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ここからの始まり
14. 王家主催のお茶会
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王家で開かれるお茶会は、まさに前世のネズーランドだった。
庭園で開かれたそれは、エイターメント盛りだくさん!な感じのキラキラしい会場だ。
精神年齢おばあちゃんの私は、すでにもう疲れている。年寄りに華やかな世界は眩しすぎるのだ。
もうこの歳になるとアトラクションに並ぶことも難しいわ…と前世に想いを馳せ、目立たぬように気配を消して風景に馴染む。
ちなみにこの庭園に、並ぶようなアトラクションはない。並ぶどころか、アトラクション自体が茶会にある事はない。平和な世界だ。
この世界の乙女ゲーム設定を止める事にした私は、悪役令嬢の取り巻きになる可能性は無くなった。
悪役令嬢探しはもう必要ない。
まだ始まったばかりのお茶会だが早々に人疲れしてしまったし、今日の人づきあい活動は終了だ。
フルーリリは自分について考える。
――淡い色合いの金髪、薄い水色の眼。ミルク色の白い肌。私の持つ色素は薄い。今日のドレスさえも薄い水色だ。
薄い色は目立たない。もはや誰の目にも映ることはないだろう。この青空に溶けて馴染んでいることに違いなく、ただ時間だけが流れていくだろう。
薄いって便利だわ…
エリックは、遠い目をして隣に立つ姉を見る。
これだけの美貌を持つ姉だ。
貴族の子息達はもちろん、様々な家格の令嬢達まで皆、姉を意識してチラチラと視線をよこす。
カスティル家の深窓令嬢として噂にはなれど、誰もその姿を見たことがない事もあって、会場中の静かな注目を浴びている。
紅い眼をした僕が近くにいるせいで、不躾に声をかけてくる者はいないが。ぼんやりした姉にちょっかいを出すような輩は潰さねばならない。
姉自身はいつもの様子と変わらない。
おそらく自分は風景に馴染んでいる、くらいに思ってるんだろう。
どうしてそう思うのかは分からないが、姉は自分を地味な存在だと思い込んでいる。口を閉じるだけで、自分が消えてしまっているかのように振る舞う。
「フルーリリ嬢、久しぶり。今日はとても綺麗だね」
妹のアイラの手を取って歩く、婚約者のカールに声をかけられた。
フルーリリより1つ歳下のアイラとは、何度か顔を合わせたことがある。あまり話した事はないが。
フルーリリは、突然の声かけにちょっと驚いた顔をしつつ挨拶を返す。
「カール様、アイラ様、ごきげんよう。カール様もとても素敵ですわ」
「カール兄さん、アイラ嬢、お久しぶりです。アイラ嬢はとてもドレスがお似合いですね」
エリックもフルーリリに続く。
「フルーリリ様、お久しぶりでございます。エリック様、ありがとうございます」
2人に続いて、アイラも気まずげに挨拶したあと、それ以上言葉を続ける事が出来ずに視線を下げてしまう。
アイラはこの美しい姉弟が苦手だった。
あまりに自分とかけ離れた美しすぎる容姿に、神童とも噂されるその頭脳に気後れするのだ。2人と共にいると、自分がどうしようもなく価値のない人間に思えてきてしまう。
どんな話題をふれば馬鹿にされないか、という思いに囚われて話をする事も出来ない。
下げた目線の先に、自分のクセのある薄茶色の髪が目に入った。兄に似た、クセのある茶髪と榛色の瞳。
対して目を引くほどの美貌を持つ姉弟。
私を惨めな気持ちにさせるこの2人とは、内心会いたくないと思っている。フルーリリ様を、お姉様と呼べるはずもない。
兄の袖をそっと引っ張る。それに気づいたカールが苦笑する。
「相変わらずアイラは恥ずかしがり屋だな。ごめんね、失礼するよ。フルーリリ嬢、また会おう」
そう言って2人で他のテーブルに移ってゆく。
バージェント兄妹が離れたのを見て、フルーリリが小さく呟く。
「私に気づくなんて、流石に婚約者なだけはあるわね」
やはり姉の中では、風景と同化していたらしい。
姉の中では、周りの王都中の貴族の子息令嬢達も消えているかもしれない。
