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・・『開幕』・・

・・共闘同盟初会談・・2・・

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・・端末をスピーカーに切り換えてボリュームを最大迄に上げ、手を伸ばしてテーブルに置く・・。

「・・はい・!・アドルです・・マルセルさん、聴こえますか・?!・どうぞ・・?・・」

「・・アドルさん・・よく聴こえます・・今、話しても大丈夫ですか・・?・・」

「・・今は共闘同盟の会合中ですが、大丈夫ですよ・・マルセルさん・・何かありましたか・・?・・」

「・・アドルさん・・やはり、アドルさんの予想通りになったようです・・」

・・マンデリンのコーヒーカップを静かに持ち上げて一口飲み、音を立てないように置く・・。

「・・マルセルさん・・今迄に何人の女性艦長の方から連絡がありましたか・・?・・」

「・・今迄には3人の方から連絡がありましたが、これからもっとあるかも知れません・・」

「・・マルセルさんから観て、女性艦長の方々はお互いに連絡を執っているように観えましたか・・?・・」

「・・はっきりとは判りませんでしたが・・微妙ですね・・3人の方から伺ったお話から察するに、彼女達自身の意志もそうなのでしょうが・・副長の方も含めてスタッフの方達からの強い要望もあったのではないかと推察しています・・」

「・・成程・・それで具体的には、どのような要望なのでしょうか・・?・・」

「・・明日、同じ時刻から生配信でお送りします、女性艦長の皆さんに集って頂いての、インタビューと対談のスペシャル・プログラムに、アドル・エルク艦長をオブザーバー及びアドバイザーとして、出演して頂けないだろうかとの要望なのですが・・如何でしょうか、アドルさん・・?・・」

・・またもう一口、マンデリンを飲む・・。

「・・分かりました・・要請は快く受諾させて頂きまして、出演させて頂きます・・」

「・・宜しいのですか、アドルさん・・?・・今日の明日でお疲れでしょうに・・」

「・・大丈夫ですよ、マルセルさん・・出演します・・同盟への参加艦を増やせる絶好の機会ですから、見逃すなど在り得ません・・真っ先に行きます・・開始時刻は同じですね・・?・・30分前にはスタジオに入ります・・」

「・・ありがとうございます・・アドルさん・・感謝します・・はい、開始時刻は今日と同じです・・それでは早速只今から、アドルさんが今日に続いて出演されると言う事で、告知を出しますね・・重ねて感謝します・・」

「・・すみません、マルセルさん・・聴こえますでしょうか・?・ハイラム・サングスターです・・」

「・・はい、よく聴こえます・・ハイラム・サングスター艦長・・何でしょうか・・?・・」

「・・要請も無いのに、柄にも無くこのような事を申し上げますが、何卒お許し下さい・・私も明日の生配信プログラムにアドルさんとご一緒に出演させて頂く事を希望します・・」

「・・ハイラム・サングスター艦長・・何故出演を希望されるのか、理由をお聞かせ頂いても宜しいでしょうか・・?・・」

「・・はい・・マルセルさん・・理由は本日発足したばかりの、【『ディファイアント』共闘同盟】を更に強化する為です・・本同盟は本日発足しましたが、それが持つ力は未だ弱いので更なる強化が望まれますし、必要ですし急務でもあります・・加えて明日参集する女性艦長の皆さんが指揮される10隻は我々の仲間であり、彼女達の10隻が同盟に参画しなければ、【『ディファイアント』共闘同盟】は完成されません・・完成さえすれば、策は幾らでも講じる事が出来るようなります・・私は彼女達が指揮する艦が、開幕早々に撃沈されるのを観たくない・・開幕直後から我々は防御を固める必要があるのです・・それらに附いての説明と、同盟参画への説得の一助となる為に、明日の生配信プログラムへの出演を希望します・・」

「・・分かりました、ハイラム・サングスター艦長・・情熱に溢れるご説明をどうもありがとうございます・・それでは、アドル・エルク艦長と両名でのご出演と言う事で、告知を出させて頂きます・・」

「・・すみません、マルセル・ラッチェンスさん、聴こえますでしょうか・?・ザンダー・パスクァールです・・少々お待ち下さい・・」

「・・はい、よく聴こえます・・ザンダー・パスクァール艦長・・何でしょうか・・?・・」

「・・続けてのお話で申し訳ありませんが、私も明日の生配信プログラムへの出演を希望します・・」

「・・出演を希望される理由は、先程のハイラム・サングスター艦長が仰られたそれとご同様でしょうか・・?・・」

「・・はい・・サングスター艦長の仰られる通り、【『ディファイアント』共闘同盟】は21隻全艦で参画しなければ、完成を観ません・・私達、それぞれ個々の艦に於いては準備しなければならない事物や、訓練を重ねて練度を上げなければならない側面も多々ありますが、開幕直後からそれらに闇雲に取り組んだとしても、数隻から10数隻の敵艦に包囲されてしまえば、単艦での突破は絶望的でほぼ不可能です・・であればこそ今は同盟の完成が急務なのです・・完成が成れば、個々の艦のポジションや果たすべき役割や訓練で練度を上げるべき側面も判明するのです・・これらについてを説明して、明日参集される艦長の皆さんを説得する為のお手伝いを私にもさせて頂きたいと思いまして、明日の番組への出演を希望します・・」

・・そう言い終えて彼は、眼鏡のブリッジを左手の中指で少し上げた・・。

「・・ありがとうございます、ザンダー・パスクァールさん・・大変に情熱的且つ論理的なお話に感謝します・・それでは・・アドル・エルク艦長・・ハイラム・サングスター艦長・・ザンダー・パスクァール艦長の3名様が、オブザーバー及びアドバイザーとして明日の生配信プログラムに出演されると言う事で、告知を出させて頂きます・・」

「・・すみません・!・マルセル・ラッチェンスさん・!・ヤンセン・パネッティーヤです・・!・・」

「・・はい、ヤンセン・パネッティーヤ艦長・・聴こえます・・何でしょうか・・?・・」

「・・駆け込みで申し込むようで、申し訳無いんですけれども・・私も明日の配信番組への出演を希望します・・」

「・・出演を希望される理由は、他のお二方とご同様でしょうか・・?・・」

「・・はい・・僕もやはり同盟が完成しないと、それぞれの艦のやるべき事が観えて来ないと思うんですよね・・その説明と女性艦長の皆さんへの説得を、アドルさんとハイラムさんとザンダーさんに任せっ切りにしてしまうのも申し訳ないですし、僕の話し方で話せる事もあると思うんで・・出演を希望します・・」

「・・まあ、アドルさんが半分は話すだろうし・・残りの半分を俺達3人で分ければ好いんだろうしな・・」

・・そう言ってハイラム・サングスター氏は、笑みを浮かべて腕を組んだ・・。

「・・分かりました、ヤンセンさん・・それでは・・アドル・エルクさん・・ハイラム・サングスターさん・・ザンダー・パスクァールさん・・ヤンセン・パネッティーヤさんの4名の皆さんが、お揃いで明日生配信でお送りします、10名の女性艦長の皆さんに集って頂いて行われる、インタビューと対談のスペシャル・プログラムに、オブザーバー及びアドバイザーと言う立場でご出演頂けると言う事で、早速告知を出させて頂きます・・本当にありがとうございます・・これで私共の番組もこれまでに無く盛り上がる事と思います・・あの・・他に出演を希望される方はいらっしゃいますか・・?・・」

「・・う・・ん・・私も出来れば行きたいんですけれどもね・・さすがに5人は多いでしょうかね・?・・まあ、今回は4人の皆さんに、お任せするとしましょう・・」

・・そう言ってアリミ・バールマン氏は、口を引き結んで腕を組んだ・・。

・・私が座っている他のメンバーを見渡すと、カーラ・ブオノ・マルティーヌ副長が左肘でガンナー・ヴァン・ハンプトン艦長を軽く小突いて話していたが・・彼は渋い表情で顔を振りながら返答していた・・。

「・・分かりました・・それでは4名様をゲスト・オブザーバー及びアドバイザーとしてご招待、と言う事でご出演を頂きます・・この内容で早速告知を出させて頂きますので、宜しくお願い致します・・申し訳ありませんが、4名様とも同じ控室と言う事でお願いしたいのですが、宜しいでしょうか・・?・・」

・・私は6人の艦長と副長を見遣ったが皆、無言で頷く・・。

「・・大丈夫ですよ、マルセルさん・・こちらとしては、問題ありません・・」

「・・分かりました・・では、委細このままで施行致します・・それでは明日、スタジオにてお待ちしておりますので、宜しくお願い致します・・同盟初会合の席をお邪魔してしまいまして、誠に申し訳ありませんでした・・マルセル・ラッチェンスより、以上になります・・」

