女のことを守っていた朧も消え去り由良本体がミリアの前に立った。
「あはっ♪あははははははははっ!!!!すごいすごい!!一気に魔力が増えたね。」
一気に魔力を増した由良を目の前にしたミリアはさぞかし楽しそうに笑う。
そんな彼女が気が付かないほどのスピードで音もなく由良は一瞬で距離を詰めると、彼女の耳元で囁いた。
「間合いじゃぞ?」
「っ!!」
その瞬間、一瞬だがミリアの表情から笑みが消えた。それと同時に由良の手がミリアの腹に当てられる。
「ふんっ!!」
「うあッ…………!?」
由良が魔力を手に込めて放出するように動かすと、ミリアの体が軽く宙を舞った。
空中で翼を広げ、ミリアはゆっくりと地に足をつけると口元から熱いものが伝っていることに気がついた。
「っ!!へぇ……血を流したのなんて何百年ぶりだろうね。やるじゃん?」
ペロリと真っ赤な舌で口元から流れていた血を舐めとると、ミリアは再び口角を歪に吊り上げた。
「あはっ♪それじゃあ今度は~ぁ…………。」
一つ笑うと、ミリアは由良の目の前から消えた。そして次の瞬間には、先程由良がやったように彼女は由良の耳元で囁いた。
「私の番ね♪」
「なに………ぐっ!?」
一瞬のことで頭の整理が追い付かずにいた由良の腹にミリアの拳がめり込んだ。
すると由良は闘技場の壁に叩きつけられるように吹き飛ばされてしまう。
しかし、もくもくと上がっていた土埃の中から無傷の由良が姿を現した。
「あははっ♪流石に1発じゃ倒れないよね~?」
「当たり前じゃ。……っ!!がほっ……ごほっ!!」
突然咳き込んだ由良の手にはベットリと血がこびりついていた。
それを見たミリアはあることに気がついた。
「…………なるほど、君はまだその力を使いこなせてる訳じゃないのか。無理なパワーアップで体が悲鳴をあげてる。」
「はんっ……この程度なんてこと………………。」
「ダメだよ。」
「っ!!かはっ…………。」
強気に反論しようとした由良だったが、突然目の前から姿を消したミリアに後ろから首に手刀を振り下ろされ、意識を刈り取られてしまう。
「君達の血は一滴たりとも無駄にはしたくないんだ。ホントはそこの地面に滴った血も舐めとってあげたいところだけど……砂まみれの血はちょっとね。」
由良のことを抱き抱えると、ミリアはルア達のもとへと歩み寄り、由良のことを預けた。
「さ、早く治療してあげてよ。その間に次を始めようか。」
「ルア……由良のことは頼んだぞ。」
「えっ!?ろ、ロレットさん!?」
ルアに由良のことを預けると、ロレットはミリアの前に立った。
「望み通り始めるぞ。」
「あはっ♪そうこなくっちゃ!!君は簡単に壊れないといいなぁ。」
そして今度はロレットとミリアの戦いが始まった。
闘技場の隅っこでルアは由良へとひたすらに回復魔法をかけ続けていた。
「お母さんっ!!」
「……そんなに焦るなルア。幸い、あやつが早期に由良のことを止めたお陰で魔力回路の損傷は少ない。焦らず回復魔法を流し込むのだ。」
「っ!!わかりました……。」
ロレットが戦ってくれている間、必死にルアは由良のことを治すため回復魔法をかけつづけるのだった。
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