捨てられた召喚士は人外に寵愛され過ぎている

ユウ

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8.少女

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近くで悲鳴が聞こえ、見渡す。


「女の子が襲われている!」


必死で逃げ回るのは、金髪の少女がクロコダイルに襲われていた。


「いやぁぁぁ!来ないでください!」

「シャァァァ!」


興奮状態にあるクロコダイルは目が赤くなっている。
きっと、巣に侵入したことで敵と判断され追いかけている。


「あっ!」


少女はそのまま倒れこむ涙目で見上げた。


「いや…誰か…誰か助けて!」


ガクガクと震えながら目を閉じるも痛みは一向に来なかった。


「え?」


恐る恐る目を開けるとクロコダイルは大人しくなっていた。


「どーどー…落ち着いて」

「シャー!」

「ごめんよ、驚かせてしまったんだね?巣に帰ってくれるかい」

「ギャウ!」

尻尾を振って返事をするクロコダイルは振り返りそのまま去って行く。


「えっ…嘘」


武器を一切使わずに、凶暴なクロコダイルを落としくさせ巣に帰らせたアルトに驚く。


「君、大丈夫?」

「はっ、はい…ありがとうございます」


少女は腰が抜けたのか立つことが出来なかった。


「足、挫いちゃったの?立てる?」

「申し訳ありません」

立とうとするも立つことができず、足に痺れが走った。


「怪我をしたんだね。ちょっと待ってて」

鞄から薬草を取り出し、傷に塗り包帯を巻いて応急処置を行った。


「たいしたことがないうけど、あまり動かさない方がいい」

「ありがとうございます」


痺れが引いていくようだった。

傷口に塗った薬草は即効性のあるもので、普通の傷薬よりも効果抜群だった。


「僕はアルト。君は?」

「私はリーゼロッテと申します。この度は危ない所を助けていただきありがとうございます」


貴族令嬢としての挨拶を交わす姿に一瞬見惚れてしまう程の美しい所作だった。


「リーゼロッテ様は…」

「どうか様などをお付けにならないでくださいませ

「えっ…いや」


どう見ても貴族。
しかも高位貴族の令嬢に見えるので無理だろ?とも思ったが。


「アルト様は私の命の恩人ですわ。ですがお礼ができるものがなく…この身一つしかございません」

「わぁぁぁ!待て待て!!」


そういいながら何故か服を掴みだす。


「申し訳ありません…その、発育には自信がございませんが」

「そうじゃなくて!そういうのは軽々しくしちゃいけません!嫁入り前の女性が!」


前世の記憶を取り戻した所為か、さらにいう事が若者らしくない。
前世は山奥で年寄りに育てられたこともあり貞操観念がやや古臭く、現在もお堅かった。


「お礼は結構ですから…本当に」

「申し訳ありません。城に戻ったら必ず」

「ん?」


今、とんでもないことを聞いた気がするが気のせいか?と思ったアルトだったが、何時までもここにいるわけにも行かず移動することにした。


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