エリックは義母からお願いされていることもあり、改めて気を引き締めた。
庭園で開かれたそれは、エイターメント盛りだくさん!な感じのキラキラしい会場だ。
精神年齢おばあちゃんの私は、すでにもう疲れている。年寄りに華やかな世界は眩しすぎるのだ。
もうこの歳になるとアトラクションに並ぶことも難しいわ…と前世に想いを馳せ、目立たぬように気配を消して風景に馴染む。
ちなみにこの庭園に、並ぶようなアトラクションはない。並ぶどころか、アトラクション自体が茶会にある事はない。平和な世界だ。
この世界の乙女ゲーム設定を止める事にした私は、悪役令嬢の取り巻きになる可能性は無くなった。
悪役令嬢探しはもう必要ない。
まだ始まったばかりのお茶会だが早々に人疲れしてしまったし、今日の人づきあい活動は終了だ。
フルーリリは自分について考える。
――淡い色合いの金髪、薄い水色の眼。ミルク色の白い肌。私の持つ色素は薄い。今日のドレスさえも薄い水色だ。
薄い色は目立たない。もはや誰の目にも映ることはないだろう。この青空に溶けて馴染んでいることに違いなく、ただ時間だけが流れていくだろう。
薄いって便利だわ…
エリックは、遠い目をして隣に立つ姉を見る。
これだけの美貌を持つ姉だ。
貴族の子息達はもちろん、様々な家格の令嬢達まで皆、姉を意識してチラチラと視線をよこす。
カスティル家の深窓令嬢として噂にはなれど、誰もその姿を見たことがない事もあって、会場中の静かな注目を浴びている。
紅い眼をした僕が近くにいるせいで、不躾に声をかけてくる者はいないが。ぼんやりした姉にちょっかいを出すような輩は潰さねばならない。
姉自身はいつもの様子と変わらない。
おそらく自分は風景に馴染んでいる、くらいに思ってるんだろう。
どうしてそう思うのかは分からないが、姉は自分を地味な存在だと思い込んでいる。口を閉じるだけで、自分が消えてしまっているかのように振る舞う。
「フルーリリ嬢、久しぶり。今日はとても綺麗だね」
妹のアイラの手を取って歩く、婚約者のカールに声をかけられた。
フルーリリより1つ歳下のアイラとは、何度か顔を合わせたことがある。あまり話した事はないが。
フルーリリは、突然の声かけにちょっと驚いた顔をしつつ挨拶を返す。
「カール様、アイラ様、ごきげんよう。カール様もとても素敵ですわ」
「カール兄さん、アイラ嬢、お久しぶりです。アイラ嬢はとてもドレスがお似合いですね」
エリックもフルーリリに続く。
「フルーリリ様、お久しぶりでございます。エリック様、ありがとうございます」
2人に続いて、アイラも気まずげに挨拶したあと、それ以上言葉を続ける事が出来ずに視線を下げてしまう。
アイラはこの美しい姉弟が苦手だった。
あまりに自分とかけ離れた美しすぎる容姿に、神童とも噂されるその頭脳に気後れするのだ。2人と共にいると、自分がどうしようもなく価値のない人間に思えてきてしまう。
どんな話題をふれば馬鹿にされないか、という思いに囚われて話をする事も出来ない。
下げた目線の先に、自分のクセのある薄茶色の髪が目に入った。兄に似た、クセのある茶髪と榛色の瞳。
対して目を引くほどの美貌を持つ姉弟。
私を惨めな気持ちにさせるこの2人とは、内心会いたくないと思っている。フルーリリ様を、お姉様と呼べるはずもない。
兄の袖をそっと引っ張る。それに気づいたカールが苦笑する。
「相変わらずアイラは恥ずかしがり屋だな。ごめんね、失礼するよ。フルーリリ嬢、また会おう」
そう言って2人で他のテーブルに移ってゆく。
バージェント兄妹が離れたのを見て、フルーリリが小さく呟く。
「私に気づくなんて、流石に婚約者なだけはあるわね」
やはり姉の中では、風景と同化していたらしい。
姉の中では、周りの王都中の貴族の子息令嬢達も消えているかもしれない。
エリックは義母からお願いされていることもあり、改めて気を引き締めた。
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