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上級生の生活

エドワードには言えない

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エドワードにアルバートと何か有ったのかと尋ねられて、僕は動揺を隠しながらも笑顔で、何も無いと嘘をついた。エドワードは納得してない様だったけれど、だからと言って僕を追求はしなかった。

「近いうちにまた会おう。…兄上と三人で。」

そう言って、僕を見つめたエドワードは何か勘づいたのだろうか。でも、いずれアルバートとの関係が判ってしまうとしても、エイデン様にちゃんと話しをしてから第三者が知るところになるべきだと思った。


今エイデン様は遠征に出ているので、王都に戻ってくるのはひと月ほど先だ。僕はため息をついた。アルバートとあんな関係になった事は後悔していないけれど、こうやって僕に巻き込んでしまう事を申し訳なく思うんだ。

そんな事を考えながら上級騎士科の寮室の階段を降りていくと、ガヤガヤと数人の騎士見習いたちがホールで話をしていた。僕は邪魔をしない様に、そっと降りて行ったけれど、騒めきが静まるのが分かった。


「サミュエル。初めまして。」

そう言って中心にいた人物が一歩前に出て僕に挨拶して来た。僕は顔は見たことがあったけれど、はっきり誰なのか分からないまま、差し出された手を握った。

「こんばんは。あの…。」

僕の手をぎゅっと握ったその人は美しい柔らかな金髪と、柔らかな水色の瞳を持っていた。何処かで見覚えのあるその色はイリスの親友のオスカーと一緒だった。


「キース ガードナーだ。今度私の弟がお兄様契約をサミュエルとすると聞いてね、一度挨拶しておこうと思っていたんだ。」

僕はハッとして、にっこり微笑んでキース様と握手して言った。

「初めまして、キース様。オスカー様とは僕の従兄弟のイリスの親友というご縁で、この度お兄様契約を結ぶことになりました。精一杯オスカー様と仲良くしたいと思います。」


ん?キース様が僕の手を離してくれない。僕は困ってしまって、周囲の騎士見習い達を見回した。一人がハッとした様に、キース様に何か囁くと、キース様は慌てて手を離してくれた。そして咳払いすると、今度一度一緒に食事をしようと誘ってくれた。

僕はキース様の立場もあるだろうから、話を合わせて機会がありましたらとその場を流した。その時僕は、ローリーたちの噂していたあの話を、ぼんやりと思い出していたけれど、そこまで拗らせた風にもキース様からは思えなくて、真剣に捉えなかったんだ。これからオスカーと関わることになると言う事は明白だったのに。








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