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復活
エイデンsideゾッとする思い
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王都に隣接する郊外の街で地下組織の情報を調べに、私は部下達を連れて、聞き取りと周辺調査をしに出掛けていた。
『これを周辺国から買い取って、この国で売り捌いている商会なんですが、いつもの青年ではなく慣れていない人間がやって来ました。その人たちが、組織の金づるが逃げたとか裏口で話してるのを聞いたんです。組織と言えば、今この国を揺るがしている奴らじゃないのかと思いまして。一応ご連絡を差し上げたんです。」
そう話す商人は趣味の良い店の店主で、組織の事を話していた商会から仕入れたという品質の良いオイルを手に取った。何処かで見た様なこの商品に、私は思わず店主に尋ねた。
「この商品は王都でも取り扱っているのか?」
すると店主は、頷いて言った。
「私はこれを王都のロッキン商会から紹介してもらったんです。あそこは趣味が良い品物を扱っている事で有名ですから。」
私はドクリと心臓が鳴った。ロッキン商会のオーナーとサミュエルは仲が良かった筈だ。まだサミュエルが貴族として生活する前に、保護者の様に世話してくれたのだと私に紹介してくれた事があった。
目つきの鋭い、サミュエルを大事に思っている事が良くわかるやり手のオーナーは、握手の時も力を抜いたら、怪我をしそうな態度だった。あの商会と地下組織が何か関わっているとすると、何かサミュエルが困惑する様な状況にならないとも限らない。
私は王都に戻るや否や、部下達と別れるとロッキン商会へと向かう事にした。ロッキン商会に近づくと近くの脇道に多くの人間が不安気に集まっていた。少し叫び声まで聞こえる様だ。
私が、街を巡回する警備兵に知らせるための笛を鳴らして走って行くと、道の奥で、サミュエルが男と剣を振って戦って居るのが見えた。明らかに押されているサミュエルの状況に、私は息をひゅっと吸い込んだ。
下手に声を掛けたらきっと注意が逸れて、男の剣がサミュエルを貫くかも知れなかった。けれどその男は不意にサミュエルを薙ぎ払うと、踵を返して路地へと向きを変えた。
それと同時にサミュエルが地面に投げ出されるのが見えて、私は必死で走ってサミュエルを抱き止めた。よく見ると切り傷だらけのサミュエルは、私を濃い紫の瞳で見つめて言った。
「エイデン様。彼を保護して…。」
そう言うとぐったりと目を閉じてしまった。
「サミュエル!サミュエル目を覚ませ!」
私の叫び声は、路地に向かって脇を通過する、馬に乗った警備兵や白騎士達の喧騒に掻き消された。応援の警備兵達に馬車を用意させ、サミュエルの言っていた側で膝まづいて居る、放心状態の青年を一緒に連れてくる様に頼んだ。
サミュエルを抱き上げると、やはり病み上がりなのか以前より軽い身体を感じて、私はサミュエルの白い額に口づけて囁いた。
「サミュエル、死ぬなよ。」
耳に聞こえる私の声は、馬鹿みたいに震えて聞こえた。
『これを周辺国から買い取って、この国で売り捌いている商会なんですが、いつもの青年ではなく慣れていない人間がやって来ました。その人たちが、組織の金づるが逃げたとか裏口で話してるのを聞いたんです。組織と言えば、今この国を揺るがしている奴らじゃないのかと思いまして。一応ご連絡を差し上げたんです。」
そう話す商人は趣味の良い店の店主で、組織の事を話していた商会から仕入れたという品質の良いオイルを手に取った。何処かで見た様なこの商品に、私は思わず店主に尋ねた。
「この商品は王都でも取り扱っているのか?」
すると店主は、頷いて言った。
「私はこれを王都のロッキン商会から紹介してもらったんです。あそこは趣味が良い品物を扱っている事で有名ですから。」
私はドクリと心臓が鳴った。ロッキン商会のオーナーとサミュエルは仲が良かった筈だ。まだサミュエルが貴族として生活する前に、保護者の様に世話してくれたのだと私に紹介してくれた事があった。
目つきの鋭い、サミュエルを大事に思っている事が良くわかるやり手のオーナーは、握手の時も力を抜いたら、怪我をしそうな態度だった。あの商会と地下組織が何か関わっているとすると、何かサミュエルが困惑する様な状況にならないとも限らない。
私は王都に戻るや否や、部下達と別れるとロッキン商会へと向かう事にした。ロッキン商会に近づくと近くの脇道に多くの人間が不安気に集まっていた。少し叫び声まで聞こえる様だ。
私が、街を巡回する警備兵に知らせるための笛を鳴らして走って行くと、道の奥で、サミュエルが男と剣を振って戦って居るのが見えた。明らかに押されているサミュエルの状況に、私は息をひゅっと吸い込んだ。
下手に声を掛けたらきっと注意が逸れて、男の剣がサミュエルを貫くかも知れなかった。けれどその男は不意にサミュエルを薙ぎ払うと、踵を返して路地へと向きを変えた。
それと同時にサミュエルが地面に投げ出されるのが見えて、私は必死で走ってサミュエルを抱き止めた。よく見ると切り傷だらけのサミュエルは、私を濃い紫の瞳で見つめて言った。
「エイデン様。彼を保護して…。」
そう言うとぐったりと目を閉じてしまった。
「サミュエル!サミュエル目を覚ませ!」
私の叫び声は、路地に向かって脇を通過する、馬に乗った警備兵や白騎士達の喧騒に掻き消された。応援の警備兵達に馬車を用意させ、サミュエルの言っていた側で膝まづいて居る、放心状態の青年を一緒に連れてくる様に頼んだ。
サミュエルを抱き上げると、やはり病み上がりなのか以前より軽い身体を感じて、私はサミュエルの白い額に口づけて囁いた。
「サミュエル、死ぬなよ。」
耳に聞こえる私の声は、馬鹿みたいに震えて聞こえた。
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