108 / 213
108:白狼1
しおりを挟む
「どうやら逃がしてくれる気はなさそうだ」僕はバゼラードを抜き盾を構えた。
「そのようね、少し痛い目を見て貰うしかないようね」サラも冗談めかして言っているが、声にはそんな余裕がある雰囲気は無かった。
「【ウィンドウォール】に専念するわね、攻撃はサラが、ユーリは牽制をお願い~」フィーネの指示は的確だと思えた。
フィーネの【風刃】が使えないのは、正直痛かったが敵の攻撃力が読めないので、防御重視で相手の動きを見極める必要があった。
そして、僕のやるべき事は、牽制という名の囮役になる事だろうという覚悟をした。
サラがいくら黒魔剣持ちだと言っても、生半可な攻撃では相手に致命傷を与える事が出来ないかもしれない。
このメンバーでの僕の役割は、サラが敵の隙を衝けるような状態に持っていく事に他ならない。
僕はじいちゃんの言葉を思い出していた。
『強敵となると話はちがう、大抵は時間を稼ぐ必要がある。今、お前が時間をかけて習得すべきは、格上相手に少しでも長く生き延びる力を身に付ける事じゃて』
『そうじゃ逃げれれば、それに越したことはないのう。だがワシの言う時間稼ぎとは、仲間の強力な反撃を待つという意味でもある。信頼出来る仲間を見つける事じゃな』
じいちゃんとの長年の訓練は、今日この時の為にあったのではないかと思えるような状況が巡ってきた。
僕は、全身に魔力を循環させ装備品の強化魔方陣を起動した。普段は危険な時しか行わないが、今回は例外だった。
(攻撃は考えない……只ひたすら防御して、この魔物を見極める!)
「ルピナス、ディーネ」召喚した二体には、後方で待機を指示した。
僕が成長した事で二体も成長しているに違いないのだが、敵の力量が分かる迄は最前線に立たせる気にはなれなかった。それでも召喚したのは、魔法による支援を期待しているからだ。
(僕が死ねば二体も消滅してしまう。僕達は、常に一蓮托生の関係だな)
「いくぞ!」僕は白狼に向かって走り出したのだった。
◻ ◼ ◻
白狼の攻撃は全てにおいて、レッサーウルフの上位互換と言えた。それはつまり見慣れた攻撃と言えるのだが……
(スピードとパワーが段違いなだけでこれ程、別次元の攻撃になるなんて)
防具の魔力強化と、フィーネの【ウィンドウォール】が無ければ、あっという間に僕の体は四散していたかもしれない。
(強化する魔力が切れれば終わりだ……)
僕が辛うじて攻撃を捌けているのは、盾の【風刃】とルピナスとディーネが放つ魔法の支援攻撃、そして、サラの行う死角からの【風刃】と斬撃の連続攻撃を白狼が回避するお陰だった。
「不味いわね~、敵は私達の魔力切れを待っているに違いないわ~、なんとか白狼の回避を越えるだけの手数が欲しいわね~」フィーネが【ウィンドウォール】を維持しながら嘆いている。
白狼の回避力は凄まじく、回避出来ない攻撃に対しては【遠吠え】を使い魔法を無効化してくる。
僕達はいよいよ手詰まり状態に陥ってしまったのだった。
「そのようね、少し痛い目を見て貰うしかないようね」サラも冗談めかして言っているが、声にはそんな余裕がある雰囲気は無かった。
「【ウィンドウォール】に専念するわね、攻撃はサラが、ユーリは牽制をお願い~」フィーネの指示は的確だと思えた。
フィーネの【風刃】が使えないのは、正直痛かったが敵の攻撃力が読めないので、防御重視で相手の動きを見極める必要があった。
そして、僕のやるべき事は、牽制という名の囮役になる事だろうという覚悟をした。
サラがいくら黒魔剣持ちだと言っても、生半可な攻撃では相手に致命傷を与える事が出来ないかもしれない。
このメンバーでの僕の役割は、サラが敵の隙を衝けるような状態に持っていく事に他ならない。
僕はじいちゃんの言葉を思い出していた。
『強敵となると話はちがう、大抵は時間を稼ぐ必要がある。今、お前が時間をかけて習得すべきは、格上相手に少しでも長く生き延びる力を身に付ける事じゃて』
『そうじゃ逃げれれば、それに越したことはないのう。だがワシの言う時間稼ぎとは、仲間の強力な反撃を待つという意味でもある。信頼出来る仲間を見つける事じゃな』
じいちゃんとの長年の訓練は、今日この時の為にあったのではないかと思えるような状況が巡ってきた。
僕は、全身に魔力を循環させ装備品の強化魔方陣を起動した。普段は危険な時しか行わないが、今回は例外だった。
(攻撃は考えない……只ひたすら防御して、この魔物を見極める!)
