118 / 213
118:蜘蛛狩り
しおりを挟む
「蜘蛛そっちに一匹行ったよ! お願い!」僕が後ろに叫ぶと同時に、三本の魔法の矢が蜘蛛の頭を破壊した。
後ろで弓矢を放ったのは、ディーネとキャロそしてルナだ。キャロは変異種との戦いでサラと僕を弓の一撃で救ってくれたお礼として、精霊弓をサラから貰ったのだ。ルナは僕が貸した複合弓を使っている。
そのサラは一つ羽の探索者になった事で、正式に査察団の見習い隊員として認められたらしい。
今は査察団と共に十層にあるという始まりの遺跡へ、施設部隊とガザフの建設作業員を護衛する任務についている。
詳しくは教えて貰えなかったが、研究所という物を作る事になったようだ。
僕はというと、一つ羽の探索者になったので一気に十一層に挑戦しようかと考えていたのだが、領営工房のサリナさんから指名依頼で蜘蛛の糸玉を取ってきて欲しいと頼まれ、ここ数日八層で[レッサースパイダー]狩りを行っている。
何故、僕にレッサースパイダー狩りの依頼が来るのか不思議だったが、戦ってみてとても納得がいった。
(これ、近接攻撃主体だと悲惨な事になるよね)
蜘蛛達は集団で襲ってくるし、蜘蛛糸で絡めてからの毒吐き攻撃は嫌になるような連続攻撃だ。
僕は囮役として蜘蛛達を引き付け、ルピナスの【ウィンドウォール】の援護を受けながらバゼラードを振るう。
バゼラードから放たれた【風刃】が蜘蛛の頭を潰した。エルフィーデのリサさんにお願いした魔法陣書き換えによって、じいちゃんが遺してくれたバゼラードは装填式の黒魔武器となっていた。
届けに来てくれたサラが、驚いて受け取る僕に「目立つ場所で使わないようにね、まあユーリは誰もいないような狩り場しか行かないから心配ないわね」と笑って手渡してくれた。
(装填式の黒魔武器なんて僕が使って良いのかな)
そんな事も考えたが、黒魔鉄の武器を気が付かずにずっと使っていた僕が、今さらかなという気もしたので感謝して受け取った。
ニースの作った土壁に隠れながらの支援攻撃と、シルフィーの上空からの【風刃】の援護を受けているお陰で、僕は包囲されるような事もなく次々と蜘蛛を葬っていった。
程なく蜘蛛を殲滅した僕達は、魔石と糸玉袋そして毒袋からの毒の採取を行った。
蜘蛛達は集団で襲ってくるので一旦戦闘になると殲滅するまで戦闘は終わらない。そして、終わったら大量の素材回収が待っている。
「ティムとリーゼが居てくれたらもっと楽なんですけどね」ルナが笑いながら言ってくる。
「毒の取りだしをルナとディーネが水魔法でやってくれてるから随分助かってるよ」
触れないで毒液を器用に吸い出す水魔法がなければもっと大変だっただろう。
「ティム達は頑張ってるかな、店舗の準備は進んでる?」
変異種の討伐報酬はマリアさんの言葉通り期待以上の報酬をもたらしてくれた。
六人で分けても一人金貨一枚になり、そのお金を元手に旧市街の中央市場の店舗を借りて、串焼き屋をティムとリーゼは始めるつもりなのだ。
二人は今頃、奔走中だろうと思う。ギルドからの仕事を受けられるようになったが、まだまだ孤児院には人がいるのだ。
「店舗でポーションや毒消し薬とか革の加工品等も売るつもりなんです」ルナが嬉しそうに報告してくれた。
「キャロとルナはウサギと蜂狩りの担当なんだよ!」キャロも自慢そうに教えてくれる。
「キャロと私で素材の仕入れを行うんです」もう二人も一つ羽の探索者なのだ心配の必要はなかった。
「あら、私も忘れないでよ」
空から降りてきたシルフィーが、キャロの頭の上で偉そうに注意してきた。
「シルフィー、見張りサボっちゃメッ!」ルピナスにまたがって、空から周囲の警戒をしていたニースが上空からシルフィーを叱っている。
ニースは飛ぶのがあまり得意ではないようで、ルピナスの背中はニースの特等席となっていた。
「わかったわよ、意外と生真面目な子なんだから」文句を言いながらも見張りに戻っていった。
ここは三層までのような安全圏ではない。常に警戒が必要な場所なのだ。
「あ! いたいた、まだやってたのね。戻らないで済んで助かったわ!」
そう言って近づいて来たのは調査隊と共に遺跡にいるはずのサラだった。
後ろで弓矢を放ったのは、ディーネとキャロそしてルナだ。キャロは変異種との戦いでサラと僕を弓の一撃で救ってくれたお礼として、精霊弓をサラから貰ったのだ。ルナは僕が貸した複合弓を使っている。
そのサラは一つ羽の探索者になった事で、正式に査察団の見習い隊員として認められたらしい。
今は査察団と共に十層にあるという始まりの遺跡へ、施設部隊とガザフの建設作業員を護衛する任務についている。
詳しくは教えて貰えなかったが、研究所という物を作る事になったようだ。
僕はというと、一つ羽の探索者になったので一気に十一層に挑戦しようかと考えていたのだが、領営工房のサリナさんから指名依頼で蜘蛛の糸玉を取ってきて欲しいと頼まれ、ここ数日八層で[レッサースパイダー]狩りを行っている。
何故、僕にレッサースパイダー狩りの依頼が来るのか不思議だったが、戦ってみてとても納得がいった。
(これ、近接攻撃主体だと悲惨な事になるよね)
蜘蛛達は集団で襲ってくるし、蜘蛛糸で絡めてからの毒吐き攻撃は嫌になるような連続攻撃だ。
僕は囮役として蜘蛛達を引き付け、ルピナスの【ウィンドウォール】の援護を受けながらバゼラードを振るう。
バゼラードから放たれた【風刃】が蜘蛛の頭を潰した。エルフィーデのリサさんにお願いした魔法陣書き換えによって、じいちゃんが遺してくれたバゼラードは装填式の黒魔武器となっていた。
届けに来てくれたサラが、驚いて受け取る僕に「目立つ場所で使わないようにね、まあユーリは誰もいないような狩り場しか行かないから心配ないわね」と笑って手渡してくれた。
(装填式の黒魔武器なんて僕が使って良いのかな)
そんな事も考えたが、黒魔鉄の武器を気が付かずにずっと使っていた僕が、今さらかなという気もしたので感謝して受け取った。
ニースの作った土壁に隠れながらの支援攻撃と、シルフィーの上空からの【風刃】の援護を受けているお陰で、僕は包囲されるような事もなく次々と蜘蛛を葬っていった。
程なく蜘蛛を殲滅した僕達は、魔石と糸玉袋そして毒袋からの毒の採取を行った。
蜘蛛達は集団で襲ってくるので一旦戦闘になると殲滅するまで戦闘は終わらない。そして、終わったら大量の素材回収が待っている。
「ティムとリーゼが居てくれたらもっと楽なんですけどね」ルナが笑いながら言ってくる。
「毒の取りだしをルナとディーネが水魔法でやってくれてるから随分助かってるよ」
触れないで毒液を器用に吸い出す水魔法がなければもっと大変だっただろう。
「ティム達は頑張ってるかな、店舗の準備は進んでる?」
変異種の討伐報酬はマリアさんの言葉通り期待以上の報酬をもたらしてくれた。
六人で分けても一人金貨一枚になり、そのお金を元手に旧市街の中央市場の店舗を借りて、串焼き屋をティムとリーゼは始めるつもりなのだ。
二人は今頃、奔走中だろうと思う。ギルドからの仕事を受けられるようになったが、まだまだ孤児院には人がいるのだ。
「店舗でポーションや毒消し薬とか革の加工品等も売るつもりなんです」ルナが嬉しそうに報告してくれた。
「キャロとルナはウサギと蜂狩りの担当なんだよ!」キャロも自慢そうに教えてくれる。
「キャロと私で素材の仕入れを行うんです」もう二人も一つ羽の探索者なのだ心配の必要はなかった。
「あら、私も忘れないでよ」
空から降りてきたシルフィーが、キャロの頭の上で偉そうに注意してきた。
「シルフィー、見張りサボっちゃメッ!」ルピナスにまたがって、空から周囲の警戒をしていたニースが上空からシルフィーを叱っている。
ニースは飛ぶのがあまり得意ではないようで、ルピナスの背中はニースの特等席となっていた。
「わかったわよ、意外と生真面目な子なんだから」文句を言いながらも見張りに戻っていった。
ここは三層までのような安全圏ではない。常に警戒が必要な場所なのだ。
「あ! いたいた、まだやってたのね。戻らないで済んで助かったわ!」
そう言って近づいて来たのは調査隊と共に遺跡にいるはずのサラだった。
0
お気に入りに追加
311
あなたにおすすめの小説

