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8.閑話
17.永那 中2 春〜中3 春《室橋芹奈編》
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「もう終わり!」
永那が言って、下ろしていたショーツを上げた。
「永那…!」
掴んだ手を振り払われた。
「私も聞きたいから」
そう言って出て行ってしまう。
少し俯いて、でも、慌てて永那を追いかけた。
芽衣先輩の歌に聞き入る永那の手を、ギュッと握った。
握り返してはくれない。
…そうだ。恋人面しちゃ、ダメなんだった。
あたしバカだから、そういうの、すぐ忘れちゃう。
悲しくて、仕方なかった。
学年が上がって、中3になった。
珍しく永那に呼び出されて、更衣室でセックスした。
ちょっとだけ、永那が怖かった。
キスも、胸のさわり方も、いつもより乱暴だった。
壁に手をつかされて、バックで挿れられる。
“乱暴”と思っても、痛いわけじゃない。
永那に求められてる感じもして、あたしは、そんな扱いでも感じた。
「ねえ、芹奈」
「フんんぅっ…」
「友達に、戻ろう。セックスしない、普通の友達に」
「な…ッ、なん、でっ」
「私、やっぱり芹奈を大事にできない。もっと、芹奈を大事にしてくれる人を見つけてよ」
「む、無理!いない!そんな、人ッ、いない!!」
「いるよ!!もっと自信持てって!」
涙が、溢れてくる。
「もう普通に、セックスもできるでしょ?彼氏、作れよ」
あたしの涙が、床に弾く。
「あたしは…あたしは、永那が好き」
「友達として、ね」
「違うよ…!」
「違くない。私、セックスしなくたって、芹奈のこと、ちゃんと好きだよ?可愛いって思うし、頑張ってるの、すげーなって思う。…大丈夫だから」
「好きだよ…本当に、永那のこと、好きだよ…」
「…わかった。…わかったけど、やっぱ、もう…こういうの、終わりにしよう」
彼女があたしのなかからいなくなる。
まだ、イけてないのに…。
「芹奈、マッチョ好きなんでしょ?」
あたしが泣きながらしゃがみ込むと、永那が背中を擦ってくれる。
「子供も好きだし、料理も上手で…。可愛い“お母さん”になりたいんでしょ?それなら、相手は男だろ?」
永那を見ると、寂しそうに笑っていた。
「そんなの…!そんなの、どうでもいいの!それは、ただ…前にそう思ってただけで、あたしは、永那がいい。優しくてかっこよくて、いつも褒めてくれる…永那が、好き」
「優しくて、かっこいい…ね…。でも、私は芹奈の気持ちに応えてあげられない」
永那はあたしの頭を撫でて、更衣室から出て行った。
大声で泣いた。
大声で泣いて、泣いて、泣いてたら、ドアがノックされた。
「室橋…」
野太い、低い声。
“おっさん”って、よく、からかわれてる人。
あたしの印象は、“おっさん”というより“熊”。
「泣き声、外まで聞こえてる…。出てこいよ。僕、入れないからさ」
あたしは下唇を噛んだ。
でも涙は止まらない。
「あの、さ…入口に立ってるのも、実は…恥ずかしいんだ…。両角が、“室橋が泣いてるから行って”って言うから来たんだけど…」
…なんでよ!!なんで!!!
永那のバカ!最低!!
勝手にあたしの相手、決めないでよ…!
こいつ、マッチョじゃなくて…ただ、がたいが良いだけじゃん!!
「室橋」
あたしは袖で涙を拭って、ショーツを穿いた。
バンッと勢いよくドアを開けると、「おぉっ…」と熊がよろける。
「室橋…大丈夫?どうした?」
「うっさい!」
「えぇ…」
それでも彼はあたしの後をついてきて、あたしが叩いても動じないし…ネイルチップが落ちたら、拾ってくれた。
「せっかく綺麗なのに…」
彼が困ったように笑って、あたしは奥歯を強く噛んだ。
なんでよ…!!
