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第六章。修羅場の行く末。8

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スに座って涙をハンカチで拭いていた。
「大丈夫? 佐久間さん」
「すみません……迷惑をかけて」
「ハハッ……気にしなくていいよ。感動するストーリーだったし。俺も久しぶりに涙が溢れてきた。待ってて。今何か飲み物を買って来るから」
 ニコッと笑うと稲葉先輩は飲み物を買いに行ってしまった。優しい先輩に対して余計に罪悪感を覚える。違う……映画が原因ではない。
 本当は分かっている。社長に対する気持ちが大き過ぎて耐えられなくなっていることに……。
 社長はもしかして、それに気づかせるために私に会いに来なかったのだろうか?
 いや……考え過ぎか。ただ腹が立つから会わないだけよね。お子様みたいな思考の持ち主だし。ハハッと笑うが虚しくなってきた。
 私……何をしているのだろうか?
 憧れの先輩の彼女になってデートをしているのに心から楽しめていない。
 まるで脱け殻だ。こんな気持ちで稲葉先輩と居ても相手に失礼過ぎる。気持ちを告げて別れよう。自分で蹴りをつけないと前に進めない。そう思い立ち上がろうとした。 
 しかし、その時だった。
「……夏希?」
 えっ? 聞き慣れた声に慌てて振り返ると社長だった。ど、どうして……ここに⁉
 すると社長に抱っこされている女の子が目に映る。写真で見たことがある……娘の樹里ちゃんだ⁉
「このお姉ちゃん……だぁれ?」
 きょとんと見ている小さな女の子は写真で見るよりも何処となく社長にも似ていて可愛らしかった。なおさら胸がスギッと痛む。
 まさか、こんなところ遭遇するなんて。しかも子連れで。すると社長はジロッと私を睨みつけてきた。
「夏希。お前……まさか。あの稲葉って奴と別れもせずにデートをしていたのではないだろうな?」
「それは……」
 どう説明するか悩んでいると抱っこをしていた樹里ちゃんが「あっママだ!」
 と嬉しそうに言ってきた。えっ……?
 見ると凄く綺麗な女性がこちらに来る。
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