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・・『開幕』・・

・・ラウンジにて・・

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・・秘書課の女性社員とウェイターの人達に礼を述べ、全員でスカイラウンジから退室して、1階まで降りる・・カフェラウンジに入ると、厨房も含めてラウンジスタッフが全員、拍手で出迎えてくれる・・チーフ・ウェイターが1人1人に可愛い小箱を手渡していく・・。

「・・これは、もしかして・・?・・」

・・と、アリミ・バールマン氏が私を観て訊いたので・・。

「・・お土産のようですよ・・?・・」

・・と、ニッと口角を上げて応える・・。

・・ラウンジ・ホール・チーフが頭を下げる・・。

「・・皆さん、本日はご来社頂きまして、本当にありがとうございました・・お疲れ様でした・・先程にお持ち致しましたザッハトルテのショートケーキは、元々10号サイズのホールケーキだったのですが・・我等の料理長は、もう一つ12号サイズでのザッハトルテ・ホールケーキを焼いておりましたので、それを24個に切り分けさせて頂きまして、今日のお土産としてお渡し致しました・・是非お持ち帰り頂きまして、またご賞味頂ければと思います・・」

「・・料理長・!・ちょっと出て来て下さいよ・!・皆さんに紹介しますから・・!・・」

・・そう呼び掛けると、料理長が照れ臭そうに、シェフキャップを外しながら進み出る・・。

「・・皆さん、ご紹介します・!・本社第1棟・1階カフェ・ラウンジ・料理長・・マエストロ・ラッサール・コラントーニ・シェフです・・!・・」

・・全員から拍手が湧き起こる・・そして直ぐに全員に取り囲まれ、次々と握手を求められて言葉も交わしていく・・。

「・・今日頂いたザッハトルテは、言葉に出来ない程の味わいでした・・出来ればもう一度、頂きたいと思っていましたので、このお土産は何より嬉しいです・・ありがとうございました・・」

・・ハイラム・サングスター氏が、料理長の右手を両手で握って礼を言う・・他のメンバーも料理長と握手を交わしながら口々に礼を述べた・・。

「・・実は全くの偶然だったのですけれども、『ディファイアント』の厨房にセカンド・シェフとして就任して頂いた方のお兄さんだったんです・・」

「・・コラントーニ・・?・・もしかして、そのセカンド・シェフとして入られた方とは、マエストロ・エンリコ・コラントーニ氏ですか・・?・・」

「・・その通りですよ、アリミさん・・よくお判りですね・・」

「・・いや、分かるも何も、エンリコ・コラントーニさんと言えば、世界的にすごく著名なシェフですよ・・その方がセカンド・シェフなら、ファースト・シェフに就任されたのはどなたですか・・?・・」

「・・マエストロ・サルヴァトーレ・ラウレンティス氏です・・」

「・・!・・アドルさん・・『ディファイアント』に集われたのは、どれだけ一流の人達なんですか・・!?・・凄過ぎますよ・・」

「・・ありがとうございます・・アリミさん・・ラッサール料理長・・それに厨房を含めてラウンジスタッフの皆さん・・急遽開かれた同盟首脳部による会合でしたが、温かく歓迎して頂きまして本当にありがとうございました・・それでは皆さん・・最後に対外的なアピールをサービスして、終了としましょう・・」

・・そう言って同盟首脳部の全員を促し、カフェラウンジから退室して正面玄関へと向かう・・さり気なく、ザンダー・パスクァール氏が私の左側に来た・・。

「・・アドルさん・・貴方が操艦技術に取り入れようとしている、ステップワークのスポーツとは・・ボクシングですね・・?・・私もこれから研究します・・」

「・・ザンダーさん・・忘れられないボクサーがいるんですよ・・友人なんです・・彼が学生時代に見せたステップワークが、今でもハッキリと頭の中にあります・・」

「・・その方も、きっと素晴らしい人なんでしょうね・・アドルさん・・私に、いつかその方を紹介してくれませんか・・?・・」

「・・喜んで・・!・・ザンダーさん・・」

・・正面玄関から外に出ると、それだけでストロボ発光の湧き起こりが凄まじい・・ドリス・ワーナー秘書課渉外主任が、報道メディアのカメラマン達に指示を出していたので、声を掛けて会釈し、挨拶する・・。

