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119:始まりの遺跡
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やって来たサラは、僕達が行っていた蜘蛛の回収作業を手伝いながらここに来た目的を話してくれた。
「突然押し掛けて悪いんだけど、この作業が終わったら十層まで一緒に来て貰えないかしら?」
蜘蛛狩りは数日でかなりの数を倒している。サリナさんからは弓の弦に使う材料なので大量に欲しいと言われていて、数を指定されているわけではない。それでも続けているのは一匹で銀貨一枚の収入になるからだ。
糸玉と魔石以外にも、ルナが毒から錬金術で毒消しを作れるのでかなりの収入になるのだ。厄介な敵だが魔法の豊富な僕達にとっては素材的にも美味しい獲物と言えた。
だが残念ながら、魔素吸収での成長は期待出来ないのでそろそろ移動しなければと考えていたところだった。
「かなりの数を狩ったから構わないけど、十層って遺跡だよね? 僕にやれる事なんてあるのかな?」
エルフィーデにはサラを含めて色々とお世話になっているので、手伝える事があるのなら何かしたかった。
「遺跡に研究施設を作るって話を以前にしたと思うんだけど……施設を作る目的は話してなかったわよね」
サラが見習いとして査察団に所属する事になり、最初の任務が遺跡に護衛として赴く事になると聞いていた。
「遺跡には転移魔法陣があって、それを調査する為の長期滞在場所を設置するのが今回の目的なんだけどね」サラはかなり重要な情報を軽く言ってのけた。
「遺跡内に設置する予定だったんだけど、思ってたより遺跡の状態が悪いらしいのよ。崩落の危険がありそうなので強化補修が済むまでは外に仮設の天幕を張ることなったんだけど……魔物の襲撃が多くてこのままでは作業員を連れて来るのが難しそうなのよ、だからねニースの土壁で……って私の話をちゃんと聞いてるのかしら?」
「転移魔法陣……」最初の一言で僕の意識は固まってしまっていたのだった。
◻ ◼ ◻
僕達四人は十層に向かって森林地帯を横断して街道のようになっている道をひたすら走っていた。遺跡での作業時間が読めなかったので急ぐ必要があったからだ。
皆、成長しているので階層横断の間、休み無しで走り続ける程度の体力はあった。途中で何度か森林内で魔物の気配を感じたが無視して走り抜けた。
(ルナ達をあまり長時間ダンジョン内にとどめておきたくないんだよね、遅くなると皆心配するだろうし)
二人は自分達だけで地上に戻ると言ったのだが、差し迫った理由もなくパーティーがダンジョン内で別れるのは良くないだろうと思うのだ。
「見えてきたわ、あれよ」森林地帯を抜けた先に広場が見える。
遺跡というので、何か巨大な建造物をイメージしていたのだが、見えてきたのは特に何も変わったところもない洞窟の入り口だった。
洞窟の入り口周辺にはいくつかの天幕が張られているのが見え、エルフィーデの調査隊らしき人の姿が見えた。
天幕に近づくと中からリサさんが出てくるのが見えた。
「わざわざ済まないな」
「いえ、力になれれば良いのですが」
そう挨拶を交わし、作業の説明を受ける事になった。
「今は、施設部隊が遺跡内で補強の見積りを行っている……思ってたより人手が要りそうでな、困ってたところだ」
天幕は設置したが、防護柵などを設置する余裕がないという状況のようだ。
「この辺りを囲うように土壁を設置していけば良いですか?」
洞窟の入り口周辺は広場のようになっているので、森を境界線にして土壁を設置するべきだろう。
広場の部分を全て安全圏に出来れば、人員が後から増えても対応できそうだ。
「ああ、話が早くて助かる任せて良いか?」リサさんは他にもやる事がありそうなので僕は勝手にやらせて貰う事になった。
「ニース!」ルピナスにまたがって周辺を散策していたニースを呼び戻し、これからの作業の説明を行った。
「こう、ぐるっと囲みたいんだわかるかい?」ニースは楽しそうに聞いている、見廻りやお手伝いがとても大好きみたいなのだ。
(僕も小さい頃はじいちゃんのお手伝いをやりたがったな)
僕の説明を聞いたニースは早速、「【ストーンウォール】」と可愛い声で唱えると土壁を森林との境界に設置していった。
「ちゃんと分かってくれたみたいだな」僕はニースの作業を見ながらそう呟やいた。
「でも、魔力の制御がまだまだね。力は凄いんだけど丁寧な作業はまだ無理かもね」
シルフィーがそう評価した通り、横に設置された二枚の土壁は人が一人くらいならすり抜けられそうな隙間が空いていた。
「そうかもだけど、このくらいなら僕でもなんとか出来るよ」
そう言いながら僕は土壁の隙間部分に手をかざして「【ストーンウォール】」と唱えた。
契約した精霊の魔法を契約者は借りて使う事が可能なので、僕もニースの魔法を使えるのだ。
だが残念ながら借り物の力なので精霊本体の魔法より劣る力しか出せない。
それでも、魔力操作は僕のほうが上手いだろう、細かいサイズの変更等が僕には出来た。
僕は後追いで、ニースの作業の補修をしていった。
「これはまた……想像以上の出来映えだな……」作業を終えた頃に戻ってきたリサさんが驚いていた。
広場全体が城壁で囲われたようになっていたのだ。
「これなら他にも施設を作って、階層攻略の前線基地にも出来るのでは?」
他の調査隊や施設部隊の人々も色々話している。
