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第四章幸福と不幸は紙一重

6.長女の居所

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グフタスは新聞を見て唖然とした。


「アーデルハイド?」

「なっ…」


マイラも驚きを隠せずにはいられなかった。
島流しになって惨めな生活を送っていると思いきや隣国のカルフェオン王国の新聞にて見開きで写真が載っていた。


しかも勲章を首にかけてる写真だ。


「何故…あれが!」

「どうして…ありえない」

惨めな暮らしどころか、アーデルハイドに賛美のコメントが書かれていた。
写真には新聞記者も敬意を持っていることが伺えるし、イングリット王国にいた時よりも美しくなっていた。


艶やかな髪に真珠のような肌に、異国情緒溢れる美しい装いで、王から勲章を授与される写真を見て怒りを覚える。


「私達がこんな暮らしをしているのに…何故」

「南の島で事業が大成功?カルフェオン王国の女神、アーデルハイドの奇跡だと!」

新聞を握りしめるグフタスはそのまま力の限り破く。

「こんなことが許されるはずがない…血筋しか取り柄のないあれが」

ずっと都合のいい捨て駒程度にしか考えてなかった。
貴族令嬢としての振る舞いは悪くなかったが、本を読むしか能がないと馬鹿にしていた。

領地経営に関してもレイジがフォローしているだけだと馬鹿にしていたのに。

いなくなってからもアーデルハイドの功績など、周りの人間が優秀だったに過ぎないとさえ思っていたのに。


「福祉事業にも貢献し、医者のない島に病院や診療所を作り、学校まで設立した功績は素晴らしいですって?領主気取りななんて!」

「お姉様は隣国の辺境地で成功しているということは、その辺の貴族よりも資産家ということよね。きっとバックにかなりの大富豪がついているのよ!」

「平民になるのが嫌でどこぞの破廉恥な貴族の愛人になったというのね…何処までも愚かなのかしら」


この場にいる全員は思った。

アーデルハイド一人では何もできないと。
どうせ、周りの人間が支援してやっただけなのだと。

何処までもアーデルハイドを侮辱する彼等だが…


「しかし考えようによっては、あれに金を援助させることができるだろう」

「ええ…そうね。なんだったら、私達が移住して、あれの財産を奪えばいいのよ!」

「そうよ。私達は家族なんだから…当然よね?私達を養って当然だし、こんな目に合ったのは全てお姉様の所為なんだから…島で優雅に暮らしても罰は当たらないわ」

「そうだ…アーデルハイドは俺達に援助する義務がある。元婚約者の俺がこんな目に合っていると言うのに!」


家族だけでなくモーギュストも乗り気だった。
慣れない貧乏な暮らしと、アイシャの我儘放題には限界だった。

このまま一緒にいても最悪な未来しかない。
ならばアーデルハイドを国に連れ帰り、すべてを取り戻せばいい。

こんな屑家族とこれ以上一緒にいるなんて耐えられないと思ったのだった。

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