【完結】悪役令嬢に転生したけど、王太子妃にならない方が幸せじゃない?
みちこ
ファンタジー
12歳の時に前世の記憶を思い出し、自分が悪役令嬢なのに気が付いた主人公。
ずっと王太子に片思いしていて、将来は王太子妃になることしか頭になかった主人公だけど、前世の記憶を思い出したことで、王太子の何が良かったのか疑問に思うようになる
色々としがらみがある王太子妃になるより、このまま公爵家の娘として暮らす方が幸せだと気が付く
どうも、死んだはずの悪役令嬢です。
西藤島 みや
ファンタジー
ある夏の夜。公爵令嬢のアシュレイは王宮殿の舞踏会で、婚約者のルディ皇子にいつも通り罵声を浴びせられていた。
皇子の罵声のせいで、男にだらしなく浪費家と思われて王宮殿の使用人どころか通っている学園でも遠巻きにされているアシュレイ。
アシュレイの誕生日だというのに、エスコートすら放棄して、皇子づきのメイドのミュシャに気を遣うよう求めてくる皇子と取り巻き達に、呆れるばかり。
「幼馴染みだかなんだかしらないけれど、もう限界だわ。あの人達に罰があたればいいのに」
こっそり呟いた瞬間、
《願いを聞き届けてあげるよ!》
何故か全くの別人になってしまっていたアシュレイ。目の前で、アシュレイが倒れて意識不明になるのを見ることになる。
「よくも、義妹にこんなことを!皇子、婚約はなかったことにしてもらいます!」
義父と義兄はアシュレイが状況を理解する前に、アシュレイの体を持ち去ってしまう。
今までミュシャを崇めてアシュレイを冷遇してきた取り巻き達は、次々と不幸に巻き込まれてゆき…ついには、ミュシャや皇子まで…
ひたすら一人づつざまあされていくのを、呆然と見守ることになってしまった公爵令嬢と、怒り心頭の義父と義兄の物語。
はたしてアシュレイは元に戻れるのか?
剣と魔法と妖精の住む世界の、まあまあよくあるざまあメインの物語です。
ざまあが書きたかった。それだけです。

