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夜神が帝國に来てから二週間になる。最初の約束通り二週間城に滞在したなら帰してくれるとの約束だった。
だが、夜神は今が二週間目なのか、一週間目なのか分からない状況だった。部屋には時計もカレンダーもなく、連日の皇帝からの執拗な行為や、眠りへの妨害、侍女長による精神的ダメージの行為が重なって、体も心もすでに限界がきていた。

朝、起きるのが困難になり昼近くまで、死んだように寝ているのが続く。起きても心ここにあらずで、虚空を見つめているのが多くなっていた。顔も隈がひどく、瞳も最初の時と比べると虚ろになっていることが多々ある。

この日も、昼近くに起きて、侍女達に助けられながら風呂や着替えをする。最近では部屋で夜以外の食事をするようになり、今日も部屋で食べる。その後はソファに深く沈み込み、呼ばれるまで動くことはない。

いつもなら子供たちと話をしたりするのだか、その呼び出しがないことに気付いて、抱きしめていたクッションをキュッと抱きしめる。不安が込み上げる。
何か、子供たちに不利な事が起ってしまったのではないかと。
不安で心が、ザワザワし始めたときに部屋の扉が開く。
「陛下が「薔薇の温室」でお待ちです。付いてきてください」
侍女長が、扉の前から動かず夜神に話しかけた。
夜神は一瞬たじろいだが、動かなければ侍女長が人間の爪を剥ぐので、大人しく言う事を聞く。

何とか両足に力を込めて、ソファの背もたれを掴み起き上がり、扉の前まで行く。
「おまたせしました・・・・」
「行動が遅いですね。あまり関心しません。陛下を待たせるなどもってのほか。気をつけて下さい。の為にも?」
叱責するが、最後は何時もの不気味な笑みを夜神に見せる。その顔を見ると、恐怖が突然やってきて心を支配する。息苦しくなって、体が震えだす。
「・・・・・はい」
項垂れて、カラカラになってしまった喉から絞り出すように声を出す。
侍女長は無言で夜神を温室まで案内し始める。

温室の中は外と違い暖かくて、甘い匂いが立ちこめている。どこを見ても薔薇しかない温室の中央にはソファやテーブルなどが置かれている。
そのテーブルにはティーセットや茶菓子・フルーツが置かれている。
だが、一番気になったのは不自然な薔薇だ。花瓶に満開の薔薇と三分咲きの薔薇の二本だけ生けてあり、萼も葉もない、薔薇と茎のみの奇妙な物だ。

そしてソファには皇帝が長い脚を組んで、ゆったりしながら夜神を待っていた。
「待っていたよ。侍女長もありがとう。もう下がっていいよ」
「では、失礼いたします」
軽く一礼して、夜神を残して城に帰っていく。夜神はどうすることも出来ず立ち尽くしていたが、皇帝がニッコリ笑って手招きする
「凪ちゃん、こっちにおいで。そう、私の横に座って」
皇帝を見たときから、足が震え、心臓が痛いほど脈打つ。息苦しくて胸を掻きむしりたくなる。今の夜神にとって皇帝は恐怖の対象なのだ。
姿を見るだけで体調が変化する。けど、逆らえない。逆らうことが怖いのだ。
だから、皇帝が望めばその通りに勝手に体が動いてしまう。意志とは関係なく。
「おいで」と言われれば、足を震わせながらも、皇帝の近くまで行き、「横に座れ」と言われれば、体を震わせながらも横に座る。

逆らうことなく順応的になってしまった夜神を見て、ルードヴィッヒは恍惚な表情をする。体をビクつかせながらも横に座り、俯く。きっと顔色も悪くなっているだろう。だが、それで構わないのだ。

