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お家騒動

デビューの日

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僕は緊張していた。何なら走って逃げ出してしまいたい。でも僕の手はがっちりと手袋をしたアル兄様に握られてしまっている。僕は何処かの王子様の様なアル兄様を見上げた。

兄様は会う度に背が伸びている気がする。実際今回の正装も、何度目かの手直しになったと嬉しそうに執事がぼやいていた。胸元まで伸びるサラリとした明るい金髪に切れ長の海色の青い瞳。しかも今日は騎士科の白い軍服の正装なので、映える!


うーん、アル兄様が王子様じゃなかったら誰が王子様なんだろう。僕は思わず兄様の手袋をした手をぎゅっと握ってしまった。

「何?サミュエル、どうかしたかい?」

そう言って僕を覗き込むから少し照れてしまう。僕はチラッと兄様を見上げて口を尖らせて言った。

「僕がこの場から逃げ出したいのは、緊張してるせいもありますけど、兄様がかっこ良過ぎて直視出来ないからかも…。」

そう言うと、兄様はクスッと笑って僕を上から下まで、全身をじっくり見つめて言った。


「ふふ。私もサミュエルを攫って逃げ出したいね。サミュエルの可愛さが皆に知られてしまうのは、どうも賛成出来ないからね。でも、デビューしないと貴族にはなれないから、しょうがなく我慢しているんだ。」

ふわっ!最近の兄様の僕への溺愛ぶりは、ちょっと勘違いしそうなくらいだ。僕は顔が熱くなるのを感じながら、そっぽを向いて言った。

「でもようやくデビューのあれこれが今日で終わりになるかと思うと、ホッとします。毎日のマナーレッスンやダンスはしょうがないとは言え、衣装の仕立てのフィッティングが大変過ぎでした。」


僕がそうボヤくと、兄様はクスクス笑って言った。

「母上がひどく張り切っていたからね。エドワードの時は本人もやる気ゼロだったからしょうがないけど、サミュエルはちゃんと母上と衣装についてあれこれ話し合ったらしいね?」

僕は口を尖らせて言い募った。


「だって、そうしないととんでもなく儚げなヒラヒラの衣装にされそうだったんですよ?それは僕の黒歴史になりそうでしたからね?これでも随分、侯爵夫人と意見を擦り合わせして妥協点を見出したんです。

でも、侯爵夫人と沢山お話しできてとても楽しかったです。僕には母様の記憶はありませんけど、胸の奥がポカポカしてくる気がして。」


そう言って兄様を見上げてにっこりと微笑むと、兄様は僕と繋いだ手を持ち上げた。そして僕をじっと見つめながら、僕の手の指先に兄様の柔らかな唇を押し当てて言った。

「…そう。母上もそれを聞いたら喜ぶよ。ね?」

…兄様、その色気は引っ込めてくれませんか?ほら、隣に並んでる御令嬢が真っ赤な顔で倒れそうですよ!?






~お知らせ~
オメガバースで綴る、王様気質のツンデレアルファ『三好家の次男はいつも心配性』完結しました♡
三好家シリーズ三兄弟の、末っ子に続くシリーズ第二弾完結です!
エロすぎ涼介の恋愛模様をお楽しみ下さい☆

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