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第四章幸福と不幸は紙一重

5.没落後の両親

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平民にしては大きめで、貴族にしては質素な邸にて。

奇妙な同居生活は続くも、浪費癖のマイラとアイシャはイライラしていた。
何をするにも自分で用意しなくてはならず、相変わらず仕事も真面にすることもなかった。


「貴方、こんな昼間からお酒なんて飲んでないで働いてください!」

「何故私が、平民に交じって労働をしなくてはならないんだ!」

「もうお金もほとんどないのですよ!これでは…」

既に食料もお金もほとんどない。
庭の実のなる果実も食べつくしてしまっている状態だった。


本来ならば、質素に暮らし、毎日地道に働いていれば貧民街に暮らす平民よりはまともな暮らしができたはずだった。

それを、当初は与えられたお金を浪費した彼らの責任だった。


「もうパンも買うお金もないのよ!」

「ならば貴様が働けと言っているんだ。私は貴族だぞ!」

「爵位は奪われて何を言っているの!」


最近は毎日のように邸内で罵倒する声が響き、近所からは距離を置かれていた。

引っ越してきた当初は、親切な隣人が気にかけてくれていたが、傲慢な態度のマイラはその親切を踏みつぶしてしまった。

おかげで、下町では仲間外れにされていた。


おかげで、誰にも助けてもらうことは叶わなかった。
引っ越してきた当初は、マイラやアイシャが不幸な親子を演じていたが、下町でも積極的に慈善活動を行っているアントニアを知る者は多く、二人が流したアントニアの悪い噂を本気で信じる者はいなかった。


「ちょっと貴方!何処に行くの!」

「出かけてくるだけだ!」

「そんなことを言って、また愛人の元に行く気でしょ!」


今日という今日は許さないと言いながら、腕を掴もうとするも、グフタスはその手を払いのけようとする。


そんな中、勢いよく扉が開かれる。


「お父様、お母様!吉報ですわ」

「アイシャ、なんだ…騒々しい」

「喧しいわよ」

冷たい視線で娘を見る二人。
以前は娘を溺愛していたが、今ではそんな素振りを見せなかった。


「これを見て!」

「お二人共、こちらを!」

アイシャと一緒になって敗れた新聞を取り出すモーギュストに二人は苛立つ。

「なんだ?新聞がどうしたと言うんだ」


「モーギュストも一緒になってなんですの?今は仕事中でしょう?」


日雇いの仕事をしているモーギュストだったが、それすらもクビになって遊んでいたのかと思うと不快そうな表情をする。


「お姉様の居場所が解ったの!」

「何?」

グフタスの表情が険しくなる。
隣にいるマイラは興味もないような表情をしていた。


「あの疫病神が見つかったと?」

「島流しになって死体でも発見されたの?くだらない」


グフタスは、アーデルハイドへの強い恨みを持ち、マイラに関してはつに死んだか?ぐらいの反応だった。

無実のアーデルハイドが死のうとも、二人の心は痛むことはなく。

むしろ、アーデルハイドが原因で自分達は不幸なのだと思っている二人は何処までも性根が腐っていたのだが、今さら縁を切った娘を持ち出す意味が解らなかったのだが…


テーブルに置かれた新聞を見て絶句した。





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