「・・もう、何社来てます・・?・・」

「・・26社ですね・・」

「・・ワオ・!・・じゃあ、始めましょうか・・?・・」

・・それからは、カメラマン達とドリス・ワーナー主任の指示に従い、様々に並び方を変え、ポーズも変えて画像撮影に協力する・・流石に女優さん達だ・・自分のポージングは勿論、艦長との絡みもお手のものだ・・これだけで数冊のフォトブックにも仕上がりそうだな・・そう思いながら微笑ましく観ていたら、シエナが私の首に両手を掛けてしがみ付き、思い切り脚を蹴り上げたので思わず両腕で彼女の体を抱き止めると、彼女の思惑通りにお姫様抱っこの形にさせられた・・驚いて彼女の顔を観たが・・「・・笑って・?・艦長・・」と、可愛らしく言われたので思わず笑顔になる・・ストロボ発光が私達に集中する・・眩しさに耐えて笑顔を作り続けながら、これをハル・ハートリーが観たら眉を顰めるだろうな、とは思っていた・・結局お姫様抱っこをしたのは私だけだった・・他の艦長達があまり乗り気で無かったのもある・・期せずして開催された正面玄関前での撮影会は、10数分で終わった・・。

・・ドリス・ワーナー女史が撮影終了を告げる・・シエナを脚から降ろして右肩を回し、艦長や副長達と握手を交わして労を労い、短く会話しながら暫しの別れを告げる・・ハイラム・サングスター艦長がグレイス・カーライル艦長に歩み寄り、改めて握手を交わした・・。

「・・貴女にお会いできて、今日は本当に善かったです・・またお会い出来る時を心から楽しみにしております・・」

「・・こちらこそ、貴方にお会いできて光栄でしたし、楽しかったですわ・・お気を付けてお帰り下さい・・」

「・・ありがとうございます・・それでは・・」

「・・ローズ・クラークさんも、お気を付けてね・・?・・」

「・・ありがとうございます、グレイス艦長・・」

彼らがゲストパーキングエリアへケーキの小箱を携え、秘書課の社員と警備員達に付き添われて向かうのを手を振りながら見送る・・後に残ったのは、私達と『ロイヤル・ロード・クライトン』の2人だけだった・・。

「・・リサさん・・副長・・会議室の設定は早急に頼みます・・採取した掌紋のデータはコピーして副長にも渡して下さい・・会議室の設定が出来たら、直ぐに連絡して下さい・・ハル・ハートリー参謀に連絡して、明日はカウンセラーと交代して『トゥーウェイ・データ・ネット・ストリーム・ステーション』社に来るようにと・・集合時刻も伝えて下さい・・予定が遅れているのでカウンセラーはデータベースの作成に注力して下さい・・私は副長ともう少し打ち合わせをするので、彼女は私が送ります・・リサさん、明日はスキャナーと、今日副長の皆さんに渡した暗号秘密通信回線のアプリケーション・システム・データのコピーを、もう10個作って持って来て下さい・・そして・・これはチーフに渡して下さい・・彼もこれを食べれば唸るよ・・?・・」

・・そう言って、私は自分の小箱をリサに渡した・・。

「・・分かりました・・」

「・・副社長・・改めて、今日はありがとうございました・・以上のような次第でして、明日も出張です・・会議室が設定されましたら、どんどん書き込みますので読んで下さい・・暗号秘密通信回線のセットアップもお願いします・・セットアップが出来ましたら、もう一つの会議室の方に報告をアップして下さい・・明日は出社しませんので、宜しくお願い致します・・何か、頼み事ばかりですみません・・急に仕事が増えました・・リーダーなんて、やる積りは無かったんですけれどもね・・柄じゃないし・・もっと緩い互助会的な繋がりのグループでも良かったんじゃないかと思っていましたが・・予想以上に事態は切迫しているようです・・まあ、言い出しっぺでもあるんで仕方ないですね・・」

「・・アドルさん・・貴方の才能とその器なら、この位は何でもないと思いますよ・・支えてくれる優秀な人達も沢山いますからね・・こちらこそ、貴方の足を引っ張って迷惑を掛けてしまうのではないかと案じています・・」

「・・ありがとうございます・・まあ・・合同訓練を効果的・効率的に反復して行う事で、各艦の練度は大体横一線で上げられるだろうとは思っています・・大丈夫ですよ・・心配無用です・・」