永那の、バカ…。バカ…。
「なんでその図体で“僕”なわけ!?」
「え!?」
「キモい!」
「ご、ごめん…」
「謝るな!バカ!」
「えぇ…」
その後、少しして、告白された。
あたしは悩んだけど、結局、頷いた。
2人ともバカだから、高校は手に職つけられるところにして、一緒に通うことになった。
付き合ってる間、永那に何度もからかわれた。
でも、いつもその瞳は優しくて、1人のとき、たまに寂しくなることもあった。
やっぱり、あたしはちゃんと永那のこと、好きだったよ。
永那は相変わらずいろんな人を恋に落としては、振っていた。
よく受験勉強しながらできるなあ…なんて、呑気に思った。
その様子を傍から見ていると…永那に恋する人に対して、なんだか、“可哀想だなあ、必死だなあ”と、前の自分を見ているようで、恥ずかしい気分になった。
千陽は構わず、ずっと永那のそばにいた。
2人の態度が変わらないってことは、もしかしたら、2人はセックスしてないのかも…って思った。
ちょっとだけ、羨ましくも思う。
でも…千陽は明らかに永那のことが好きだし、案外、1番辛い立場にいるのは千陽なのかも…。
まあ、あたしには関係ないことだけど。
永那が言って、下ろしていたショーツを上げた。
「永那…!」
掴んだ手を振り払われた。
「私も聞きたいから」
そう言って出て行ってしまう。
少し俯いて、でも、慌てて永那を追いかけた。
芽衣先輩の歌に聞き入る永那の手を、ギュッと握った。
握り返してはくれない。
…そうだ。恋人面しちゃ、ダメなんだった。
あたしバカだから、そういうの、すぐ忘れちゃう。
悲しくて、仕方なかった。
学年が上がって、中3になった。
珍しく永那に呼び出されて、更衣室でセックスした。
ちょっとだけ、永那が怖かった。
キスも、胸のさわり方も、いつもより乱暴だった。
壁に手をつかされて、バックで挿れられる。
“乱暴”と思っても、痛いわけじゃない。
永那に求められてる感じもして、あたしは、そんな扱いでも感じた。
「ねえ、芹奈」
「フんんぅっ…」
「友達に、戻ろう。セックスしない、普通の友達に」
「な…ッ、なん、でっ」
「私、やっぱり芹奈を大事にできない。もっと、芹奈を大事にしてくれる人を見つけてよ」
「む、無理!いない!そんな、人ッ、いない!!」
「いるよ!!もっと自信持てって!」
涙が、溢れてくる。
「もう普通に、セックスもできるでしょ?彼氏、作れよ」
あたしの涙が、床に弾く。
「あたしは…あたしは、永那が好き」
「友達として、ね」
「違うよ…!」
「違くない。私、セックスしなくたって、芹奈のこと、ちゃんと好きだよ?可愛いって思うし、頑張ってるの、すげーなって思う。…大丈夫だから」
「好きだよ…本当に、永那のこと、好きだよ…」
「…わかった。…わかったけど、やっぱ、もう…こういうの、終わりにしよう」
彼女があたしのなかからいなくなる。
まだ、イけてないのに…。
「芹奈、マッチョ好きなんでしょ?」
あたしが泣きながらしゃがみ込むと、永那が背中を擦ってくれる。
「子供も好きだし、料理も上手で…。可愛い“お母さん”になりたいんでしょ?それなら、相手は男だろ?」
永那を見ると、寂しそうに笑っていた。
「そんなの…!そんなの、どうでもいいの!それは、ただ…前にそう思ってただけで、あたしは、永那がいい。優しくてかっこよくて、いつも褒めてくれる…永那が、好き」
「優しくて、かっこいい…ね…。でも、私は芹奈の気持ちに応えてあげられない」
永那はあたしの頭を撫でて、更衣室から出て行った。
大声で泣いた。
大声で泣いて、泣いて、泣いてたら、ドアがノックされた。
「室橋…」
野太い、低い声。
“おっさん”って、よく、からかわれてる人。
あたしの印象は、“おっさん”というより“熊”。
「泣き声、外まで聞こえてる…。出てこいよ。僕、入れないからさ」
あたしは下唇を噛んだ。
でも涙は止まらない。
「あの、さ…入口に立ってるのも、実は…恥ずかしいんだ…。両角が、“室橋が泣いてるから行って”って言うから来たんだけど…」
…なんでよ!!なんで!!!
永那のバカ!最低!!
勝手にあたしの相手、決めないでよ…!
こいつ、マッチョじゃなくて…ただ、がたいが良いだけじゃん!!
「室橋」
あたしは袖で涙を拭って、ショーツを穿いた。
バンッと勢いよくドアを開けると、「おぉっ…」と熊がよろける。
「室橋…大丈夫?どうした?」
「うっさい!」
「えぇ…」
それでも彼はあたしの後をついてきて、あたしが叩いても動じないし…ネイルチップが落ちたら、拾ってくれた。
「せっかく綺麗なのに…」
彼が困ったように笑って、あたしは奥歯を強く噛んだ。
なんでよ…!!
永那の、バカ…。バカ…。
「なんでその図体で“僕”なわけ!?」
「え!?」
「キモい!」
「ご、ごめん…」
「謝るな!バカ!」
「えぇ…」
その後、少しして、告白された。
あたしは悩んだけど、結局、頷いた。
2人ともバカだから、高校は手に職つけられるところにして、一緒に通うことになった。
付き合ってる間、永那に何度もからかわれた。
でも、いつもその瞳は優しくて、1人のとき、たまに寂しくなることもあった。
やっぱり、あたしはちゃんと永那のこと、好きだったよ。
永那は相変わらずいろんな人を恋に落としては、振っていた。
よく受験勉強しながらできるなあ…なんて、呑気に思った。
その様子を傍から見ていると…永那に恋する人に対して、なんだか、“可哀想だなあ、必死だなあ”と、前の自分を見ているようで、恥ずかしい気分になった。
千陽は構わず、ずっと永那のそばにいた。
2人の態度が変わらないってことは、もしかしたら、2人はセックスしてないのかも…って思った。
ちょっとだけ、羨ましくも思う。
でも…千陽は明らかに永那のことが好きだし、案外、1番辛い立場にいるのは千陽なのかも…。
まあ、あたしには関係ないことだけど。
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