かあさんのつぶやき

春秋花壇

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62 記憶障害

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「あうううん、キャベツの千切りがない」

「確かに昨日買ってきたのに」

「なんでー」

「どこに入れたんだろう」

冷蔵庫、台所のテーブルの上、座ってるそば。

はては、洗濯機の後ろまでもしかしたらと思うようなところを

手当たり次第に探している。

かあさんは、昨日また記憶障害を起こし、

夜中に仕方なくATMでお金を下ろしたりしていた。

200円も余分にかかるのに。

あると思っていたお金が残り200円になっていてびっくりした。

66歳にもなれば、こんなにも物忘れがひどいのか、

それとも解離性健忘なのか、アルツハイマーなのか

理由はどうあれ、生活できなくなっている。

いくら探してもないので、仕方なくまた買いに行った。

キャベツの千切りはお好み焼きに入れるのだ。

今日は、糖尿病に良いとされるたまねぎも刻んで入れるつもりだ。

ねー、記憶がちょくちょくなくなる老人は、

どうやって生活しているんだろう。

俺ね、最近不思議に思う。

これだけ、情報が有り余ってる社会なのに、

老人の生活の仕方の情報がほとんどない。

調べ方が悪いのかな。

糖尿病の老人がどのくらい毎日散歩してるのかとかも

よくわからない。

自助グループみたいなのもあったら助かるのにな。

65歳以上の高齢者人口は3588万人で、人口の28.4% 総務省の推計によれば、65歳以上の高齢者人口は2019年9月15日現在、3588万人(前年推計にくらべて32万人増加)で、総人口に占める割合(高齢化率)は28.4%(同0.3ポイント上昇)となりました。

こんなにいるのに、集まりあったりする場所は70歳以上とか?

キャベツの千切り、冷蔵庫に入れようとしたら、

なんと扉のペットボトルの後ろにあったーーー。

嬉しいやら、腹立たしいやら、あははは。

あったんだから、まあ、いいか。

かあさんは今日、ラジオ体操のとき、

嵯峨のおばあちゃまから

「肘の内側にたくさんの汗もができたの」

と、相談された。

昔なら、ムトウハップなのだろうが……。

今は発売禁止でどこにも売っていない。

「わたし、薬一杯余ってるから持って行くね」

そうそう、かあさんは、胸が大きくて

バストの下にいっぱい汗もができるときがある。

その薬が、一週おきに出る。

使い切れなくて、たくさんあまっていた。

有効利用だよね。

内服薬だったら、勝手に上げたりしないけど、

外用薬だから、少しくらいあげても平気かな。

ラジオ体操が終わるとまっすぐ家に帰り、

薬をもって嵯峨のおばあちゃまのマンションへ。

おばあちゃまは散歩中だから、扉の取っ手にかけてきた。

役に立ってくれると嬉しいな。

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