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第一部 綿毛のようにたどり着きました

女子会の試練

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「うーん、困ったなあ」

フェリックスさんは、柔らかく言う。

「僕としては、マージョさんと契約をしたい。個人契約でも集団契約でも構わないんだけど、マージョさんは、集団契約のほうがいいんだよね」

うんうん。そうです。
女子会で契約してもらって、できるんだったらジョーさんかアナベルさんあたりに顔になって欲しい。
この後色々売りたいし、目立つのは嫌なのだ。
それにそもそも神託なしでは専属契約ができないしね。

「そして、私は小規模の個人契約だったらまあ、飲めますが、集団契約となると不安材料が多すぎると考えています」

副ギルド長が、自分の立場を明言する。

「特に神罰関連も絡んでくるわけですし、下手に動くと本神殿との関係も刺激しかねない」

あー。神罰を建前にすることは避けたいわけね。

「それは私も賛成です」

意外なところで、神官補が同意した。

「私の見立ては私の見立てですから、対外的には、本神殿の正式発表が出るまではあまり神罰を理由に動かないほうが、マージョさんの身の安全を考える上でも良いでしょう」


……なんか、サラッと怖いこと言われてる気がする。
身の安全て、あれだよね、前に言ってた異端尋問がどうのっていう……あれだよね?
こっわいなぁぁ。

「ま、私の見立てが間違えていることは万に一つもないでしょうがね」

神官補はふっと言い切る。
何気に副ギルド長の発言が気に食わなかったらしい。
負けず嫌い属性発見!

「まー、あれですね。私の実績がないのが問題なんですよね」

そう言うと、副ギルド長は頷いた。

「失礼な言い方になってしまい、申し訳ないですが、まさにそれです。ギルドの後ろ盾を得たい若手職人はたくさんいるんです。ここで不透明だと要らぬ横槍を入れられかねない。ましてや女性の集団となると枕営業を疑われる可能性もあります」

「ちょ、ちょっと待ってよ、ま、ま、枕営業って……! 僕相手に?!」

ガタタン!
フェリックスさんが立ち上がった。

「他の誰がそういうのを疑われると思うんですか」


副ギルド長は冷ややかにフェリックスさんを見やる。

あれ?

もしかしてこの二人って……。

「坊っちゃんは相変わらずそういうところが脇が甘い。口さがない人間というのはいるものですよ」

おお、主従でしたか。副ギルド長の名前はセバスチャンに違いない。

「そういうわけで、ウォーフ商会との契約も今の段階では賛成しかねます。女好きの領主様の二の舞になりかねない。あの方は領主様ですから何を言われても良いですが、商人に女性関係のスキャンダルはご法度ですよ」

「……それはわかっている……」

うん。なんか事情はわかるよ。でも困ったなあ。

「職人女子の直面している問題って、実績がないっていうより、そもそも実績を作らせてもらえない、ことなんですよね……」

そう言うと部屋中のみんなの目が私を向いた。

「……とおっしゃりますと?」

……あれ? 気づいていなかった?




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