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第一章:聖女から冒険者へ
63.プレゼント
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「時間も迫っていることだし、そろそろ行こうか」
「そうだね」
ゼロの言葉にイザナが答え、ソフィアはその場に立ち尽くしている。
このような微妙な空気を作ってしまったのは私であるために一人困惑していると、不意にイザナに手を握られた。
「ルナ、行こう」
「うん……」
彼に微笑みかけられて、私は小さく頷いた。
そしてチラッとソフィアのほうに視線を向けると、彼女はどこか寂しそうな顔を浮かべている。
(……ソフィアさん、傷付けちゃったかな)
そう思う反面、彼女に同情するつもりはなかった。
私は彼の妻であり、イザナもはっきりとそのことを彼女に告げていた。
ここで私が余計なことを伝えたら、ソフィアにも、イザナにも良くない気がしたからだ。
それに私自身の心にも嘘を付くことになる。
(もう、振り回されるのは嫌だし、何も言わないでおこう……)
それはイザナのことを絶対に渡さないという私の意思表示でもあった。
私は彼女から視線を外すと、ゆっくりと歩き出す。
イザナもゼロも彼女にそれ以上言葉をかけることはなく、ソフィアも何も言ってこなかった。
***
私達はギルドから出ると、飛竜の乗り場へと移動する。
転送装置を使っての移動だったため、直ぐに到着することが出来た。
(魔法の力ってすごいな。やっぱりジースは特別な場所なのかも……)
元々生活魔法が存在することは知っていたが、ここまで有効的な使い方が出来るとは思ってもいなかった。
ここにいればもっと色々な魔法を知る機会もあったかもしれない。
(残念だけど仕方が無いよね。またいつか、ここに来たいな)
「ルナは飛竜に乗るのは初めてになるから、少し説明をしておくね」
隣を歩くイザナが話かけてきたので、私は顔を横に向けた。
「この地方が寒い場所なのはもう分かっているよね」
「うん。でも昨日買ったこのローブを着ていれば大丈夫だよね?」
私は昨日購入した白いコートをしっかりと着用していた。
この効果を知ってからは、絶対に手放せない一品に既になっている。
「そうだね。だけど結構な速度で移動するから、冷気のかかった風圧を感じることになる。寒がりのルナには少し辛いかもしれないな」
「そんなに寒いの?」
私が不安そうな顔で問いかけると、イザナは困った顔を見せて「寒いと思う」と言った。
ここまでイザナが言い切るのだから、きっと相当寒いのだろう。
「昨日は飛竜に乗るとは思わなかったから、きっとルナは用意していないと思って……」
イザナはそう言って立ち止まると、アイテムボックスの中からふわっとした白いニット帽のようなものを取り出して私に手渡してくれた。
良く見ると耳の部分には耳当ても付いている。
(可愛い……。これ、私が好きそうなのを選んでくれたのかな?)
「それにも一応特殊な術がかけられているから身に付けている限り、頭周りは寒くなくなるはずだよ」
「あ、ありがとうっ!」
「礼ならゼロに言ってあげて。飛竜に乗ることが急遽決まって、その後用意してくれたからな」
「そうなんだ。ゼロ、ありがとうっ!」
私がお礼を言うと、ゼロはにっと笑って「おう!」と答えていた。
その時に私はハッと何かを思い出して、慌ててアイテムボックスから昨日購入した二人へのプレゼントを取り出した。
「あのっ、これ良かったら使って! もう持ってるかもしれないけど」
「俺にくれるのか?」
本当は綺麗にラッピングしてプレゼントしたかったが、昨日の今日でそんな暇はなく、そのままの状態で渡すことになってしまったのが少し残念でもあった。
だけど、渡すには今が絶好なタイミングな気がする。
「うんっ! 二人にはいつもお世話になっているし、何かお礼出来ることがあったらいいなって思っていたんだ」
「ルナは優しいな」
ゼロは嬉しそうに答えると、今着ているローブを脱いで私が手渡したコートに着替えた。
「おー、すごくいいじゃん。動きやすいし、さすがルナだな。ありがとう。大切に使わせてもらうな」
「うんっ!」
ゼロは喜んでいる様子で、私まで嬉しい気持ちになる。
そしてイザナはこの場では着替えなかったものの、喜んでくれていた。
「ルナ、ありがとう。これは、次の街に着いたら使わせてもらうよ。これを着てルナとデートをしようかな」
「……っ、うん」
そんなことを言われて、私は照れてしまう。
(また次の街でもイザナとデートが出来るんだ。どうしよう、すごく嬉しいっ!)
「これで準備万端だな。飛行時間は約二時間くらいだと思うけど、これなら快適に空の旅が出来そうだな!」
「空の旅……! 私もすごく楽しみになってきた!」
最初は少し不安だったけど、今は楽しみの気持ちのほうが上回っていた。
(冒険ってこんなに楽しいものなんだ。これから先もずっと続けていきたいな!)