隣に座ったのを確認したルードヴィッヒは、慣れた手つきで二人分の紅茶を入れ、一つを夜神の前に出す。
「美味しいから飲むんだよ」
「飲め」と命令ではないが、反論出来ないようにして、夜神の出方を目を細めて見守る。
すると、震える手付きでカップを持ち上げて一口だけ飲む姿に、口の端が持ち上がる。
「クッキーも美味しいから食べて」
目の前に綺麗に並べられた、シンプルなクッキーを一つ、夜神の口元に持っていく。
驚いて、ルードヴィッヒの顔を見る夜神を、楽しそうに眺めながら、口の中に無理矢理入れる。口の中に、突然異物が入ってきたのだ、噛むことも出きずそのまま受け入れる。
「食べて良いんだよ?」
ルードヴィッヒは畳み掛けるように言う。仕方がないので咀嚼して、紅茶で流し込む。

「美味しかったかな?次はコレを食べようか」
カットされたフルーツの中からイチゴをつまみ、また同じように口の中に入れる。
それと同時に夜神の髪をうなじから、かきあげるようにして、髪を掴むと顔が上に向くように引っ張って、夜神の唇にルードヴィッヒの唇が重なる。
「うっ・・・・・ん、んーーー」
イチゴが入ったまま、夜神の口の中にルードヴィッヒの舌がねじ込むように入ってきて、イチゴをコロコロと転がしながら、夜神の舌を絡め取る。
そのたびに中のイチゴが少しずつ潰れて、甘い味が口内に広がる。そして二人の唾液とイチゴの赤色が混ざったものが、夜神の口の端から顎にかけて伝う。

夜神は息苦しくなって、ルードヴィッヒの胸を押して退かそうとする。だが動くはずもなく、増々苦しくなってきた夜神の目から涙がこぼれ落ちる。
「んっーーー」
苦しくなればなるほど、ルードヴィッヒは音が出るまで舌を吸って、歯列をなぞり、そして中のイチゴを舌で奪うとようやく唇を離した。
「ハァハァハァ・・・・・」
「甘いね。凪ちゃんは甘いのは好きだもんね?イチゴ美味しかった?私は美味しかったと思うよ」
ルードヴィッヒは見せつけるように、ゆっくりと嚥下していく。あまりの出来事に夜神は顔を俯くしかなかった。

口の中にものが入っているのに、あんなこと・・・・

俯きながら、何とかして息を整える。だが、ルードヴィッヒが夜神の両手を掴み、ソファの上に押し倒す
「何するの?!」
「凪ちゃん、知ってる?今日で二週間なんだよ。明日はお家に帰れるよ。良かったね」
「・・・・・うそ?帰れるの?」
「嘘は言わないよ。寂しいなぁー。折角凪ちゃんのにたぁーくさん、私のものを注いだのに、どうなるか分からないなんて、寂しいよ。まだまだ可愛がりたいし、凪ちゃんが泣きながら気持ちよくなることいっぱいしたいのに・・・・ねぇ?」
下腹部をゆっくりと撫でながら、夜神に呪いのような言葉をゆっくり囁く。
「あ、イヤ、イヤ!やだぁ・・・・・もう、やめて・・・ゆるして・・・・・」
首を左右に振り、涙を流しながら拒絶と懇願を繰り返す。ルードヴィッヒはさらに耳元で囁く
「だから、凪ちゃん。今から楽しもうか?大丈夫だよ。食事はちゃんとあるから安心して?それともお風呂かなぁ?何が気にるか教えて」
「ゆるして・・・・・もう、しないで」
「う~ん、それは無理な話かな。だから・・・・」
耳元で囁いていた口を首筋に移動して、まるで注射の時の消毒のように、今から噛む所を舐めるとそのまま牙を突き刺す。
「う、あぁ、あーー」
一瞬の痛みが来たあと、すぐに別の痛みがくる。
その痛みは突き刺すような痛さはない。体を火照らせて、思考が遠くに行って霞がかる。
体の奥から甘い痺れが溢れ出し、胎内が痙攣しているような錯覚を生み出す。蜜壷の更に奥から何かが溢れ出しているのを感じる。
「これ、だめ、なの・・・・・んっ!」
「あぁ、今回は上手く調節出来た。凪ちゃんいっぱい感じて、乱れて、狂って楽しもうね」

ルードヴィッヒは背中のファスナーをしたに下ろしていく。

それがこれから行われる、狂宴の合図のように。
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