「ルピナス、ディーネ」召喚した二体には、後方で待機を指示した。
僕が成長した事で二体も成長しているに違いないのだが、敵の力量が分かる迄は最前線に立たせる気にはなれなかった。それでも召喚したのは、魔法による支援を期待しているからだ。
(僕が死ねば二体も消滅してしまう。僕達は、常に一蓮托生の関係だな)
「いくぞ!」僕は白狼に向かって走り出したのだった。
◻ ◼ ◻
白狼の攻撃は全てにおいて、レッサーウルフの上位互換と言えた。それはつまり見慣れた攻撃と言えるのだが……
(スピードとパワーが段違いなだけでこれ程、別次元の攻撃になるなんて)
防具の魔力強化と、フィーネの【ウィンドウォール】が無ければ、あっという間に僕の体は四散していたかもしれない。
(強化する魔力が切れれば終わりだ……)
僕が辛うじて攻撃を捌けているのは、盾の【風刃】とルピナスとディーネが放つ魔法の支援攻撃、そして、サラの行う死角からの【風刃】と斬撃の連続攻撃を白狼が回避するお陰だった。
「不味いわね~、敵は私達の魔力切れを待っているに違いないわ~、なんとか白狼の回避を越えるだけの手数が欲しいわね~」フィーネが【ウィンドウォール】を維持しながら嘆いている。
白狼の回避力は凄まじく、回避出来ない攻撃に対しては【遠吠え】を使い魔法を無効化してくる。
僕達はいよいよ手詰まり状態に陥ってしまったのだった。
0
お気に入りに追加
311
あなたにおすすめの小説
【12/29にて公開終了】愛するつもりなぞないんでしょうから
真朱
恋愛
この国の姫は公爵令息と婚約していたが、隣国との和睦のため、一転して隣国の王子の許へ嫁ぐことになった。余計ないざこざを防ぐべく、姫の元婚約者の公爵令息は王命でさくっと婚姻させられることになり、その相手として白羽の矢が立ったのは辺境伯家の二女・ディアナだった。「可憐な姫の後が、脳筋な辺境伯んとこの娘って、公爵令息かわいそうに…。これはあれでしょ?『お前を愛するつもりはない!』ってやつでしょ?」
期待も遠慮も捨ててる新妻ディアナと、好青年の仮面をひっ剥がされていく旦那様ラキルスの、『明日はどっちだ』な夫婦のお話。
※なんちゃって異世界です。なんでもあり、ご都合主義をご容赦ください。
※新婚夫婦のお話ですが色っぽさゼロです。Rは物騒な方です。
※ざまあのお話ではありません。軽い読み物とご理解いただけると幸いです。
※コミカライズにより12/29にて公開を終了させていただきます。
やさしい異世界転移
みなと
ファンタジー
妹の誕生日ケーキを買いに行く最中 謎の声に導かれて異世界へと転移してしまった主人公
神洞 優斗。
彼が転移した世界は魔法が発達しているファンタジーの世界だった!
元の世界に帰るまでの間優斗は学園に通い平穏に過ごす事にしたのだが……?
この時の優斗は気付いていなかったのだ。
己の……いや"ユウト"としての逃れられない定めがすぐ近くまで来ている事に。
この物語は 優斗がこの世界で仲間と出会い、共に様々な困難に立ち向かい希望 絶望 別れ 後悔しながらも進み続けて、英雄になって誰かに希望を託すストーリーである。
【完結】悪役令嬢に転生したけど、王太子妃にならない方が幸せじゃない?
