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第2章

「考えられること」

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 びっくりして、ルカを見上げると。

「全然考えてなかったぽい顔だな?」
「……うん」

「やっぱりお前、何も考えてないな」

 クスクス笑う、ルカ。


「夢だとして――――……お前が寝たのって少なくとも、今のその年だよな?」
「……うん」

「オレ、小さい頃からの記憶も全部あるけど。お前が寝てから、生まれた訳じゃねえし」
「…………う、ん。そう、だよね……」
「……夢って可能性は、無いんじゃねえの」

 ……うーーーん。わかんない。

 あ、あれだよ、あれ。

 生まれた時から病院にいて、長い年月かけて、夢の中で全部の世界を作り上げて…………。いや、何か、無いな。

 なんかオレって、そんな、色んな人の設定をちゃんと考えられる奴な気は、しない。
 って、何か自分で言うのも、何だかなって感じではあるけど。

 ……てことは、それも無しかな。


「――――……?」

 不意に、後ろから顎を持たれて、上げさせられて。
 後ろに居るルカに、無理無理な姿勢で、キスされる。


「……ン……ン……?」

 く、首、苦しい――――……ひく、と喉がヒクついた。
 ぎゅ、と目をつぶって耐えてるのに、ルカの舌はオレの舌を絡め取って、めちゃくちゃキスしてくる。


「……ふ、……ん、ぅ――――……っ……」


 最後にカプ、と舌を噛まれて。
 ゆっくりと唇が離れて、見つめ合う。


「……生きてるよなあ? オレ達って」

 くす、と笑うルカ。
 する、と中に手が入って、胸に手が這う。

「……っ??」


「すぐ熱くなって、息上がるし。すげードキドキするし」
「――――……ッ」

 クスクス笑って、またちゅ、とキスされて。
 
 胸に直で触るって。
 ……どんな確かめ方なんだ……。

 胸から手を外させると、ルカはクスクス笑いながら。


「とりあえず、夢説は、置いておこうぜ。もしそれなら、どうにもしようがないから、無視しよう。――――……どっちかっていうと……」
「……?」

「この世界があるんだから、お前の世界もあってもおかしくない。もしかしたら他にもたくさん世界はあって、例えば隣り合って存在してて。何かの条件とか、何かの拍子に、飛ばされるっていう現象が起こる――――……って方が、ありそうじゃねえ?」

「――――……」

 まあ確かに。
 無いとは、言えないのかもしれない。

 世界がどうやってできてるかなんて、知らないし。
 オレは、オレが生きて感じる事の出来る、身の周りの事しか、確かには感じられない。それよりずっと遠い世界が、どんなふうに存在してるかなんて。分からないんだよな……。


「それなら、オレもお前も、小さい頃からの記憶もあって、普通に生きてても、おかしくない」


 そんな風に言われると、そんな気がしてくる。


 だってもしこれで、ほんとに寝てて、オレの夢なんてことになったら。
 こんだけ毎日、とんでもない感覚与えられて、死にそうになってるのに、全然起きもしないで、もう、オレってば、どんだけネボスケなんだっていう話な気もする……。


 いやでも、オレが全部の設定考えてるオレの世界、というよりは、ネボスケ説の方がオレっぽいような。……って何考えてるんだか、分からなくなってきた。

 ルカが、オレの頬に手をかけて。じっと見つめてくる。


「そういう事なら、同じように飛んでる奴がいるかもしんねーけど……聞いた事ねえし」

「……うん」

「でも飛ばされた奴がひっそり生きてたら、誰にも知られないよな。……むしろ、どっか違うとこから来たなんて言ったら、頭おかしいと思われるし、言わないで生きてく奴の方が多そうだ」
「うん。そう、だね」

 確かに、そうだ。うん。
 オレはたまたまルカ達の目の前に落ちたけど。

 あれが、誰も居ない所に落ちたなら――――…… 言ったら怪しすぎるから、きっとなかなか人に言えなかったかも。

 てことは。
 オレみたいな奴が他にも居るけど、知られてない、とか??


「お前の登場がとんでもなかったから、信じたけど……出てきた瞬間を見てなかったら、信じられなかったかもしんねえよな? すげー怪しい奴だろ、普通」

 クッ、と笑いながら、ルカがオレに口づける。

 全く同じ事、考えてる。
 ……うん。でも、そうだよね。そうだと思う。


 キスがゆっくり離れて。じって見つめられる。


「魔王と戦ってるオレの目の前に落ちてこなければ、こんな事もしてなかっただろうな?」

「――――……」


 ……それは別に良かった……かも……?
 と、ちらっと、思うと。


「お前、考えてること、全部、筒抜けだからな」

 じろ、と睨まれる。
 何も言わず、え。と思いながら、ルカを見つめると。


「……ほんとお前って、素直じゃねーよなぁ、ソラ……」


 後頭部に回ってきた手に押さえられて、キスされて。

 途中でもうほとんどルカの方を向かされて座っていたので、さっきより、体勢的にはきつくはないけど。


「……ン……っ……」


 ああ、ほんと。なんでこんなに、キス、キツイのかな。
 でも、何だか、応えてしまう。


「……ン、ん…………ふ……っ」

 喉の奥で、声が漏れたら。ふ、と笑ってルカがキスを離して。
 親指で、オレの唇に触れる。


「絶対、ほんとは、オレとしたいくせにな、お前」


 くす、と笑いながら、むむ、と口を閉じてるオレをヨシヨシと撫でる。

 なんか悔しいし、ずっと黙ってるのに。ルカはクッと笑って。


「は……。可愛い」


 むぎゅ、と抱き締められて、ああ、もうなんか。

 ――――……イチャイチャしてるだけな気がしてきた……。





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