(なんだか大事になってきたな)
僕はなんだか居心地の悪い思いになりながら、その光景を眺めていた。
「突然押し掛けて悪いんだけど、この作業が終わったら十層まで一緒に来て貰えないかしら?」
蜘蛛狩りは数日でかなりの数を倒している。サリナさんからは弓の弦に使う材料なので大量に欲しいと言われていて、数を指定されているわけではない。それでも続けているのは一匹で銀貨一枚の収入になるからだ。
糸玉と魔石以外にも、ルナが毒から錬金術で毒消しを作れるのでかなりの収入になるのだ。厄介な敵だが魔法の豊富な僕達にとっては素材的にも美味しい獲物と言えた。
だが残念ながら、魔素吸収での成長は期待出来ないのでそろそろ移動しなければと考えていたところだった。
「かなりの数を狩ったから構わないけど、十層って遺跡だよね? 僕にやれる事なんてあるのかな?」
エルフィーデにはサラを含めて色々とお世話になっているので、手伝える事があるのなら何かしたかった。
「遺跡に研究施設を作るって話を以前にしたと思うんだけど……施設を作る目的は話してなかったわよね」
サラが見習いとして査察団に所属する事になり、最初の任務が遺跡に護衛として赴く事になると聞いていた。
「遺跡には転移魔法陣があって、それを調査する為の長期滞在場所を設置するのが今回の目的なんだけどね」サラはかなり重要な情報を軽く言ってのけた。
「遺跡内に設置する予定だったんだけど、思ってたより遺跡の状態が悪いらしいのよ。崩落の危険がありそうなので強化補修が済むまでは外に仮設の天幕を張ることなったんだけど……魔物の襲撃が多くてこのままでは作業員を連れて来るのが難しそうなのよ、だからねニースの土壁で……って私の話をちゃんと聞いてるのかしら?」
「転移魔法陣……」最初の一言で僕の意識は固まってしまっていたのだった。
◻ ◼ ◻
僕達四人は十層に向かって森林地帯を横断して街道のようになっている道をひたすら走っていた。遺跡での作業時間が読めなかったので急ぐ必要があったからだ。
皆、成長しているので階層横断の間、休み無しで走り続ける程度の体力はあった。途中で何度か森林内で魔物の気配を感じたが無視して走り抜けた。
(ルナ達をあまり長時間ダンジョン内にとどめておきたくないんだよね、遅くなると皆心配するだろうし)
二人は自分達だけで地上に戻ると言ったのだが、差し迫った理由もなくパーティーがダンジョン内で別れるのは良くないだろうと思うのだ。
「見えてきたわ、あれよ」森林地帯を抜けた先に広場が見える。
遺跡というので、何か巨大な建造物をイメージしていたのだが、見えてきたのは特に何も変わったところもない洞窟の入り口だった。
洞窟の入り口周辺にはいくつかの天幕が張られているのが見え、エルフィーデの調査隊らしき人の姿が見えた。
天幕に近づくと中からリサさんが出てくるのが見えた。
「わざわざ済まないな」
「いえ、力になれれば良いのですが」
そう挨拶を交わし、作業の説明を受ける事になった。
「今は、施設部隊が遺跡内で補強の見積りを行っている……思ってたより人手が要りそうでな、困ってたところだ」
天幕は設置したが、防護柵などを設置する余裕がないという状況のようだ。
「この辺りを囲うように土壁を設置していけば良いですか?」
洞窟の入り口周辺は広場のようになっているので、森を境界線にして土壁を設置するべきだろう。
広場の部分を全て安全圏に出来れば、人員が後から増えても対応できそうだ。
「ああ、話が早くて助かる任せて良いか?」リサさんは他にもやる事がありそうなので僕は勝手にやらせて貰う事になった。
「ニース!」ルピナスにまたがって周辺を散策していたニースを呼び戻し、これからの作業の説明を行った。
「こう、ぐるっと囲みたいんだわかるかい?」ニースは楽しそうに聞いている、見廻りやお手伝いがとても大好きみたいなのだ。
(僕も小さい頃はじいちゃんのお手伝いをやりたがったな)
僕の説明を聞いたニースは早速、「【ストーンウォール】」と可愛い声で唱えると土壁を森林との境界に設置していった。
「ちゃんと分かってくれたみたいだな」僕はニースの作業を見ながらそう呟やいた。
「でも、魔力の制御がまだまだね。力は凄いんだけど丁寧な作業はまだ無理かもね」
シルフィーがそう評価した通り、横に設置された二枚の土壁は人が一人くらいならすり抜けられそうな隙間が空いていた。
「そうかもだけど、このくらいなら僕でもなんとか出来るよ」
そう言いながら僕は土壁の隙間部分に手をかざして「【ストーンウォール】」と唱えた。
契約した精霊の魔法を契約者は借りて使う事が可能なので、僕もニースの魔法を使えるのだ。
だが残念ながら借り物の力なので精霊本体の魔法より劣る力しか出せない。
それでも、魔力操作は僕のほうが上手いだろう、細かいサイズの変更等が僕には出来た。
僕は後追いで、ニースの作業の補修をしていった。
「これはまた……想像以上の出来映えだな……」作業を終えた頃に戻ってきたリサさんが驚いていた。
広場全体が城壁で囲われたようになっていたのだ。
「これなら他にも施設を作って、階層攻略の前線基地にも出来るのでは?」
他の調査隊や施設部隊の人々も色々話している。
(なんだか大事になってきたな)
僕はなんだか居心地の悪い思いになりながら、その光景を眺めていた。
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