他国から来た王妃ですが、冷遇? 私にとっては厚遇すぎます!
七辻ゆゆ
ファンタジー
人質同然でやってきたというのに、出されるご飯は母国より美味しいし、嫌味な上司もいないから掃除洗濯毎日楽しいのですが!?

悪役令嬢、資産運用で学園を掌握する 〜王太子?興味ない、私は経済で無双する〜
言諮 アイ
ファンタジー
異世界貴族社会の名門・ローデリア学園。そこに通う公爵令嬢リリアーナは、婚約者である王太子エドワルドから一方的に婚約破棄を宣言される。理由は「平民の聖女をいじめた悪役だから」?——はっ、笑わせないで。
しかし、リリアーナには王太子も知らない"切り札"があった。
それは、前世の知識を活かした「資産運用」。株式、事業投資、不動産売買……全てを駆使し、わずか数日で貴族社会の経済を掌握する。
「王太子?聖女?その程度の茶番に構っている暇はないわ。私は"資産"でこの学園を支配するのだから。」
破滅フラグ?なら経済で粉砕するだけ。
気づけば、学園も貴族もすべてが彼女の手中に——。
「お前は……一体何者だ?」と動揺する王太子に、リリアーナは微笑む。
「私はただの投資家よ。負けたくないなら……資本主義のルールを学びなさい。」
学園を舞台に繰り広げられる異世界経済バトルロマンス!
"悪役令嬢"、ここに爆誕!

異世界に落ちたら若返りました。
アマネ
ファンタジー
榊原 チヨ、87歳。
夫との2人暮らし。
何の変化もないけど、ゆっくりとした心安らぐ時間。
そんな普通の幸せが側にあるような生活を送ってきたのにーーー
気がついたら知らない場所!?
しかもなんかやたらと若返ってない!?
なんで!?
そんなおばあちゃんのお話です。
更新は出来れば毎日したいのですが、物語の時間は割とゆっくり進むかもしれません。
婚約破棄されて辺境へ追放されました。でもステータスがほぼMAXだったので平気です!スローライフを楽しむぞっ♪
naturalsoft
恋愛
シオン・スカーレット公爵令嬢は転生者であった。夢だった剣と魔法の世界に転生し、剣の鍛錬と魔法の鍛錬と勉強をずっとしており、攻略者の好感度を上げなかったため、婚約破棄されました。
「あれ?ここって乙女ゲーの世界だったの?」
まっ、いいかっ!
持ち前の能天気さとポジティブ思考で、辺境へ追放されても元気に頑張って生きてます!

お前じゃないと、追い出されたが最強に成りました。ざまぁ~見ろ(笑)
いくみ
ファンタジー
お前じゃないと、追い出されたので楽しく復讐させて貰いますね。実は転生者で今世紀では貴族出身、前世の記憶が在る、今まで能力を隠して居たがもう我慢しなくて良いな、開き直った男が楽しくパーティーメンバーに復讐していく物語。
---------
掲載は不定期になります。
追記
「ざまぁ」までがかなり時間が掛かります。
お知らせ
カクヨム様でも掲載中です。

[完結] 邪魔をするなら潰すわよ?
シマ
ファンタジー
私はギルドが運営する治療院で働く治療師の一人、名前はルーシー。
クエストで大怪我したハンター達の治療に毎日、忙しい。そんなある日、騎士の格好をした一人の男が運び込まれた。
貴族のお偉いさんを魔物から護った騎士団の団長さんらしいけど、その場に置いていかれたの?でも、この傷は魔物にヤられたモノじゃないわよ?
魔法のある世界で亡くなった両親の代わりに兄妹を育てるルーシー。彼女は兄妹と静かに暮らしたいけど何やら回りが放ってくれない。
ルーシーが気になる団長さんに振り回されたり振り回したり。
私の生活を邪魔をするなら潰すわよ?
1月5日 誤字脱字修正 54話
★━戦闘シーンや猟奇的発言あり
流血シーンあり。
魔法・魔物あり。
ざぁま薄め。
恋愛要素あり。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる