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第一部 綿毛のようにたどり着きました

デザート(アーモンドと梨のタルト、ラズベリー添え)

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「マージョさんのパッチワークエプロンはものすごく目を引いたのですよ」

フェリックスさんは言う。

「私はストウブリッジの市場にガラス瓶がたくさん出始めた頃から気になってちょっと目をつけていました」
「ストウブリッジでお会いしましたものね」
「逃げられましたがね」

わ。バレてましたか。

「ホワイトさんが定期的に質の良いものを市場に持ってきていましたし、でもそれはヒルトップ村で作れるようなものではない」


!!

私の村の名前はヒルトップ村だったの?!

みんな単に「村」としか呼んでいなかったから、そもそも「知識」を確認しようとも思ってなかったよ!

「盗品の可能性も疑ったのですよ、正直なところ」

……そうか。
そういう疑いも持たれるよね、そりゃあ。

「でも、色々突き合わせていくとその可能性も低い。でも、そんなことを考えたのは私だけではないと思うんですよね」

……なるほど?

「それでここに来てハーマンの件です」

あー。

私、もしかしてものすごく目立つ可能性がある?

「……ですね。というか、すでに気づく人は気づいてます」

フェリックスさんは柔らかく苦笑した。
「こちらとしてはできるだけ情報を流さないように尽力しますが、もしも流れてしまったときにうちの商会かギルドと契約しているとなると」

「興味本位のへんな横やりが入らない……」

「はい。そういうことです。あとは、ぶっちゃけマージョさんを保護することで、神罰の発動を絶対に避けられるようにしたい、というのもあります」

おー。ぶっちゃけてるね!
でも、このくらい正直に話してくれると嬉しい。
むしろ信用できる。

「いずれにせよ、神託がなければ契約はできないのでしょうからまずはマージョさんがよければ、契約の叩き台だけでも用意させますよ」

フェリックスさんは私のグラスに蜂蜜酒を注ぐと自分のグラスもなみなみといっぱいにした。

「どうですか?」

「そうですね……とりあえずお話を伺うだけでしたら……」

「!! 本当ですか?!」

な、何でそんなに驚くの?

「う、嬉しい……」

え……
フェリックスさんは耳まで赤くなって俯いた。

ちょ……! 何この人可愛い。
30すぎの男性の照れてる姿を見て可愛いと思うなんて想像もしなかったよ……。

ていうか、そんな大したものは売れませんよ、資源ごみだし!

「デ、デザートを頼みましょう。私は次の仕事があるのでギルドに帰らなくてはなりませんが契約神官補が甘いものが好きですから包んでもらいましょう。話をしながら召し上がるといい」

フェリックスさんは一気にそう言った。

ほえー。
神官補は甘いものが好きなんだ……。意外。
ていうか、あの人ギルドでも名前は呼ばれていないんですね……。

「名前はもちろんあるんですが……」

フェリックスさんはちょっと目を泳がせた。

「本人があまり気に入っていないようで……」
「そ、そんなへんな名前なんですか?」
「いや、まあ、どうしても呼ぶときはヴァル、と……」

ヴァル……
あー。正式名称ヴァレンタイン……

男性名になることもあるけど8割女名前だね。

そっか。
そんなの気にするのか~。
そして意外な甘党……。

「アーモンドと梨のタルトにしましょう。オススメですからね」

フェリックスさんがニコニコした。


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