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156:防衛戦3

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 ギルドに戻ったレイラは、ゼダ達三人を執務室ではなく装備品が収納されている倉庫に案内した。

「領営工房から納品された試作品よ、あなた方で使えそうな物を適当に見繕って頂戴、終わったら私の部屋にきてちょうだい」

 必要な事だけそう告げるとレイラはさっさと倉庫を出ていった。

「おいおい、どう思うよ! レイラ嬢ちゃん、こんな貴重品が山積みの部屋に俺たちだけ置いてっちまったよ!」禿げた頭を撫でながらザザが呆れたように大声を上げた。

「ゼダよ、こりゃあ相当な事が起こっているんじゃねえか?」今日は珍しく酔っ払ってないドルフが倉庫に入って武器を吟味しながらそうゼダに声をかけた。

「ああ、どうやらそうらしい……だがギルドにいる他の探索者達は特に変わった様子もなかった。そう考えるとギルドとしてもまだ世間に知られたくないような事が起こっているのかもしれん……とにかく装備品を揃えて嬢ちゃんの元に向かうとしよう」

 リーダー格のゼダさんがそう言うと他の二人も神妙に頷き、装備品選びを始めた。

「これって、坊主が持っている装填式って奴だよな?」黒い両手剣を握ったドルフが武器を軽く振りながら感触を確かめている。

「見たところ、材料は劣化黒魔鉄のようだが……まさか引退した身でこんな最新式の武器を使う事になるとは思わなかったな」ゼダは小型のラウンドシールドと片手剣を装備してしみじみとそう呟いた。

「魔法弓もあるようだぜ! 一応これも持っていったほうが良いんじゃないか!」黒い両手斧を持ちながらザザがコンポジット・ボウを指差した。

「おう、相手が何か分からないからな、弓は確かに欲しいところだな」

 ドルフがそう請け合い、三人はそれぞれ弓をポーチに収納すると、防具として黒いハーフメイルの上下を装備した。

「こんなものだな……お前達も盾を持っていけ。どうやら【ウィンドウォール】を使えるようだ」

 ゼダはそう言うと、盾を構えて【ウィンドウォール】発動してみせた。

「カーッ! レイラ嬢ちゃんは俺達をどんな相手と戦わせるつもりだよ!」ザザが発動した魔法を見て驚いたようにそう叫んだ。

「ああ、家族の為に階層攻略者を諦めウサギ狩りになり老いて引退したとはいえ――元二つ羽の探索者の俺達をわざわざ引っ張り出そうっていうんだ……只事ではない事だけは確かだな」

 ゼダがまるで予言でもするようにそう答えたのだった。

◻ ◼ ◻

 ルピナスに乗ったニースが上空を飛び回りながら次々と土壁を設置していき二重に設置された土壁によって、通路のような物が元の防壁の前に生まれた。

 その土壁に誘導されるように分断されたゴブリンの群れは、上空から降り注ぐエルフ達の放つ弓技【流星雨】によって次々と倒れていった。

 マリアは元の防壁の隙間の間に立ち、弓の攻撃を抜けて来たゴブリンを魔法で凍らせると壁の代わりにしてしまった。

「リサ殿達の部隊が戻るまで壁を塞ぐ訳にもいきませんからね……これでもう暫くは時間が稼げそうです」

 端から見れば何とも凄まじい印象を持たれるだろうと思われる壁を作るとマリアはキャロ達の様子を見ようとその場を離れた。

「マリアさん!」走ってきたのはティムだった。そしてその後ろには見覚えなあるエルフのタリアの姿もあった。

「失礼、マリア殿、私はナザリーに報告して参ります。そちらのティムに詳細はお聞き下さい」

 挨拶もそこそこにタリアは防壁上で戦う仲間の元に向かった。

「ティム、ご苦労様です。早速で申し訳ないですが進展はありましたか?」

 ティムの帰還が遅かった事とタリアの様子から、おおよその予想はマリアにも出来ていた。

「はい、ダスティン・ガザフ辺境伯自らの親征が決まりました。編成の問題で到着は早くても明日以降になるだろうとギルド長が仰っていました」

 ティムの報告はマリアの予想を越える物だった。

「親征ですか……分隊程度の派兵になるかと思っていましたが、思っていたよりも動きが早くて助かりますね」

 もう少しティムの戻りが遅ければ、ルナ達に伝令役を頼むつもりだったのだ。

 現在の防衛戦の状況は悪くはなかった。ニースが偶然にもゴブリンジェネラルを一体倒してくれたお陰で、合流される事なく各個撃破が出来ていて理想的な迎撃が行えている状態だった。

「こうなると気掛かりなのは、調査隊のリサ殿達ですね」

 そう言うとマリアは遠く大規模拠点がある方角を、厳しい視線で見つめたのだった。
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