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9.従順な魔獣

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何時までもここにいるわけにもいかず移動しようとした時だった。


再び地震が起きた。

「何です!」

「これは足音?」


ズシン、ズシンと足音が近づき。


「ウォォォン!」

「クェェェェ!」


茂みから現れたのは巨大ゴーレムと黒魔鴉だった。


リーゼロッテは悲鳴を上げそうになったが…


「ノンノン!!」

「え…」


「カラス!」


名前を呼ぶと二匹はアルトに近づいた。


「僕を探してくれたの?」

「ウー…」

「クエ!」

アルトの肩に止まる黒魔鴉はそのまますり寄る。


「ジローにコジローまで!」

空を見上げると燕や他の魔鳥も一緒だった。


「アルト様…あの」

「大丈夫です。僕の友達ですから」

「は?」

魔獣を友達と軽々というアルトに絶句する。


「他の皆は?」

「ウー」

首を横に振る彼等。
恐らくはぐれてしまったのだろうと察した。


「そっか、杖があれば無事を確認できるんだけど」

「クエ!」

「え?」

カラスが何を放り投げるとそれは、アルトが愛用していた杖だった。


「あ!僕の杖!持って来てくれたの?」

「クエ!」

「わぁー、ありがとう!最高だよクロ!」

これで魔法が使える。
行方知らずの使い魔達の行方を捜すこともできるし、呼び出すのだって簡単だった。



「皆、本当にありがとね」

アルトは離れていても従魔達との絆は切れていないことが嬉しかった。


「これで君を送ってあげられるよ」

「え?私を?」

「うん、この燕は優秀なナビゲーターをしてくれるから、どんな迷いの森でも迷わないよ」


ローガス達は役に立たないと言っていたが、アルトは重宝していた。
何故なら、旅の最中に人を惑わす魔獣や幻覚で遭難させられるのは危険だった。

それが長期になれば命取りになる。
だからこそ、戦えなくともナビの代わりになってくれる魔獣は貴重だったし、彼等がいれば上級魔獣に遭遇しないで森を抜けることもできる。


「この子がいれば、魔獣に遭遇しないで抜けられるよ」

「じゃあ、私は仲間の元に」

「うん、会えるよ」


パァっと目が輝くリーゼロッテ。
もう、森を抜けることも、仲間と合流することもできないと諦めていたのだ。


「じゃあコジロー、頼んだよ」

頷きながら目を光らせ、レーダーとなり探索サーチを使う。


「終わったみたいだね。よし」


杖を取り出し召喚魔法を使う。

「我が声に応えよ、契約者アルトの名のもとに!」


光が螺旋を描き、そこから召喚獣が呼ばれる。



「ええええ!グリフォン!!」


召喚されたのは魔獣の中でも一、二を争う伝説の生き物。


  グリフォンだった。



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