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大型アップデート編

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 * * * * *

現在、やっとPKカウントが消えた亜里亜。

首都に在る練習場で、1人寂しく魔法を撃ってスキル上げをしていた。

練習場は、初心者用に安全にスキルを上げるための場所で。

案山子かかしを攻撃すれば、スキル値50までは上がっていく。

これも、今回のアップデートで導入されたシステムだ。

亜里亜は、結局。

霊媒と、複写も捨てて。

代わりに、早口ファスト・キャスト魔力回復マナ・リカバリーを取り入れた。

これによって、亜里亜のスキル構成は。

完全に、攻撃型魔法職となった。


炎の矢ファイアーアロー!。爆炎の矢フレアアロー電撃ライトニング。」

*ファイア・アロー*
*魔法で出来た炎の矢を飛ばして攻撃。消費MP10。

*フレア・アロー*
*爆炎の矢を飛ばして攻撃。相手に当たると爆発して周囲を巻き込む範囲型。消費MP20

*ライトニング*
*雷の魔法で、直線上の相手を貫通しながら突き進む。最大飛距離40メートル。消費MP30。


この3連続コンボで、亜里亜は魔法抵抗値100%の相手でも、平均で120前後のダメージを与える事が出来る。

詠唱時間は僅か2.5秒。しかも、消費MPも3連続で60とリーズナブル。


《この調子なら、あと1時間くらいかな?》

ステータスウィンドウを開き、スキルの上がり方を見る。

再び詠唱に入ろうとした時、横で軽く歓声が上がる。

 
何かと思い、詠唱するのを辞めて、視線を左に向けると。

1人の女性が弓を構えて、案山子かかしに向かって弓を構えていた。

女性の目標にする案山子かかしには、頭の箇所に矢が集中して刺さっている。

その数、6本。しかも、寸分違わずに、額の部分に刺さっていた。

女性から、案山子かかしまでの距離は、およそ40メートルも在ると言うのに凄い腕前だと亜里亜は素直に感心した。

おそらく、周囲で見ている。他のプレイヤー達も、彼女の腕前に歓声を上げてしまったのだろう。

USOでは、魔法と弓の攻撃は。

基本的には、一直線にしか飛んでいかない。

大昔のオンライン・ゲームとかなら、ホーミング機能が有ったりもしたらしいが。

仮想空間内で、自分が立ち回る事が出来るのが普通の、ここ30年以内のVR・MMORPGでは、ホーミング機能は実装されていない。

だからだろうか。

最近のVR・MMORPGでは、弓使いのプレイヤーは少ない。

動き回る的に当てるのが難しい上に。

同じ遠距離攻撃なら、範囲型魔法も使える魔法職が人気なのも頷ける。

と、その時。

弓使いの女性がコチラを向いて、亜里亜と視線が重なる。

亜里亜はニコリと笑い、軽く頭を下げた。

弓使いの女性も、ニコッと笑顔を亜里亜に返すと、構えた弓を降ろし亜里亜の方に向かって歩を進めてくる。

亜里亜は内心で《ん?》と思うが。

弓使いの女性が近づいてくるのを見ている。

女性に視線を合わせて、名前を見ると【キリ】と表示されている。

弓使いの女性キリは、亜里亜の正面に立つと。

「亜里姉!」

そう、叫びながら亜里亜アリアに抱きついてきた。

亜里姉。 自分の事を、そう呼ぶ人物は。

亜里亜の知っている限りでは、1人しか亜里亜は知らない。

「うぇ!キリ君?」

「うん。そうだよぉ~。」

少し、間延びした口調で話すキリ。

「えっ!?えっ!?えぇ~~!!?」

自分の知っている【キリ】と言う人物と。

明らかに姿が違う【キリ】と名乗る目の前の女性とが重ならず。

亜里亜は、絶賛混乱中に陥る。
 
イクルには、6歳年下の弟がいる。

名前はキリ

そう、キリは男の子で在って、決して女性ではない。

一瞬、思考か飛びかけたが。ここは、ゲームの中だという事を思い出す亜里亜。

必死に、思考を呼び戻してキリに話しかける。

「キリ君。女性キャラクターを作ったの?」

そう、ゲームの中なので、別に男性が女性キャラを作っても不思議ではない。

「ん~ん~。違うよぉ~。僕は、リアルと同じ性別で登録したよぉ~。」

「・・・・・ちょと、離れてみようか。」

未だ抱きつついたままのキリを引き剥がし、亜里亜は3歩下がりキリを凝視する。

そして、リアルで会った、自分の中での一番最近のキリを思い浮かべて、目の前のキリと比較する。

確かに、良く見れば。顔立ちは、キリ君だ。

中性的な顔立ちは、リアルでも変わらないが。

身長も、女性にしては高い方の亜里亜と同じくらいの170前後。

髪の長さも、長すぎず短すぎず。

そして、胸。確かに、膨らんではいない。

しかし、亜里亜の知っているキリは、もっと男の子していた気がするが。

亜里亜が判断に迷っていると、キリは亜里亜の傍に寄ると小さな声で亜里亜に伝えた。

「亜里姉の右胸の乳首の側に、大き目のホクロが在る。」

亜里亜は、キリのその言葉を聞くと表情を険しくさせた。

その事を知っているのは、確かに少ない。

と、言うか。身内以外で知っているのは。

イクルと、キリ以外には居ないのだから。

イクルとは、小学校の2年生位までは一緒にお風呂に入っていたし。

キリが小学生3年くらい迄は、一緒にお風呂に入いってた。

「確かに・・・・キリ君だね・・・・・」

「最初から、そう言ってるよぉ~。」

「いや・・・・キリ君・・・・変わりすぎでしょ・・・・・」

「こっちが地だからねぇ~。」

「ってか、アンタ。ゲームなんかしたっけ? 弓道で忙しんじゃないの?」

「ホラ。僕って、特待生枠で大学の入試も無いから。あとは、適当に大会に出て実績さえ出してれば問題ないしぃ。」

ムカつく言い方だが。キリの言葉は事実だった。

キリは弓道での全日本大会の記録保持者で、大学への進路も特待生枠で決まっていたのも事実だった。

「そう言う、亜里姉だって、仕事の方は良いのぉ?」

「私も、やる事はやってるから良いのよ。」

「そっかぁ。ところで、イク兄はぁ?」

キョロキョロと周囲を見渡し、イクルの姿が見えない事に尋ねると。

「自室でスキル上げ中よ。」

「ふぅ~~ん・・・・・・」

ジィーっと、亜里亜を見るキリ。

「はぁ、分かったわよ。連れていけば良いんでしょう。」

「さっすがぁ、亜里姉。」

キリの言葉を聞き終わらないうちに。ゲートを出して中に入っていく。

続いて、キリも亜里亜の出したゲートに入っていく。
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