みちこ
ファンタジー
12歳の時に前世の記憶を思い出し、自分が悪役令嬢なのに気が付いた主人公。
ずっと王太子に片思いしていて、将来は王太子妃になることしか頭になかった主人公だけど、前世の記憶を思い出したことで、王太子の何が良かったのか疑問に思うようになる
色々としがらみがある王太子妃になるより、このまま公爵家の娘として暮らす方が幸せだと気が付く
ぽっちゃり女子の異世界人生
猫目 しの
ファンタジー
大抵のトリップ&転生小説は……。
最強主人公はイケメンでハーレム。
脇役&巻き込まれ主人公はフツメンフツメン言いながらも実はイケメンでモテる。
落ちこぼれ主人公は可愛い系が多い。
=主人公は男でも女でも顔が良い。
そして、ハンパなく強い。
そんな常識いりませんっ。
私はぽっちゃりだけど普通に生きていたい。
【エブリスタや小説家になろうにも掲載してます】
異世界でもプログラム
北きつね
ファンタジー
俺は、元プログラマ・・・違うな。社内の便利屋。火消し部隊を率いていた。
とあるシステムのデスマの最中に、SIer の不正が発覚。
火消しに奔走する日々。俺はどうやらシステムのカットオーバの日を見ることができなかったようだ。
転生先は、魔物も存在する、剣と魔法の世界。
魔法がをプログラムのように作り込むことができる。俺は、異世界でもプログラムを作ることができる!
---
こんな生涯をプログラマとして過ごした男が転生した世界が、魔法を”プログラム”する世界。
彼は、プログラムの知識を利用して、魔法を編み上げていく。
注)第七話+幕間2話は、現実世界の話で転生前です。IT業界の事が書かれています。
実際にあった話ではありません。”絶対”に違います。知り合いのIT業界の人に聞いたりしないでください。
第八話からが、一般的な転生ものになっています。テンプレ通りです。
注)作者が楽しむ為に書いています。
誤字脱字が多いです。誤字脱字は、見つけ次第直していきますが、更新はまとめてになります。
【完結】ガラクタゴミしか召喚出来ないへっぽこ聖女、ゴミを糧にする大精霊達とのんびりスローライフを送る〜追放した王族なんて知らんぷりです!〜
櫛田こころ
ファンタジー
お前なんか、ガラクタ当然だ。
はじめの頃は……依頼者の望み通りのものを召喚出来た、召喚魔法を得意とする聖女・ミラジェーンは……ついに王族から追放を命じられた。
役立たずの聖女の代わりなど、いくらでもいると。
ミラジェーンの召喚魔法では、いつからか依頼の品どころか本当にガラクタもだが『ゴミ』しか召喚出来なくなってしまった。
なので、大人しく城から立ち去る時に……一匹の精霊と出会った。餌を与えようにも、相変わらずゴミしか召喚出来ずに泣いてしまうと……その精霊は、なんとゴミを『食べて』しまった。
美味しい美味しいと絶賛してくれた精霊は……ただの精霊ではなく、精霊王に次ぐ強力な大精霊だとわかり。ミラジェーンを精霊の里に来て欲しいと頼んできたのだ。
追放された聖女の召喚魔法は、実は精霊達には美味しい美味しいご飯だとわかり、のんびり楽しく過ごしていくスローライフストーリーを目指します!!
【完結】私だけが知らない
綾雅(要らない悪役令嬢1/7発売)
ファンタジー
目が覚めたら何も覚えていなかった。父と兄を名乗る二人は泣きながら謝る。痩せ細った体、痣が残る肌、誰もが過保護に私を気遣う。けれど、誰もが何が起きたのかを語らなかった。
優しい家族、ぬるま湯のような生活、穏やかに過ぎていく日常……その陰で、人々は己の犯した罪を隠しつつ微笑む。私を守るため、そう言いながら真実から遠ざけた。
やがて、すべてを知った私は――ひとつの決断をする。
記憶喪失から始まる物語。冤罪で殺されかけた私は蘇り、陥れようとした者は断罪される。優しい嘘に隠された真実が徐々に明らかになっていく。
【同時掲載】 小説家になろう、アルファポリス、カクヨム、エブリスタ
2023/12/20……小説家になろう 日間、ファンタジー 27位
2023/12/19……番外編完結
2023/12/11……本編完結(番外編、12/12)
2023/08/27……エブリスタ ファンタジートレンド 1位
2023/08/26……カテゴリー変更「恋愛」⇒「ファンタジー」
2023/08/25……アルファポリス HOT女性向け 13位
2023/08/22……小説家になろう 異世界恋愛、日間 22位
2023/08/21……カクヨム 恋愛週間 17位
2023/08/16……カクヨム 恋愛日間 12位
2023/08/14……連載開始
貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。
黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。
この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる