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99 俺が小学校のころ
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「娘さんは施設で育ったから……」
(はー?てめぇいまなんてった?)
やかんブチ切れモードのかあさん。
すぐに沸騰する。
(思ってたって、言っていいことと悪いことがあるんだよ)
(施設で育ったからなんだっていうんだよ。
ちゃんと毎月逢いに行ってたよ。
ネグレクトしたわけじゃねぇんだよ。
施設で育てられた子は、自分の子供をまた施設に預けるって言いたいのか?)
娘の旦那の言葉に、今にも頭から湯気が出そうなくらいおかんむり。
かあさんの娘、俺にとって妹は、7歳年下で、かあさんが30歳の時に生まれた。
おじいちゃんが死んで、その当時シングルマザーで暮らしていた母さんは、
おばあちゃんを田舎から呼び寄せて一緒に暮らし始めた。
かあさんはその頃、芸者さんで弟さん(俺にとってはおじさん)の
大学院の生活費まで出していたからきっと大変だったんだろうな。
俺が3歳くらいの時、かあさんは腹膜炎になって手術したんだ。
その後、水商売を続けていく自信がなくなった母さんは、
指圧の専門学校に通い始めた。
昼間学生で、夜は芸者さん。
多分、卒業したら俺を連れておばあちゃんと田舎に帰るつもりだったんだと思う。
ところが、縁は異なもの味なもので
妹のお父さんになる人と知り合っちゃったんだよな~。
でまあ、色々あったんだけど二人は無事に結婚して、
おばあちゃんとその人と僕と母さんの4人で住み始めたんだけど、
おばあちゃんが死ぬちょっと前に新築の家を買ったんだ。
買って間もなくしておばあちゃんが死んで、
その後、母さんは子供を二人亡くしてる。
連続3人の死。
かあさんは、発達障害でコミュニケーション障害だから、
あっという間に重症うつ病になっていったんだ。
その頃、俺は小学校に入ったばかりで
学校から、ランドセルしょって家に帰ってくると、
かあさんが壁掛け電話の傍に座っていて、
いのちの電話に電話している。
片手には、お酒の入ったコップを持って、
「お酒やめたいのに、やめられないんです……」
人間て、面白いんだよ。
こんな状態になると、全ての感覚が麻痺して行っちゃう。
だって、目の前で、毎日お酒を使った自殺が繰り返されるんだ。
段々、何も見なかった事にしていく。
(問題は何もない)ってね。
ね、不思議でしょう。
あげくに、その一緒になった妹の父親、俺は「パパ」って呼んでたんだけど、
その人が結婚する前に連帯保証人になっていて、
せっかく買ったお家を抵当に取られちゃったんだ。
頭金は全部、母さんが出したのに。
そんな中で、何とか妹は775gの極小未熟児で生まれた。
妊娠初期から、ずっと出血していて、主治医から
「前置胎盤だから、母子ともに危ないから、諦めた方がいい」
って言われたのを芸者時代のお客様の産婦人科医に頼み込んで
病院を紹介して無理に生まれた子供だった。
小児病院の保育器の中に何カ月も入っていたんだ。
台所で使うステンレスのボールをお風呂にして、
パパによく似た色の白い小っちゃくてかわいい赤ちゃんだった。
まるで、ETみたいだった。
そうそう、透き通るような肌に血管が通ってて……。
生意気にお指しゃぶりしていた。
その妹が大人になって、奇跡のように結婚をして子供を産んだんだけど、
妹は知的障害があるから育てられないで乳児院に自分の子供を預けたんだ。
その時のことが、冒頭の娘婿とのいさかいなんだけど。
あれから6年。
まだ母さんは一度も孫を抱っこしていない。
たまに思い出したように、
「まんごがおらん」
って寂しそうにつぶやく。
俺にそんなこと言われても、俺は結婚するつもりないし……。
ねぇーーー。
シムズ3というゲームで、かあさんはたまによその赤ちゃんを誘拐して来ちゃうんだ。
バーチャルなら仕方ないけど、頼むからリアルでやるのはやめてくれ。
妹も俺も怖くて仕方ない。
いい子にして我慢していれば、いつかまんごに逢いに行けるからね。
ね、かあさん。
(はー?てめぇいまなんてった?)
やかんブチ切れモードのかあさん。
すぐに沸騰する。
(思ってたって、言っていいことと悪いことがあるんだよ)
(施設で育ったからなんだっていうんだよ。
ちゃんと毎月逢いに行ってたよ。
ネグレクトしたわけじゃねぇんだよ。
施設で育てられた子は、自分の子供をまた施設に預けるって言いたいのか?)
娘の旦那の言葉に、今にも頭から湯気が出そうなくらいおかんむり。
かあさんの娘、俺にとって妹は、7歳年下で、かあさんが30歳の時に生まれた。
おじいちゃんが死んで、その当時シングルマザーで暮らしていた母さんは、
おばあちゃんを田舎から呼び寄せて一緒に暮らし始めた。
かあさんはその頃、芸者さんで弟さん(俺にとってはおじさん)の
大学院の生活費まで出していたからきっと大変だったんだろうな。
俺が3歳くらいの時、かあさんは腹膜炎になって手術したんだ。
その後、水商売を続けていく自信がなくなった母さんは、
指圧の専門学校に通い始めた。
昼間学生で、夜は芸者さん。
多分、卒業したら俺を連れておばあちゃんと田舎に帰るつもりだったんだと思う。
ところが、縁は異なもの味なもので
妹のお父さんになる人と知り合っちゃったんだよな~。
でまあ、色々あったんだけど二人は無事に結婚して、
おばあちゃんとその人と僕と母さんの4人で住み始めたんだけど、
おばあちゃんが死ぬちょっと前に新築の家を買ったんだ。
買って間もなくしておばあちゃんが死んで、
その後、母さんは子供を二人亡くしてる。
連続3人の死。
かあさんは、発達障害でコミュニケーション障害だから、
あっという間に重症うつ病になっていったんだ。
その頃、俺は小学校に入ったばかりで
学校から、ランドセルしょって家に帰ってくると、
かあさんが壁掛け電話の傍に座っていて、
いのちの電話に電話している。
片手には、お酒の入ったコップを持って、
「お酒やめたいのに、やめられないんです……」
人間て、面白いんだよ。
こんな状態になると、全ての感覚が麻痺して行っちゃう。
だって、目の前で、毎日お酒を使った自殺が繰り返されるんだ。
段々、何も見なかった事にしていく。
(問題は何もない)ってね。
ね、不思議でしょう。
あげくに、その一緒になった妹の父親、俺は「パパ」って呼んでたんだけど、
その人が結婚する前に連帯保証人になっていて、
せっかく買ったお家を抵当に取られちゃったんだ。
頭金は全部、母さんが出したのに。
そんな中で、何とか妹は775gの極小未熟児で生まれた。
妊娠初期から、ずっと出血していて、主治医から
「前置胎盤だから、母子ともに危ないから、諦めた方がいい」
って言われたのを芸者時代のお客様の産婦人科医に頼み込んで
病院を紹介して無理に生まれた子供だった。
小児病院の保育器の中に何カ月も入っていたんだ。
台所で使うステンレスのボールをお風呂にして、
パパによく似た色の白い小っちゃくてかわいい赤ちゃんだった。
まるで、ETみたいだった。
そうそう、透き通るような肌に血管が通ってて……。
生意気にお指しゃぶりしていた。
その妹が大人になって、奇跡のように結婚をして子供を産んだんだけど、
妹は知的障害があるから育てられないで乳児院に自分の子供を預けたんだ。
その時のことが、冒頭の娘婿とのいさかいなんだけど。
あれから6年。
まだ母さんは一度も孫を抱っこしていない。
たまに思い出したように、
「まんごがおらん」
って寂しそうにつぶやく。
俺にそんなこと言われても、俺は結婚するつもりないし……。
ねぇーーー。
シムズ3というゲームで、かあさんはたまによその赤ちゃんを誘拐して来ちゃうんだ。
バーチャルなら仕方ないけど、頼むからリアルでやるのはやめてくれ。
妹も俺も怖くて仕方ない。
いい子にして我慢していれば、いつかまんごに逢いに行けるからね。
ね、かあさん。
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