・・通話は終えられた・・私は一息吐いて座り直すと、傍で椅子に座って控えている秘書課の女性社員に、皆に飲み物のお代わりを訊いて貰えるように頼んだ・・。

「・・また明日もご足労をお掛けしてしまうようで、皆さんには申し訳無いですね・・?・・」

「・・何・このくらい、同盟完成の為だと思えば何でもないですよ・・私はアドルさんの疲労が心配です・・同盟首脳部として、割り振れる仕事は割り振った方が好いですよ・・?・・」

・・そう言いながらザンダー・パスクァール氏が、眼鏡を外して軽く拭き上げる・・。

「・・お気遣いをどうもありがとうございます、ザンダーさん・・大丈夫ですよ・・休める時には休みますから・・いや、今日ここまで話が進むとは、全く予想の範囲外でしたからね・・取り敢えず2つの会議室は今日中に出来ます・・『DSC24』の方には、開幕後の4日間で同盟として行う事について、その準備・段取りから具体的な動きについてまで、どんどんと書き込みますから読んで気付いた事があったら、書き込んで下さい・・『トゥルーダイス』の方には、暗号秘密通信回線のセットアップが終わったら、その旨の報告を挙げて下さい・・今日の処は取り敢えず、ここまででしょうかね・・?・・あと不測の緊急事態に対応する為、皆さんの携帯端末のメッセンジャーと通話のアドレスを共有しましょう・・」

・・そう言って自分の携帯端末をテーブルの中央部に置く・・。

「・・全員の携帯端末を横一線に並べて、両端の端末でアドレス共有アプリを起動させれば全体でアドレスが共有できますので、お願いします・・」

・・テーブルに着いている全員が自分の端末をテーブル上に並べ、両端に置かれた端末の持ち主がアドレス共有アプリを同時に起動させる・・共有は瞬時に終わる・・。

「・・さて・・皆さん・・同盟首脳部として、他に話し合って置くべきと思われる用件はありますか・・?・・何でも提起して頂いて結構ですよ・・おそらく明日の生配信が終わった段階でも、状況はかなり変わって来ていると思いますので・・配信は全員で視聴して下さい・・そして、気が付いた事や意見や提案や提言が浮かびましたら、その場で通話を繋いで話して下さい・・その旨は、明日配信が始まる前にマルセルさんに申し入れますので・・」

「・・今は、これくらいで好いんじゃないですかね・・?・・アドルさんも、これからやる事が沢山あるでしょうから・・」

「・・お気遣い、ありがとうございます、アリミさん・・それじゃ、首脳部会議としてはここ迄としまして、2杯目のお茶を飲み終える迄歓談しましたら、1階のラウンジに寄りましょう・・料理長に紹介します・・それと最後に申し訳ありませんが、報道メディアが数社待機しておりますので、この建物の正面玄関の前にて横一線に並んでの画像撮影にご協力下さい・・弊社役員会がそれだけを報道メディアに対して許可しましたので、囲み取材も個別のインタビューも無い筈です・・終わりましたら、秘書課社員と警備員が車まで送りますのでご安心下さい・・」

・・そう言って2杯目のマンデリンに口を付ける・・さすがに少し疲れたかな・・?・・皆もそれぞれ2杯目の飲み物に口を付けている・・。

「・・グレイス副社長・・まさかこの会合・・社内で配信してます・・?・・」

・・彼女は直接には答えず、カップを置くと首を傾げて悪戯っぽく微笑んだ・・。

「・・やっぱりな・・皆さん、本当にすみませんね・・ウチの社員、皆観たがりなもんで・・」

「・・いや、ハハ・・好いですよ、アドルさん・・皆さん明るくて温かく接して下さいましたので、御社の印象はすごく上りましたよ・・」

・・と、アリミ・バールマン氏が屈託の無い笑顔で言う・・。

「・・こちらの秘書課の女性社員の皆さんが、美人揃いなんで驚きましたよ・・さすがに国際商事会社は違いますね・・」

・・と、ヤンセン・パネッティーヤ氏が少し軟派な感じで言ったので、副長のシャロン・ヒューズ女史が眉を顰めて彼を見遣ったのが、逆に少し微笑ましい・・。

「・・副社長・・ネヘマイヤさんの農場や、アリミ・バールマンさんとも、何らかの業務提携条項を締結できる可能性があると思いますので・・検討を始めても宜しいのではないでしょうか・・?・・」