「・・あの、アドルさん・・一度フロアに上がりませんか・・?・・私、自分の端末で掌紋スキャンデータをメディアにコピーして、シエナさんに渡しますので・・?・・」

「・・うん、分かった、リサさん・・じゃあ一度、職場に上がろう・・皆も一緒に行こう・・それでは副社長・・ここで失礼します・・またお会いしましょう・・」

「・・またお会いしましょう・・気を付けて・・」

「・・ありがとうございます・・それでは・・」

・・副社長2人とは玄関前で別れてリフトに乗り、3階まで上がって職場のフロアに入る・・また拍手と歓声で迎えられる・・リサは直ぐ自分の席に着いて端末を起動させる・・。

・・スコット、マーリー、ズライ、それにアンバーさんも立ち上がって、私の廻りに集まって来る・・どうやらアンバーさんは、私のデスクで仕事をしていたようだ・・ヘイデン・ウィッシャー・フロアチーフも来た・・。

「・・ああ、お帰り・・お疲れ様・・いない間、お前のデスクを空けとくのも何なんでね・・ターリントンさんに入って貰っていたんだよ・・何か問題あったか・・?・・」

「・・いえいえ、全く問題無いですよ・・ありがとうございました、アンバーさん・・」

「・・どう致しまして、アドルさん・・スコットさんにアドルさんのお仕事の手順を教えて頂いて、私なりにやらせて頂いていました・・」

「・・いや、本当にありがとうございます・・もうアンバーさんのやり方で結構ですから、自由に進めて下さい・・明日も出張で来られないですからね・・ああ、チーフ・・明日も出張なんで、お願いします・・」

「・・分かってるよ・・気を付けて行って来い・・」

「・・ありがとうございます・・よお、スコット・・世話になってるな・・」

「・・これくらい何でもないスよ・・超大活躍の先輩に比べればね・・」

「・・ああ・・同盟のリーダーになって、仕事が増えたよ・・柄じゃあないけどな・・だが言い出しっぺでもあるから仕方ない・・それでも艦長達の切迫感を煽り過ぎたきらいはあるな・・それより、何か気が付いた事はあるか・・?・・」

「・・そうですねえ・・ザンダー・パスクァールさんですか・?・最初、取っ付き難そうな感じでしたけど・・かなり打ち解けて来たんじゃないですか・・?・・」

「・・ああ・・彼は、素直で純なんだな・・理屈が通れば、話し易い男だと思うよ・・」

「・・あと、アリミ・バールマンさんですけど・・あの人は商売人ですから、儲かる方に付きますね・・なので、気を付けた方が良いですよ・・」

「・・ああ・・同盟に参画している方が儲かるって、思わせ続けるとするよ・・他にはあるか・・?・・」

「・・ハイラム・サングスター艦長と、ウチのグレイス・カーライル副社長・・何だか好い感じでしたね・・?・・」

「・・?・・玄関前からも中継してたのか・・?・・」

「・・いや、中継はスカイラウンジだけでしたけど、玄関前の監視カメラから覗いてたんで・・」

「・・程々にしとけよ・・まあ、2人とも独身の大人だから、任せておくさ・・リサさん・!・出来たかな・・?・・」

「・・すみません、もう少しお願いします・・」

「・・分かった・!・マーリーにズライは何か気付いたかな・・?・・」

「・・ヤンセン・パネッティーヤさんとシャロン・ヒューズさんは、付き合ってるんですか・・?・・」

・・と、マーリーが訊く・・。

「・・いや、知らないけど・・?・・そんな風に観えた・・?・・」

「・・何だか、ほんのちょっと・・」

「・・それも、本人達に任せるよ・・他にはあるかい・・?・・」

「・・カーラ・ブオノ・マルティーヌさんでしたか・・?・・何だか凄く、気の強そうな感じに観えましたが・・?・・」

・・と,ズライが言う・・。

「・・ふん・・まあ、ガンナー・ヴァン・ハンプトン艦長が見込んで副長に据えた人なんだろうから、大丈夫なんじゃないかな・・?・・副長人事は艦長の専任事項だから、外部の人間がとやかく言える筋合いのものじゃない・・見守るしかないね・・」

「・・お待たせしました、アドルさん、出来ました・・!・・」

「・・ご苦労様でした・・!・・それじゃ、副長に渡して・・?・・明日はスキャナーと、暗号秘密通信回線のアプリケーション・システム・データのコピーを忘れないでね・・?・・カウンセラーはリサさんを送ってあげて下さい・・それじゃ、帰ろう・・皆、明日は出社しないけど宜しく頼むね・・お疲れ様でした・・皆、ありがとう・!・」

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