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お家騒動

アルsideサミュエルのデビュー

「アル、貴族界デビューのサミュエルのエスコートは誰に決まったんだ？」

私はこいつらの執念さえ感じる問いにジロリと目だけを動かして答えた。

「…私に決まってるだろう？他に誰がいるんだ。」

しかしエイデンは食い下がって来た。

「そうは言っても、私も侯爵に手紙をだしたんだ。自己推薦状をね？身内にエスコートされるより、外部の人間にエスコートされる方が良いって誰でも知ってる事だろう？」


私はエイデンの言葉に鼻を鳴らして答えた。

「勿論知ってるさ。でもね、サミュエルのエスコート希望が死ぬほど来ているんだ。それこそ公爵家からもね？あの悲劇のケルビーノ伯爵の世継ぎであるサミュエルは、前評判も凄まじい。

はかられた悲劇の美人伯爵令息だったか？新聞の見出しは様々だ。こんなに注目されている相手をエスコート出来たら、自身の評判も上がるだろうし。


勿論、エイデンやマシューが邪な気持ちが無いのは良くわかっているとも。で、侯爵が出した結論はこうだ。悲劇の伯爵令息は身内の愛を必要としているってね？

まぁ、公爵家を断るのにはそう言うしかなかったって訳だ。」

そう言われたら流石のエイデンも引き下がるしかなかった。私はクスっと笑って言った。


「お前たちに見せたかったよ。積み上げられたエスコートの推薦状を見た時のサミュエルの顔。あの子はあれを見て何て言ったと思う？肩をすくめて言ったんだ。物好きな人が大勢居るんですねって。

サミュエルは自身の価値を全く感じていなくて本当に心配だが、あれが彼の魅力をグッと引き上げてるのは間違いないだろうね。私もたまに屋敷に帰るだけだけど、明らかにあの男爵に裁定が下った頃から、サミュエルは顔つきが変わったよ。


何て言うか表現できないけど…。デビューでサミュエルがお披露目される事が正直心配だよ。今回のデビューで一番の注目度だし、それこそ王様もまたサミュエルの父親とかなり近しい関係だったんだ。

これで、王様の覚え目出度いと知られたら、サミュエルに近づく輩がどれだけになるかと思うと…。私が頭を下げるのは本意ではないけれど、デビューの日はサミュエルに変な奴らが近づかないように守ってやってくれるか？」


私の目の前の友人二人は、顔を見合わせて頷いた。けれども彼らもまた、サミュエルにとっては取り巻き相手になるのは間違いないのだろうと心の中でため息をついたんだ。