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第一章婚約破棄と国外追放

12.思わぬ展開

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テントの中に招かれ、温かいお茶に着替えを用意される。

「申し訳ありません。このような服しか用意できず」

「そんな‥着る服まで用意していただき、申し訳ありません」

差し出されたのはシンプルなワンピースで清潔感があった。

元々派手な装いは好まず、質素な装いを好んでいたので十分だった。


「騎士団の皆様、傷の手当に着る服まで用意していただき感謝に堪えません。ありがとうございます」

貴族令嬢としての礼を尽くし、心からお礼を言うエリーゼ。
もしこのまま殺されることになっても、親切にされたことは変わりない。

むしろ彼等は、エリーゼに紳士的な態度を取っている。
不誠実な態度ばかり取っていたのはレスティア王国側だったのに、なんて情けないのだろうか。


(きっと団長方が素晴らしい人ね)

部下の教育が行き届いているのは、上司の指導力が素晴らしいからだろう。
レスティア王国では酷い噂が流れてるがあくまで、噂は噂に過ぎないのだから信じていなかった。


お茶を飲み、少しだけ気持ちが落ち着いた。
冷静さを取り戻したエリーゼは、覚悟を決めようと思った。

(せめて最後は貴族令嬢の矜持を守ろう)

人としての道を踏み外した家族は、この後それ相応の報いを受けるだろう。
もしかしたらトビアスも廃嫡になる可能性だって出てくるかもしれないが、むしろその方が国の為かもしれない。


そう思った矢先のことだった。

「失礼します!!」

「はい?」

とても焦った声が聞こえた。
テントの外から声をかけ、入って来た男性にエリーゼは驚く。


「ジークベルト様!」

「エリーゼ姫、お久しぶりにございます」

騎士として膝をつき礼を尽くす、この男。

ジークベルト・ベルツハイン。
何度か勅使としてエリーゼと会うことが多く、顔見知りだった。


「なんとおいたわしいお姿に…あの馬鹿王子」

唇をかみ締めるジークベルトは脳内に浮かぶ、トビアスを殺してやりたい気持ちでいっぱいだった。


「ジークベルト様、私はどのような刑を受けるのでしょうか」

「は?」

「やはり、帝国側を騙した罪で火炙りは確実になると覚悟しております」

「なっ…何を申されますか!」

ジークベルトは耳を疑った。
何をどう勘違いをしたらそんな考えに至るのか。


「私は心配になり国境近くに向かっておりました」

「え?」

「魔の森に馬車が入って行くのを私の精霊が見たのですが…」

言いずらそうにするジークベルト。
最初はエリーゼと気づかなかったのだが、後から気づいたのは馬車の御者を捕えて吐かせた後だと聞かされる。


「まさか、このような真似をするとは思わず…国まで迎えに行くべきでした」

「あの…」

「あの後、急いで森を探し回り…その」

言いにくそうにするジークベルト。


「森で、気絶している傭兵を捕えました」

「はい」

「軽く尋問させ、エリーゼ様がご無事だと知りました」


傭兵ををボコボコにしたのはエリーゼだと知ったジークベルトはエリーゼの無事を確認し、その後も周りを探していたのだが見つからず、一度引き渡しの場に戻って来たのだった。


エリーゼの性格からして逃げるとは思えない。
責任感が人一倍強いことを理解しているので、引き渡しの場に来ると思った。


だが、戻ってきたらさらに問題が発生した。
部下の一人にカイルが女性を連れ帰って来たと聞き失神しそうになるも、女性の外見を聞き、すぐにエリーゼだと気づきかけつけたのだった。



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