「・・そうですね・・私もそれらについては、充分に検討を始めるに値する案件だと思います・・これから連絡を執り合いながら、色々と話し合いを始めて参りましょうか・・?・・」

「・・ありがとうございます、グレイス副社長・・そのお言葉を頂けただけで、ここに来た甲斐がありました・・これから宜しくお願いします・・」

・・そう言って、アリミ・バールマン氏が会釈する・・。

「・・私からもお礼申し上げます、グレイス副社長・・これから宜しくお願いします・・」

・・ネヘマイヤ・パーソフ氏も会釈した・・。

「・・グレイス・カーライル副社長・・ゲーム大会が終わりましたらアドル・エルク氏を、我が艦隊に幕僚待遇で出向させて頂けないものでしょうか・・?・・ウチの幕僚陣に戦略・戦術面での指導を是非ともお願いしたいのですが・・?・・」

「・・あら、ハイラム・サングスター艦長・・貴方程の方が既にいらっしゃるのに、宜しいのですか・・?・・」

「・・いや、グレイス艦長・・私なんぞは後7年もすれば退官ですから・・ウチの若い連中には、アドルさんの指導が是非とも必要だと思います・・」

「・・いや、ハイラムさん・・このゲーム大会は下手をすると10年でも終わらないかも知れませんし、先の事を言うと鬼が嗤うとも言いますから、今日はこの辺にして置きましょう・・皆さんも今日はわざわざご来社頂きまして、本当にありがとうございました・・お疲れ様でした・・次の会合はサイバースペースの中で、と言う事になりますが、次回も宜しくお願いします・・最後に私から【『ディファイアント』共闘同盟】発足のお祝いと、皆さんとこのように友誼を結べた事への感謝の証・・そして・・これからの健闘を誓い合う意味で、一杯奢らせて下さい・・ご紹介します・・『ディファイアント』のラウンジバーにて、マスター・バーテンダーに就任して頂いた、カーステン・リントハート氏です・・!・・」

・・秘書課の女性社員がドアを開くと、チーフがマスター・バーテンダーの衣装で、一本のボトルと沢山のグラスを入れたボウルをワゴンに乗せて入室し、歩み寄って頭を下げる・・。

「・・皆さん、初めまして・・アドル・エルク艦長からご紹介に与りました・・『ディファイアント』ラウンジ・バーでマスター・バーテンダーを務める事になりました、カーステン・リントハートです・・宜しくお願い致します・・【『ディファイアント』共闘同盟】のご発足、おめでとうございます・・この善き出来事をお祝いし、皆さんで共有して頂きたいと思いまして、私からアドル・エルク艦長にこの一本を進呈させて頂きました・・『サンクロスト・トラッシュ』の原酒カスク・・30年ヴィンテージです・・失礼して皆様にお注ぎ致します・・」

・・そう言うとチーフはボトルをタオルで拭き上げて封を切り、全員の眼の前にグラスを置いてツーフィンガーで注いで廻る・・24個のグラスから立ち昇る馥郁足る芳醇の香り・・注ぎ終るとチーフはワゴンの隣に控える・・。

・・私がグラスを手にして立ち上がると、皆も倣って立ち上がる・・。

「・・同盟の発足と成功を・!・我等全員でこのゲーム大会を席巻し、共に最後まで存続する事を誓って・・乾杯!!・・」

「・・乾杯!!・・」

・・全員が一息で呑み干してグラスを置いた・・。

「・・うわあ・・旨いですね・・『サンクロスト・トラッシュ』は20年物まで呑んだ事がありますが、30年物は初めてです・・全然違う味わいですね・・!・・」

「・・ありがとうございます・・チーフ・リントハートが、この日、この時の為に用意してくれました・・彼にもすごく感謝しています・・」

「・・正に・・我等の門出に相応しい一杯ですな・・ありがとうございます、アドルさん・・善いものを頂きました・・10年経ってもこの味わいと今日の感動は、忘れないでしょう・・」

「・・ありがとうございます、ハイラムさん・・そこまで仰って頂けると、私も感無量です・・それでは皆さん、1階まで降りてラウンジに入りましょう・・ウチの料理長に紹介します・・ウチの料理長の事ですから、お土産があるかも知れませんよ・・(笑)・・」

・・そう言って席から離れた私は、ワゴンの隣に控えるチーフの右肩を左手で叩きながら、固く握手を交わした・・。

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