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第2章

「悔しすぎる」

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 ちょっと恥ずかしい位イチャついてしまってるような気がしてしまって、少し抵抗を試みている間に、すっかり忘れていた事に気が付いた。


「ルカ?」
「ん?」

「レジーのとこ、行かなくていいの?」
「昼終わったらって言ったろ。まだ昼、終わってないから大丈夫」

 ルカは平然と、そんな事を言っているけれど。
 終わってないというのか、終わらせようとしてないんじゃないだろうか?

「あ、これうまいよ、ソラ」
「ん」

 口に入れられて、食べてみる。うん、美味しい。

 ……まあ。ルカが いいならいいか。

 
「オレ、これ、結構好きだから」
「あ、そうなの?」

「味覚えろよ」
「ん?」

 ルカを振り仰ぐと。ニヤ、と笑われる。

「お前、料理作るって言ったろ? オレが好きな味、覚えて」
「――――……」

 あ、そういう事か。
 ルカを見つめて、うんうん、と頷く。

 すると、ルカは、ぷに、とまた頬に触れてくる。

「今日は時間無いから、作らなくていいぞ」
「……?」

 時間無いんだ。
 でもまだお昼なのに、そんなに長い事、話すのかな。

 図書館みたいな所に、半日ー?
 うう。いやだ……。

 と、自分のことを調べてくれてるので、口には出せないが、少しうんざり気分でいたら。


「レジーとの話が終わったら、城案内してやるよ」
「――――……ほんと?」

「何でほんとなんて聞くんだよ。ほんとだっつの」

 クスクス笑う。


「すごい広そうだもんね。すごい楽しみなんだけどー!」


 そういえば、ゲームでは、そんなに城の中は見ていない気がする。


「早く食べ終わって、レジーんとこ行って、早く探検しようよ」

「――――……探検って……」

 ぷ、とルカが笑ってるけど。

 だって、さっきここまで歩いただけだって、すでにどう歩いてきたか分かんない位だし。この広さはもう、探検だよね。


 ああ、楽しみすぎるー。

 ウキウキしながら、早く食べてしまおうと急いでいたら。

 不意に、ぷ、と笑われた。


「……子供なのか? ソラ」


 むか。


「――――……違いますけど。何それ」


 20才だし。オレ、子供じゃないし。

 よしよしよし、と撫でられながら。
 ルカの言う事には。


「オレ達とお前の世界の、時の進み方って違うんじゃねえ? どー考えても、年上な気しない」

「どーいうことそれ」


 何となく分かるけど。ムカつくから、分かりたくない。


「――――……ま、いーけど」


 クスクス笑いながら、ルカが頬にキスしてくる。


「……子供に手ぇ出すのやめてください」

「あ? ――――……ふうん?」


 ルカが一瞬オレを見つめて。
 それから、ぷ、と笑って。「可愛くねえ」と言う。



「子供で可愛くないから、もうオレに触んないでよ」


 頭撫でようとしてくるルカの手を、ぴっぴっと、払っていると。


「――――……ほんとに可愛くねえな」

 脇に手が入って。
 抱き上げられるみたいに、引き寄せられて。


 びっくりしてる間に、ルカの上に思い切り乗せられた。



「――――……っ」


 じっと、見つめられる。
 ほんと。

 目力強いんだから、そうやって、見つめるのは、なんかやだ。


 悔しいけど、どうしようもなく、ドキドキする。



「……何か、言う事ねえの?」

「――――……」



 ……言うこと……なんだろ、言う事って……。



「な、……何?」
「――――……何で分かんねえの。 触んなって、お前言ったよな?」

 ムッとして、ルカが言う。


「は。……だって、ルカが、子供とか言うから……」

「別に悪いとは言ってねーだろ」


 ……馬鹿にしてるとしか思えないんだけど。




「撤回しろよ」

 なんかムッとした感じで、言われる。


 むーー。
 自分が失礼だからいけないんじゃん。

 そう思いながらも。



「…………触んないでっていうのは、無し……」


 そう言うと。ルカが、すぐにニヤ、と笑う。



 もう。何だよほんとに。

 ムカつくのに。




 頬にキスしてくるルカを、何となく黙って受け入れてしまう。




 だめだなオレ。
 ……ルカにじっと見られると、なんか、言う事聞いちゃうような気がする。



 くそー、ナニコレ。もう。

 悔しすぎる……。








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