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『特別な人』54
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「持って回った言い方で丁寧に言葉を選んでいるとなかなか言いたい本音に
辿り着かないので失礼を承知ではっきりと申し上げたいと思います」
と始まり、動揺を隠して何とか平静を保ち話をしてくれた内容は
次のようなことだった。
特別養護老人ホーム(鶴林園)という同じ職場で働く医師の宅麻士稀は
婚約こそしていないが結婚の約束もしていた恋人である。
その彼が自分に内緒で島本玲子と2度ほど飲みに行っていた。
彼は自分には内緒にしてるから、暗に『恋人には秘密でね』と
暗黙の了解の元、玲子と会っていたらしい。
だが職場の手洗い場で一緒になった折に、玲子から宅麻と飲みデートに行ったと仄めかされ、
内野はその事実を知ることになったという。
玲子と恋人の宅麻がいつの間にそんな仲になっていたのか、それだけでも
驚きなのに玲子はその後追い打ちをかけるような発言をしたのだという。
内野さんから宅麻氏を奪ってみせると自信満々に告げたらしい。
そのようなことを聞かされた内野さんは、ものすごく不安で
胸が押し潰されそうだと私に吐露した。
「こんなに不安になるのは、私、たぶん島本さんに勝てる自信が
ないからなんだと思います。
恋愛は自由ですし宅麻くんが私より島本さんの方がいいと言うのなら
諦めないといけないことも分かってるんですけど、誰かに話を聞いて
ほしくて……。
その一心で島本さんの身上書を見てこちらに伺いました」
「辛かったですね。
私はお話を伺うことだけしかできませんが、その恋人宅麻さんでしたっけ?
彼とは話し合いましたか?」
「はい。
飲みのデートに行ったことは認めましたし、誘われればまた次も
行くかもしれないと言われてしまいました」
「今は年上のきれいな女性に言い寄られて舞い上がっているのでしょう。
内野さん、あなたはまだ若い。
看護師さんなら働ける職場はたくさんあるでしょ。
そんな冷たい恋人はあなたの方から振っておやりなさい。
あなたのようにやさしくて素敵な女性にはこの先もっと良い縁が
ありますよ。 私が保証します」
「持って回った言い方で丁寧に言葉を選んでいるとなかなか言いたい本音に
辿り着かないので失礼を承知ではっきりと申し上げたいと思います」
と始まり、動揺を隠して何とか平静を保ち話をしてくれた内容は
次のようなことだった。
特別養護老人ホーム(鶴林園)という同じ職場で働く医師の宅麻士稀は
婚約こそしていないが結婚の約束もしていた恋人である。
その彼が自分に内緒で島本玲子と2度ほど飲みに行っていた。
彼は自分には内緒にしてるから、暗に『恋人には秘密でね』と
暗黙の了解の元、玲子と会っていたらしい。
だが職場の手洗い場で一緒になった折に、玲子から宅麻と飲みデートに行ったと仄めかされ、
内野はその事実を知ることになったという。
玲子と恋人の宅麻がいつの間にそんな仲になっていたのか、それだけでも
驚きなのに玲子はその後追い打ちをかけるような発言をしたのだという。
内野さんから宅麻氏を奪ってみせると自信満々に告げたらしい。
そのようなことを聞かされた内野さんは、ものすごく不安で
胸が押し潰されそうだと私に吐露した。
「こんなに不安になるのは、私、たぶん島本さんに勝てる自信が
ないからなんだと思います。
恋愛は自由ですし宅麻くんが私より島本さんの方がいいと言うのなら
諦めないといけないことも分かってるんですけど、誰かに話を聞いて
ほしくて……。
その一心で島本さんの身上書を見てこちらに伺いました」
「辛かったですね。
私はお話を伺うことだけしかできませんが、その恋人宅麻さんでしたっけ?
彼とは話し合いましたか?」
「はい。
飲みのデートに行ったことは認めましたし、誘われればまた次も
行くかもしれないと言われてしまいました」
「今は年上のきれいな女性に言い寄られて舞い上がっているのでしょう。
内野さん、あなたはまだ若い。
看護師さんなら働ける職場はたくさんあるでしょ。
そんな冷たい恋人はあなたの方から振っておやりなさい。
あなたのようにやさしくて素敵な女性にはこの先もっと良い縁が
ありますよ。 私が保証します」
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