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『特別な人』139

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 相原の存在があるからだ。

 一緒にいると楽しいし、気持ちが和む。

 そして相原と親しくするのを意図的に止めてしまうということは
凛を愛でることもできなくなってしまうことをも意味する。


 数年先に付き合うかどうかも分からない相馬の為に?
 それは違うような気がする。

 カフェでジャズを聴きながらの食事やコーヒーTimeも失くすの?
 そんなのは嫌だ。

 付き合ってもいないうちからの束縛はキツイものがある。

「ごめんなさい。
 多分誰かと交際するようなことはないと思うけど、会ってお茶したり
食事したりすることを制限されるのはきついです。

 たまたま昔の知り合いに会って流れでカフェやバーに入るっていう可能性は
ゼロじゃないので……」


『そっか、掛居さん、相原さんと食事なんかももうしてたりするんだ』


 掛居の話振りからおよそのことが相馬には推測された。



「たまに会って食事したりお酒飲んだりするようなボーイフレンドなんか、
いたりするんだ」


「ボーイフレンドって……そういう人はいないけど、男の人とは一緒に
お茶したり食事したり飲みに行ったりしちゃあいけないとか、
制限かかること自体ストレスかな。

 まぁ制限かけられなくてもそういう機会はほとんどないけど、でも
やっぱり嫌ですね。

 交際する人ができた時はちゃんと報告します」


 俺は唐突に放たれた掛居さんの最後の台詞にビビった。

 そんな報告、いらんから。


「いやぁ~ごめん。
 少し求め過ぎだよね。

 制約のことは忘れてくれていいよ。
 どちらかが異動になるまで待つよ。
 断られないだけでも有難いよ」


「私こそ、そういう風に思ってもらえてうれしいです。
 ありがとうございます」


 そのような会話を交わしたその夜、私たちは食事しただけで解散した。
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