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057:今そこにある危機

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 ダンジョンの役割について知りたかっただけなのに、シルフィーの話は僕が想像しなかった重苦しい内容だった。

 作業をしながら僕達の話を聞いていたのだろう、ルナも作業の手を止めこちらを少し不安そうに見ている。

 (何故、シルフィーはこんな重大な事を、僕みたいな駆け出し探索者に話したんだろう、ましてやルナにいたっては探索者でもないのに)

「今回の日記の内容はエルフィーデ女王国の首脳陣は大変な危機として見ているのよ。神授の森が過去に存在した遺跡文明の何らかの計画により産み出された物かもしれないという可能性に大変な衝撃を受けたの」

 (精霊信仰のある国の信仰の源が誰かに作り出された物かもしれないと分かったら、衝撃も受けるよね)

「どんな可能性があるにしろ、エルフィーデ女王国は神授の森に守り育てられて来た国よ、その信頼が簡単に揺らいだりはしないわ。でも問題はダンジョンの危険性を知らされても、危機意識の薄い人間種の国々の反応に不安視する声があるのよ」

 (実際に本物の日記を解読した訳じゃない者にとって、突然ダンジョンの危機を知らされても信じられないんじゃないかな?)

「突然、それ程の重大事を告げられても、簡単には信じられないんじゃない?」僕は思った事を素直に告げてみた。

 恐らく、エルフィーデ側でも、その事は理解しているのだろう。

「そうよね、人種というのは、欲深くて猜疑心の強い者が特に指導者層に多いものね。でも遺跡研究所が文献を解読した結果、数年の内に何らかの兆候が表れるかも知れないと考えているわ。そして、もっと情報を必要としているの」

 ここで話が繋がるのかと理解できた、エルフィーデが攻略階層の更新を急いでいるのは、危機について、もっと詳しい情報がダンジョン内の遺跡に眠っていないか調査したいのだろう。

「ユーリ、あなたに、こんな話を聞かせたのは私なりの理由があるの」
 
 シルフィーは少し考える素振りをしてから話しだした。
 
「あなたの持っているその小石のような精霊石、何か特殊な存在の欠片なんじゃないかと思うのよ」

 物心つく前から握っていた精霊石が、不思議な物だと思っていたけど、こうして精霊の口から直接聞かされると不安になってきた。

「曖昧な事を言って申し訳ないんだけど、今後のあなたの人生を左右する事になるかもしれない、もしその覚悟が持てないなら手放してしまうのが良いかもしれないわ」

 その申し出に腹を立てたりせず、冷静に受け止めた。じいちゃんにも、同様に、もし手に余るような事があれば、手放す事も考えるように言われていたからだ。

「手放すつもりはありません」僕は強い口調でそう答えた。

 精霊石は既に、僕にとって家族のような存在と言ってもよかったからだ。

「そう、良かった。ならユーリあなたは、もっと強くならなければいけないわ。その為の鍵はその精霊石が握っているわ」

 シルフィーは嬉しそうにそう言ったのだった。
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