蒼炎のカチュア

黒桐 涼風

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第十七章 忌まわしき過去

17-13 ナギサイド

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 その夜、セシル城内の探索していたが、迷子になったエドナを見つけて、ユミルが用意してくれたお部屋で戻るところだ。

「あれ? あなた達だけ? カチュアは?」

 戻る途中でロゼッタと会った。

「カチュアさんは、お部屋で寝ているんだよ」

 ご飯食べてすぐに寝たんだよね。

 スイレン曰く、戦が終わったカチュアは、今にでも、死んでしまうではないかってくらい、息が荒かったらしい。戦いが終わったことで、体調も良くなって一安心だ。

 ロゼッタか。丁度良かった。カチュアが実は滅亡した国のお姫様だってことを、知ってから、一度も、ロゼッタとは話していなかったんだ。

「そう言えば、ロゼッタに聞きたいことがあったんだ。今いいか?」
「答えられる範囲でしたら」
「ロゼッタはカチュアがイーリスのお姫様ってこと知っていたのか?」
「ええ。と言っても、あったばかりの頃は知らなかったわ。カチュアがアンリのことを『お姉ちゃん』と呼んでいたので、始めて、知ったのよ。アンリとリリカがイーリスのお姫様だってことは知っていたから」
「聞いてもいいか? イーリスが滅んだことを」
「私がカチュアに初めて会った日は、お父さんが、親善大使として、イーリスに訪れた日に、森の中で一人稽古していた。その途中でカチュアに会ったんだ。初めて会った時は不思議な子だと思いましたよ」
「まあ、同意だな」
「それ以降、稽古が終わった後に、二人で仲良く遊んでいたんだ。だけど、ある日、とある村が山賊に襲われてたんです。騎士志願の私にとって、人助けにいこうとした私に対して、カチュアは私に村人の避難を進めたのよ」
「もしかして、カチュア一人で、山賊と対面するつもりだったのか?」
「カチュアは相手を見るだけで、その相手の力量が測ることができたのよ。あの人達がただの山賊ではないことは、カチュアには分かっていたんだ。そうとも、分からずに私は突っ込んで、奴らに返り討ちにされたよ。今思えば、人間とは思えない程の狂気じていた」
「理性を失っていた。魔物化か」
「私を殺そうとした山賊をカチュアが殺してでも、私を助けてくれた。だけど、人を殺したことがなかったカチュアにとって、ショックなことだった。その現実を受け入れることができず、カチュアは暴走してしまった。幸い、村人には、被害はなかった」
「そんなことがあったんだな」
「暴走を納まったカチュアは駆けつけた、アンリに連れて帰ってもらったんです。翌朝には元気になっていました。それを見て、ほっとしましたよ。でも、あの時、カチュアの忠告を聞いていたなら、彼女に辛い目に会わせなかったのに、私はバカです」

 もし、自分の暴走で、村人の中に死人が出ていたらどうなっていたんだろう。さらに暴走して、下手したら、カチュア自身命を落としたかもしれない。ヴァルキュリア族の負の気に弱いから。

「そして、運命の日。私がイーリス城に向かうところにカチュアが着いてきちゃったんだ。カチュアは王女だけど、本人自身、王女とは知らないうえ、それを知っている者は限られていた。私はできる限りカチュアの身を隠していたんだ。だけど、途中でカチュアと逸れたんだ。探している、そんな中で、城内に父が殺されていたんだ」
「急展開だな」
「父が殺された現場近くに隠れられるところに、カチュアが眠っていた状態で見つかったんだ。場内が騒がしくなっていたから、駆け付けたアンリ達に連れて帰って貰った。それ以降、私はカチュアに会っていない」
「話を聞く限り、カチュアは、ロゼッタの父が殺された現場を目撃していた」
「そう」
「でも、分からない。幼い頃のカチュアのことは、知らないが、殺した人間を見逃すのか? ……幼い……そっか。カチュアは力量が測れる。もしかして」
「カチュアすら、恐怖に落としれる者が私の父を殺した犯人」
「助けにいきたくっても、奴からただよる狂気に怯えていた」
「恐らく、もたもたしているうちに、私のお父さんが殺されたところ目撃して、その場で気を失ってしまった。恐らく、そのショックで当時の記憶が飛んでしまったんだ」

 以前、ルイドの街でカチュアに問い出そうとした内容か。

「あんたのお父さんはなぜ殺されなくっちゃったいけなかったんだ?」
「その後にイーリスが滅んだから、戦を引き起こすための引き金になったのかな?」
「イーリス側がコルネリア側の者を殺せば宣戦布告と見なせ、戦が起きるわけか」
「バカばかりですよ。コルネリアは。当時、シグマ様は調査を進めようとしましたが、時すでに遅しでしたよ。しかも、その勝手にイーリスを進軍をしたことに怒り出した、前皇帝によって、それに関わったコルネリア貴族全員処刑したそうですよ」
「シグマと言えば、前から思っていたことがあったんだ。あんたの母は確か、二十年前の悪帝を倒した空の勇者の一人のユンヌだろ? シグマといった同僚とは結ばれなかったのか?」
「確かに好意を持っていたらしい。シグマ様が言うには、アトラ様の場合、お母さんの死に関わった自分には、結ばれる資格はないっていっていたらしいよ」

 それは、以前暴走を納まったアイラが言っていたな。確か、前皇帝のアトラが

 自分の行動に後悔はしていたのか。
 
 それにしても、幼い頃のカチュアに恐怖心を植え付けた者。生きているなら、バルンクが当てはまり、そうだけど、インデットのような強者もいる。一概とは言えない。もしや、その相手は厄災か?

 そうだとするなら、現在のカチュアで勝てる相手だろうか? 私は対面したことがあるが、厄災と呼ばれる存在は規格外の強さを誇っていた。

 あれは魔物化とは違う。まるで、神が闇堕ちしたような存在だ。というよりかは、神の祟りか。



第一七章 忌まわしき過去 完
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