「そうだね」
ゼロの言葉にイザナが答え、ソフィアはその場に立ち尽くしている。
このような微妙な空気を作ってしまったのは私であるために一人困惑していると、不意にイザナに手を握られた。
「ルナ、行こう」
「うん……」
彼に微笑みかけられて、私は小さく頷いた。
そしてチラッとソフィアのほうに視線を向けると、彼女はどこか寂しそうな顔を浮かべている。
(……ソフィアさん、傷付けちゃったかな)
そう思う反面、彼女に同情するつもりはなかった。
私は彼の妻であり、イザナもはっきりとそのことを彼女に告げていた。
ここで私が余計なことを伝えたら、ソフィアにも、イザナにも良くない気がしたからだ。
それに私自身の心にも嘘を付くことになる。
(もう、振り回されるのは嫌だし、何も言わないでおこう……)
それはイザナのことを絶対に渡さないという私の意思表示でもあった。
私は彼女から視線を外すと、ゆっくりと歩き出す。
イザナもゼロも彼女にそれ以上言葉をかけることはなく、ソフィアも何も言ってこなかった。
***
私達はギルドから出ると、飛竜の乗り場へと移動する。
転送装置を使っての移動だったため、直ぐに到着することが出来た。
(魔法の力ってすごいな。やっぱりジースは特別な場所なのかも……)
元々生活魔法が存在することは知っていたが、ここまで有効的な使い方が出来るとは思ってもいなかった。
ここにいればもっと色々な魔法を知る機会もあったかもしれない。
(残念だけど仕方が無いよね。またいつか、ここに来たいな)
「ルナは飛竜に乗るのは初めてになるから、少し説明をしておくね」
隣を歩くイザナが話かけてきたので、私は顔を横に向けた。
「この地方が寒い場所なのはもう分かっているよね」
「うん。でも昨日買ったこのローブを着ていれば大丈夫だよね?」
私は昨日購入した白いコートをしっかりと着用していた。
この効果を知ってからは、絶対に手放せない一品に既になっている。
「そうだね。だけど結構な速度で移動するから、冷気のかかった風圧を感じることになる。寒がりのルナには少し辛いかもしれないな」
「そんなに寒いの?」
私が不安そうな顔で問いかけると、イザナは困った顔を見せて「寒いと思う」と言った。
ここまでイザナが言い切るのだから、きっと相当寒いのだろう。
「昨日は飛竜に乗るとは思わなかったから、きっとルナは用意していないと思って……」
イザナはそう言って立ち止まると、アイテムボックスの中からふわっとした白いニット帽のようなものを取り出して私に手渡してくれた。
良く見ると耳の部分には耳当ても付いている。
(可愛い……。これ、私が好きそうなのを選んでくれたのかな?)
「それにも一応特殊な術がかけられているから身に付けている限り、頭周りは寒くなくなるはずだよ」
「あ、ありがとうっ!」
「礼ならゼロに言ってあげて。飛竜に乗ることが急遽決まって、その後用意してくれたからな」
「そうなんだ。ゼロ、ありがとうっ!」
私がお礼を言うと、ゼロはにっと笑って「おう!」と答えていた。
その時に私はハッと何かを思い出して、慌ててアイテムボックスから昨日購入した二人へのプレゼントを取り出した。
「あのっ、これ良かったら使って! もう持ってるかもしれないけど」
「俺にくれるのか?」
本当は綺麗にラッピングしてプレゼントしたかったが、昨日の今日でそんな暇はなく、そのままの状態で渡すことになってしまったのが少し残念でもあった。
だけど、渡すには今が絶好なタイミングな気がする。
「うんっ! 二人にはいつもお世話になっているし、何かお礼出来ることがあったらいいなって思っていたんだ」
「ルナは優しいな」
ゼロは嬉しそうに答えると、今着ているローブを脱いで私が手渡したコートに着替えた。
「おー、すごくいいじゃん。動きやすいし、さすがルナだな。ありがとう。大切に使わせてもらうな」
「うんっ!」
ゼロは喜んでいる様子で、私まで嬉しい気持ちになる。
そしてイザナはこの場では着替えなかったものの、喜んでくれていた。
「ルナ、ありがとう。これは、次の街に着いたら使わせてもらうよ。これを着てルナとデートをしようかな」
「……っ、うん」
そんなことを言われて、私は照れてしまう。
(また次の街でもイザナとデートが出来るんだ。どうしよう、すごく嬉しいっ!)
「これで準備万端だな。飛行時間は約二時間くらいだと思うけど、これなら快適に空の旅が出来そうだな!」
「空の旅……! 私もすごく楽しみになってきた!」
最初は少し不安だったけど、今は楽しみの気持ちのほうが上回っていた。
(冒険ってこんなに楽しいものなんだ。これから先もずっと続けていきたいな!)
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