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106:調査隊3
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「ミリア様! 今の【遠吠え】……もしかして例の魔物でしょうか?」
周囲を査察団のエルフ達に囲まれたギルド受付孃のマリアが、隣を疾走するミリアに声をかけた。
「そうかもしれないわね……しかし領主殿への出立の挨拶に、思ったより手間取ったのは誤算でしたね」
適当に理由を付けて少数の調査隊を編成し出立しようとしたのだが、領主から呼び出しを受け事情の説明を余儀なくされてしまい、こんな時間になってしまったのだ。
「領主殿の情報収集能力もなかなか侮れないという事でしょうか? いや、これはマリア殿の前で失礼しました」
横から会話に入ってきたのは、この査察団の副長として実質的に団を率いていると言っても良い、銀髪の美しいエルフの女性で名前をリサという。
ミリアが自由に動き回れるのも、彼女が査察団に関する実務全般を担っているからで、最も信頼する右腕とも呼べる人物といえた。
実力もミリアを除けば、実力者集団で構成された査察団でもトップの実力者であり、団員からの信頼も篤かった。
「恐らく、ギルドからの協力要請が伝わったのでしょう」マリアは取り立てて気にする素振りも見せず無表情にそう言った。
「だがそのお陰で良いタイミングで来れたのかもしれない。情報もなく三層を闇雲に探し回るのは遠慮したかったのよね……あの【遠吠え】の主が目的の相手ならだけどね」
集団はひたすら【遠吠え】の聞こえてきたと思われる方角を目指して走り続けた。
そのスピードは凄まじく、そに速さと表情一つ変えることなく進む集団を端から見るものがいれば、其だけで尋常ではない者達だと理解出来たに違いない。
「見えました!」「間もなく会敵します!」
先頭を走る二人から、同時に声が掛かった。
「会敵!」
「第二種装備武器の使用を許可します! 抜剣!」リサの号令と同時にミリアとマリアを除く、その場の全員が黒魔剣を抜いた。
「どうやら、逃げられないと分かって、観念して戦うつもりみたいね。それとも、私達を誘き寄せたつもりかしら?」
ミリアがまるで緊張感の無い声音で、まるで話しかけるようにそう言った。
森を抜けた先には、三層中から集まったのかと思うほどの数のレッサーウルフの大群が待ち構えており、中央にはまるで守られる王でもあるように、他の三倍近くのサイズのある角の生えた狼が佇んでいた。
「報告とは少し色が違うようですが……」リサがミリアに語りかけ、ミリアも頷いて「だがこの階層にいて良い魔物ではない……やるぞ」
「ハッ! 総員突撃!」リサの号令を受けて抜刀していた調査隊のメンバーが一斉にレッサーウルフの群れに向かっていったのだった。
◻ ◼ ◻
僕達は、二十匹近くのレッサーウルフの魔素吸収を終え、魔石の回収作業を行っていた。装填式の魔法武器を使うようになり今後は、攻略に魔石が必要になるからだ。
「これだけギルドに納品したら、また孤児院に仕事が沢山いきそうだね」
魔石以外は全て納品に廻すつもりだった。肉は干し肉なら需要があるらしい。単純に素材としてならレッサーシープのほうが価値が高かった。
「みんな張り切っている事だし、良いことよ」同じく魔石を回収していたサラも嬉しそうに頷いた。
僕達が作業を終え、レッサーウルフを全て収納しこれからどうするか話していると、「ちょっと今回は本気で不味いかもしれないわ~」フィーネがふよふよと飛んできてそう報告した。
近くの森から現れたのは、白い毛並みで角の生えた[変異種]と思われる巨大な狼の姿だった。
周囲を査察団のエルフ達に囲まれたギルド受付孃のマリアが、隣を疾走するミリアに声をかけた。
「そうかもしれないわね……しかし領主殿への出立の挨拶に、思ったより手間取ったのは誤算でしたね」
適当に理由を付けて少数の調査隊を編成し出立しようとしたのだが、領主から呼び出しを受け事情の説明を余儀なくされてしまい、こんな時間になってしまったのだ。
「領主殿の情報収集能力もなかなか侮れないという事でしょうか? いや、これはマリア殿の前で失礼しました」
横から会話に入ってきたのは、この査察団の副長として実質的に団を率いていると言っても良い、銀髪の美しいエルフの女性で名前をリサという。
ミリアが自由に動き回れるのも、彼女が査察団に関する実務全般を担っているからで、最も信頼する右腕とも呼べる人物といえた。
実力もミリアを除けば、実力者集団で構成された査察団でもトップの実力者であり、団員からの信頼も篤かった。
「恐らく、ギルドからの協力要請が伝わったのでしょう」マリアは取り立てて気にする素振りも見せず無表情にそう言った。
「だがそのお陰で良いタイミングで来れたのかもしれない。情報もなく三層を闇雲に探し回るのは遠慮したかったのよね……あの【遠吠え】の主が目的の相手ならだけどね」
集団はひたすら【遠吠え】の聞こえてきたと思われる方角を目指して走り続けた。
そのスピードは凄まじく、そに速さと表情一つ変えることなく進む集団を端から見るものがいれば、其だけで尋常ではない者達だと理解出来たに違いない。
「見えました!」「間もなく会敵します!」
先頭を走る二人から、同時に声が掛かった。
「会敵!」
「第二種装備武器の使用を許可します! 抜剣!」リサの号令と同時にミリアとマリアを除く、その場の全員が黒魔剣を抜いた。
「どうやら、逃げられないと分かって、観念して戦うつもりみたいね。それとも、私達を誘き寄せたつもりかしら?」
ミリアがまるで緊張感の無い声音で、まるで話しかけるようにそう言った。
森を抜けた先には、三層中から集まったのかと思うほどの数のレッサーウルフの大群が待ち構えており、中央にはまるで守られる王でもあるように、他の三倍近くのサイズのある角の生えた狼が佇んでいた。
「報告とは少し色が違うようですが……」リサがミリアに語りかけ、ミリアも頷いて「だがこの階層にいて良い魔物ではない……やるぞ」
「ハッ! 総員突撃!」リサの号令を受けて抜刀していた調査隊のメンバーが一斉にレッサーウルフの群れに向かっていったのだった。
◻ ◼ ◻
僕達は、二十匹近くのレッサーウルフの魔素吸収を終え、魔石の回収作業を行っていた。装填式の魔法武器を使うようになり今後は、攻略に魔石が必要になるからだ。
「これだけギルドに納品したら、また孤児院に仕事が沢山いきそうだね」
魔石以外は全て納品に廻すつもりだった。肉は干し肉なら需要があるらしい。単純に素材としてならレッサーシープのほうが価値が高かった。
「みんな張り切っている事だし、良いことよ」同じく魔石を回収していたサラも嬉しそうに頷いた。
僕達が作業を終え、レッサーウルフを全て収納しこれからどうするか話していると、「ちょっと今回は本気で不味いかもしれないわ~」フィーネがふよふよと飛んできてそう報告した。
近くの森から現れたのは、白い毛並みで角の生えた[変異種]と思われる巨大な狼の姿だった。
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