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107:調査隊4
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戦闘が始まって僅かな時間で、既に半数以上の敵が屍となって転がっている。この場にいる者達の実力を考えれば、それも当然の結果だったかもしれない。
それぞれの者には加護として四枚羽と呼ばれる中位精霊もついている。
「どうやら、過剰戦力だったかもしれません」隣に控えているリサがそう評したのも無理はないかもしれない。
全員が、ガザフのダンジョン遠征軍に査察団として参加した者達なのだ。三層のレッサーウルフ相手に遅れを取るとは考えにくかった。
しかも、現在の装備は前回の遠征時には無かった、魔法武器を装備している。これで苦戦しろというのが無理な相談に違いない。
更に、ミリアとリサ、そしてゲスト的に参加しているマリアに至っては、戦闘が開始してから、最初の場所を動いてもいない。
「フォーン」傍観していたリーダーの角付きが【遠吠え】を放った。
状況不利だとようやく悟ったのだろう、このままでは群れが殲滅されるのも時間の問題だろうというタイミングで撤退を開始した。
「これ以上、時間を取られるのも面倒ですね。ギルドの業務にも差し障りがでます。足止めさせて貰いましょう……【氷雪】」
マリアの周囲に強力な魔力循環の流れが発生し、彼女が掲げた手のひらに膨大な魔力が集まったかと思うと、白い吹雪となって逃げようとする狼達の足元に絡み付いた。
角付きを含め、半数以下まで減っていたレッサーウルフの群れが、その場に釘付けにされ動けなくなった。
「協力感謝しますマリア殿、残りを早々に始末せよ!」リサの指示で団員が動きだそうとした。
「いや、その必要はないみたいよ……マリア殿、もう少し手加減して頂かないと」ミリアが隣にいるマリアに少しばかり呆れたようにそう告げた。
「申し訳ありません……出過ぎた真似になってしまったようです。加減を誤りました……」
逃げようとした残りの群れは角付きを含めて、マリアの【氷雪】の魔力で凍死して全滅していたのだった。
◻ ◼ ◻
白狼と遭遇して僕が最初に決断したのは、撤退する事だった。フィーネの言った通り、相手は本気で不味い相手だと遠目で見ただけで理解出来た。
「ごめんなさいね~、前回見たときは距離が有りすぎて姿しか確認できなかったのよ~」
フィーネが言いたいのは、ここまで強そうとは思わなかったという事だろう。
「撤退しよう、二層入り口に走るよ」という僕の言葉に、普段は強気なサラも頷き、「いくわよ!」と僕に向かって声をかけると、躊躇なく走り出した。
こういう時に冷静な判断が出来る仲間の存在は有り難かった。
調査隊との合流も考えたが、方角しか分からない部隊との合流を目指すのはかなりの賭けになる。だから確実な方を選択する事にした。二層を目指したのは単純に四層に向かうより距離が近かったからだ。
僕達は全力で走った。迷わず撤退を選択したお陰で、ある程度の距離を空ける事が出来た。
(スピードは敵が上のようだ……距離が徐々に近くなってきている)
それでも、なんとか追い付かれずにいるのは、殿となって【風刃】を放っては撤退を繰り返しているフィーネの存在だった。
姿を消しては、サラの元に現れ、敵が追い付きそうになれば【風刃】を放ち回避させる事で時間を稼いでくれている。
(このまま行けば逃げ切れるか……)
そうやってかなり走った頃、遠くに二層への入り口が見えて僕は少し安堵しかけた。
だがその考えは甘かったようだった。フィーネの放った【風刃】を【遠吠え】で無効化した白狼が、一気に飛び込んで来て僕達の前に回り込んできたのだ。
何度も回避するうちに、フィーネの【風刃】のタイミングを覚え【遠吠え】を上手く合わせて来たようだ。
僕達は立ち止まった……そして、戦って勝つ以外に、この場を生きて抜ける事は出来ないと悟ったのだった。
それぞれの者には加護として四枚羽と呼ばれる中位精霊もついている。
「どうやら、過剰戦力だったかもしれません」隣に控えているリサがそう評したのも無理はないかもしれない。
全員が、ガザフのダンジョン遠征軍に査察団として参加した者達なのだ。三層のレッサーウルフ相手に遅れを取るとは考えにくかった。
しかも、現在の装備は前回の遠征時には無かった、魔法武器を装備している。これで苦戦しろというのが無理な相談に違いない。
更に、ミリアとリサ、そしてゲスト的に参加しているマリアに至っては、戦闘が開始してから、最初の場所を動いてもいない。
「フォーン」傍観していたリーダーの角付きが【遠吠え】を放った。
状況不利だとようやく悟ったのだろう、このままでは群れが殲滅されるのも時間の問題だろうというタイミングで撤退を開始した。
「これ以上、時間を取られるのも面倒ですね。ギルドの業務にも差し障りがでます。足止めさせて貰いましょう……【氷雪】」
マリアの周囲に強力な魔力循環の流れが発生し、彼女が掲げた手のひらに膨大な魔力が集まったかと思うと、白い吹雪となって逃げようとする狼達の足元に絡み付いた。
角付きを含め、半数以下まで減っていたレッサーウルフの群れが、その場に釘付けにされ動けなくなった。
「協力感謝しますマリア殿、残りを早々に始末せよ!」リサの指示で団員が動きだそうとした。
「いや、その必要はないみたいよ……マリア殿、もう少し手加減して頂かないと」ミリアが隣にいるマリアに少しばかり呆れたようにそう告げた。
「申し訳ありません……出過ぎた真似になってしまったようです。加減を誤りました……」
逃げようとした残りの群れは角付きを含めて、マリアの【氷雪】の魔力で凍死して全滅していたのだった。
◻ ◼ ◻
白狼と遭遇して僕が最初に決断したのは、撤退する事だった。フィーネの言った通り、相手は本気で不味い相手だと遠目で見ただけで理解出来た。
「ごめんなさいね~、前回見たときは距離が有りすぎて姿しか確認できなかったのよ~」
フィーネが言いたいのは、ここまで強そうとは思わなかったという事だろう。
「撤退しよう、二層入り口に走るよ」という僕の言葉に、普段は強気なサラも頷き、「いくわよ!」と僕に向かって声をかけると、躊躇なく走り出した。
こういう時に冷静な判断が出来る仲間の存在は有り難かった。
調査隊との合流も考えたが、方角しか分からない部隊との合流を目指すのはかなりの賭けになる。だから確実な方を選択する事にした。二層を目指したのは単純に四層に向かうより距離が近かったからだ。
僕達は全力で走った。迷わず撤退を選択したお陰で、ある程度の距離を空ける事が出来た。
(スピードは敵が上のようだ……距離が徐々に近くなってきている)
それでも、なんとか追い付かれずにいるのは、殿となって【風刃】を放っては撤退を繰り返しているフィーネの存在だった。
姿を消しては、サラの元に現れ、敵が追い付きそうになれば【風刃】を放ち回避させる事で時間を稼いでくれている。
(このまま行けば逃げ切れるか……)
そうやってかなり走った頃、遠くに二層への入り口が見えて僕は少し安堵しかけた。
だがその考えは甘かったようだった。フィーネの放った【風刃】を【遠吠え】で無効化した白狼が、一気に飛び込んで来て僕達の前に回り込んできたのだ。
何度も回避するうちに、フィーネの【風刃】のタイミングを覚え【遠吠え】を上手く合わせて来たようだ。
僕達は立ち止まった……そして、戦って勝つ以外に、この場を生きて抜ける事は出来ないと悟ったのだった。
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