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お茶
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「神官補、マージョさんをお連れした」
ギルドの神官補室は整然とした部屋だった。
羽根ペンや紙、書籍など結構なものがあるはずなんだけれど何もかもが整然と並べられている。
「ありがとうございます」
神官補は頭を下げる。
「茶請を買って来たよ」
「そうですか……」
表情が変わらない。
甘いものが好きなんじゃないの?
と思って見ていたら、なにやらいそいそとお茶の支度を始めた。
あ、好きなんだね、普通に。
「アーモンドと梨のタルトです」
「飾りにラズベリーが載っているものですね」
「そうですね……」
把握済みとか!
「話が終わったらギルドのものが宿まで送ることになっている。声をかけてくれるか」
「御意」
何気に息があった二人だ。
神官補が、タルトの箱を受け取ると、フェリックスさんはにっこり笑って部屋を出ていった。
神官補は、笑顔のないまま、私の方を向くと椅子を指差す。
……座れってことね。
座るとスッとお茶が出された。紅茶のようなお茶。
意外なことに、美味しかった。丁寧にポットを温めて入れた味。
「今回のことですが、神罰を下したのはオーロラ神だと思っていますか」
私がお茶に口をつけたのを確かめてから神官補は尋ねる。
「わかりません」
「わからないとは?」
「意志の儀式はオーロラ神のしきたりにしたがいましたが、寄進は主神と三大神にすると誓いましたから……」
「この四柱の誰であるかわからないということですか」
「はい」
「……」
神官補はしばく私をにらんでいたが、やがてため息をついた。
「あなたはアナスタシア主神についてどのようにお考えか」
「アナスタシア……ですか?」
どのよう、って、色々気を使ってくれる幼女……?
「アナスタシア主神は幼女の姿を取られたことなどないはずですが……」
「そうなんですか?!」
すごく板についてたから最初から幼女だったのかと思ったよ。
あ、でも、最近力を失ったとか言っていたな……。
「でも、神様ですし、主神ですからどんな姿で現れてもおかしくないですよね……」
「そうですね」
何か考えるような様子で神官補は頷く。
「神託を契約の条件にしたというからには、神託をいつでも聞けると思っていたわけですね?」
そう聞かれたのでここはきっぱり「いいえ」と答える。
「ほう、それはなぜ」
「オーロラの儀式はお金儲けをするのだったらきちんと寄進ができる形でしたかったので行ったのです。神託や神罰は神が下すかどうか決めるものですから、私が自分で決められるはずないではないですか」
まあ、現実問題として、アーロンはわりと気を使ってくれているけど、神様たちも忙しそうだし、今後どうなるかはわからないよね。
そもそも私はこの世界のことがあまりわかっていないのだ。
神々が私に動いてほしいようにように動くしかないじゃないの。
「なるほど……」
神官補は、ここで初めて微笑んだ。
笑えるんだ!
「タルトを切りましょう」
あ、はい……。なぜ今ここでタルト?
「異端尋問にかけなくてはならない可能性がなくなったからです」
あ、あれ、えーと?
「マージョさん、下手な答えをされたらブラウン神官のお気に入りの補佐を異端尋問にかけなくてはならないかとハラハラしてたんですよ」
え?あれ?
私のことを知ってたの?
「そりゃあ、ブラウン神官にはお世話になっていますから」
そして、異端尋問て……
こわっ
異世界怖い。
「ここのタルトは絶品なんですよ~」
そして、ヴァレンタインは切り替えの早い男だった。
ギルドの神官補室は整然とした部屋だった。
羽根ペンや紙、書籍など結構なものがあるはずなんだけれど何もかもが整然と並べられている。
「ありがとうございます」
神官補は頭を下げる。
「茶請を買って来たよ」
「そうですか……」
表情が変わらない。
甘いものが好きなんじゃないの?
と思って見ていたら、なにやらいそいそとお茶の支度を始めた。
あ、好きなんだね、普通に。
「アーモンドと梨のタルトです」
「飾りにラズベリーが載っているものですね」
「そうですね……」
把握済みとか!
「話が終わったらギルドのものが宿まで送ることになっている。声をかけてくれるか」
「御意」
何気に息があった二人だ。
神官補が、タルトの箱を受け取ると、フェリックスさんはにっこり笑って部屋を出ていった。
神官補は、笑顔のないまま、私の方を向くと椅子を指差す。
……座れってことね。
座るとスッとお茶が出された。紅茶のようなお茶。
意外なことに、美味しかった。丁寧にポットを温めて入れた味。
「今回のことですが、神罰を下したのはオーロラ神だと思っていますか」
私がお茶に口をつけたのを確かめてから神官補は尋ねる。
「わかりません」
「わからないとは?」
「意志の儀式はオーロラ神のしきたりにしたがいましたが、寄進は主神と三大神にすると誓いましたから……」
「この四柱の誰であるかわからないということですか」
「はい」
「……」
神官補はしばく私をにらんでいたが、やがてため息をついた。
「あなたはアナスタシア主神についてどのようにお考えか」
「アナスタシア……ですか?」
どのよう、って、色々気を使ってくれる幼女……?
「アナスタシア主神は幼女の姿を取られたことなどないはずですが……」
「そうなんですか?!」
すごく板についてたから最初から幼女だったのかと思ったよ。
あ、でも、最近力を失ったとか言っていたな……。
「でも、神様ですし、主神ですからどんな姿で現れてもおかしくないですよね……」
「そうですね」
何か考えるような様子で神官補は頷く。
「神託を契約の条件にしたというからには、神託をいつでも聞けると思っていたわけですね?」
そう聞かれたのでここはきっぱり「いいえ」と答える。
「ほう、それはなぜ」
「オーロラの儀式はお金儲けをするのだったらきちんと寄進ができる形でしたかったので行ったのです。神託や神罰は神が下すかどうか決めるものですから、私が自分で決められるはずないではないですか」
まあ、現実問題として、アーロンはわりと気を使ってくれているけど、神様たちも忙しそうだし、今後どうなるかはわからないよね。
そもそも私はこの世界のことがあまりわかっていないのだ。
神々が私に動いてほしいようにように動くしかないじゃないの。
「なるほど……」
神官補は、ここで初めて微笑んだ。
笑えるんだ!
「タルトを切りましょう」
あ、はい……。なぜ今ここでタルト?
「異端尋問にかけなくてはならない可能性がなくなったからです」
あ、あれ、えーと?
「マージョさん、下手な答えをされたらブラウン神官のお気に入りの補佐を異端尋問にかけなくてはならないかとハラハラしてたんですよ」
え?あれ?
私のことを知ってたの?
「そりゃあ、ブラウン神官にはお世話になっていますから」
そして、異端尋問て……
こわっ
異世界怖い。
「ここのタルトは絶品なんですよ~」
そして、ヴァレンタインは切り替えの早い男だった。
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