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上級生の生活
エドワードと団欒
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お腹を抱えて笑っているエドワードを前に、僕は不貞腐れていた。
「だって、まさか戦闘犬があんなに怖いとか思わなかったから。」
今日は久しぶりに、エドワードの寮室に遊びに来ていた。エドワードは最終学年なので、忙しくて中々会えない。久しぶりに会おうと言われて、いそいそと手土産を持って部屋を訪れていたんだ。
僕はエドワードの部屋を歩きながら、少しづつ私物が減っているのを寂しい気持ちで眺めた。
「ここにあったエドワードの好きな地図、もう持って帰ったの?」
エドワードは頷くと僕に言った。
「欲しいものが有ったら、持っていっていいぞ。どうせ屋敷に持って帰るんだ。少しでも減らしておかないと。」
僕はますますエドワードが黒騎士団への準備を早めている気がして、口を尖らせて言った。
「まだまだ引っ越しまでは半年以上あるでしょう?そんなに慌てなくても!」
するとエドワードが困った顔で、僕を見つめて言った。
「少し早まるかもしれない。どうも不穏な情勢で、今年の卒業式は前倒しになる。」
僕は手の中の獅子の飾りをぎゅっと握りしめて呟いた。
「こんな時にエドワードが慣れない新人騎士になるなんて、僕心配だよ。」
するとニヤリと笑ってエドワードが僕を揶揄った。
「そうか?私はサミュエルが戦闘犬部隊に配属される方が心配だ。きっと1日と持たないだろうからな。でも一体どうして戦闘犬部隊に見学に行こうなんて思い付いたんだ?」
僕はギクリと顔を強張らせた。エドワードの顔を見ていなくて幸いだった。
「…ちょっと前にアル兄様と遠乗りに出掛けたんだ。その時に戦闘犬の牧場に連れて行ってもらった。凄く可愛かったんだよ、子犬は。だから一匹家で飼おうって強請ったら、無理だって言われて。
戦闘犬部隊に行けば会えるからって言われたから、行ったんだけど。きっと僕、アルバートに揶揄われたんだね。ふふ。今度エドワードも一緒に遠乗り行こうよ。黒騎士団に入団する前に。ね?」
エドワードは何を考えているか分からない表情で、僕をじっと見つめて何も言わなかった。
「…エドワード?」
エドワードは僕から視線をずらしてそうだなと言うと、黙りこくってしまった。それから僕はローリーたちの話や、お兄様契約するという話をした。
ガードナー公爵家の次男オスカーと契約すると言うと少し眉を顰めたけれど、何も言わなかった。それより気になる何かがあるみたいだった。遅くなってしまったので、もう帰ろうとソファから立ち上がると、釣られて立ち上がったエドワードは、迷いながら僕に尋ねた。
「…サミュエル。ひとつ聞いてもいいか?…兄上とサミュエル、何かあったかい?」
「だって、まさか戦闘犬があんなに怖いとか思わなかったから。」
今日は久しぶりに、エドワードの寮室に遊びに来ていた。エドワードは最終学年なので、忙しくて中々会えない。久しぶりに会おうと言われて、いそいそと手土産を持って部屋を訪れていたんだ。
僕はエドワードの部屋を歩きながら、少しづつ私物が減っているのを寂しい気持ちで眺めた。
「ここにあったエドワードの好きな地図、もう持って帰ったの?」
エドワードは頷くと僕に言った。
「欲しいものが有ったら、持っていっていいぞ。どうせ屋敷に持って帰るんだ。少しでも減らしておかないと。」
僕はますますエドワードが黒騎士団への準備を早めている気がして、口を尖らせて言った。
「まだまだ引っ越しまでは半年以上あるでしょう?そんなに慌てなくても!」
するとエドワードが困った顔で、僕を見つめて言った。
「少し早まるかもしれない。どうも不穏な情勢で、今年の卒業式は前倒しになる。」
僕は手の中の獅子の飾りをぎゅっと握りしめて呟いた。
「こんな時にエドワードが慣れない新人騎士になるなんて、僕心配だよ。」
するとニヤリと笑ってエドワードが僕を揶揄った。
「そうか?私はサミュエルが戦闘犬部隊に配属される方が心配だ。きっと1日と持たないだろうからな。でも一体どうして戦闘犬部隊に見学に行こうなんて思い付いたんだ?」
僕はギクリと顔を強張らせた。エドワードの顔を見ていなくて幸いだった。
「…ちょっと前にアル兄様と遠乗りに出掛けたんだ。その時に戦闘犬の牧場に連れて行ってもらった。凄く可愛かったんだよ、子犬は。だから一匹家で飼おうって強請ったら、無理だって言われて。
戦闘犬部隊に行けば会えるからって言われたから、行ったんだけど。きっと僕、アルバートに揶揄われたんだね。ふふ。今度エドワードも一緒に遠乗り行こうよ。黒騎士団に入団する前に。ね?」
エドワードは何を考えているか分からない表情で、僕をじっと見つめて何も言わなかった。
「…エドワード?」
エドワードは僕から視線をずらしてそうだなと言うと、黙りこくってしまった。それから僕はローリーたちの話や、お兄様契約するという話をした。
ガードナー公爵家の次男オスカーと契約すると言うと少し眉を顰めたけれど、何も言わなかった。それより気になる何かがあるみたいだった。遅くなってしまったので、もう帰ろうとソファから立ち上がると、釣られて立ち上がったエドワードは、迷いながら僕に尋ねた。
「…サミュエル。ひとつ聞いてもいいか?…兄上とサミュエル、何かあったかい?」
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