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番外編・その④
しおりを挟む「とと、ダメ!」
と私を注意するレオ様と私の間に小さな私の騎士が立ち塞がる。
「フェリクス、お父様は別にお母様を苛めているわけじゃあ…」
とレオ様がフェリクスに慌てて言い訳するこの光景も、最近では恒例となりつつある。
そして、
「奥様~!」
と、手を降りながら、我が家の庭に現れた人物。
「アンナ、また来たの?貴女ももう産み月なのだから、家でじっとしてるようにトーマスに言われてるでしょ?」
と私が大きくなったお腹の重たい足取りで歩くアンナに注意すると、
「アンナ!今日はなんだか足が浮腫むから、家でじっとしてるって言ってたろ?!」
と心配そうなトーマスが厨房の窓から見えた愛妻を追いかけて出てくるのも恒例の風景になりつつある。
アンナとトーマスは1年半前に結婚した。
この邸から然程離れていない所に住んでおり、3ヶ月前までは妊婦ながらも通いで私の侍女をしてくれていた。
トーマスとは仲睦まじい夫婦だ。
サミュエルお兄様は1年前に結婚。
ランドン侯爵家の婿になった。
宮廷医師として夫人のアニタ様と忙しく働いている。
アレックスお兄様と言うと……
「ベッキー!今日はお前の好きなマカロンを買って来たんだ。
お兄様と一緒に食べよう。もちろんフェリクスも一緒に」
と笑顔で我が家へやって来た。
結局、フェリクスを妊娠、出産した事でコッカスのタウンハウスでの週1の晩餐は立ち消えとなり、あの時のまま週1でお兄様がランバード邸で夕食を共にする日々が続いていた。
しかもレオ様の居ない日はここに泊まっていく。
まるで自分の家のような振る舞いだ。
「おや?レオナルド。お前は今日は夜勤だろ?どうして此処にいるんだ?」
「…どうしてって。此処は俺の家です。…仕事にはそろそろ出ようと思っていたところです」
…2人は相変わらずあまり仲が良くない。
2人が寄ると触ると言い合いになるのも、見慣れた光景だ。
「レオ様、そろそろ本当に出発いたしませんと。お時間に遅れてしまいます」
そう私が言うとレオ様は渋々といった具合に出かける用意をする。
「とと、バイバイ」
とフェリクスが手を振れば、やっと笑顔になって出かけて行った。
騒がしくも愛しい毎日。私は本当に幸せだ。
それから程なくして、アンナは男の子を出産した。アンナが出産を終えて私に言った事は、
「これで、私も乳母になれます!」
だった。相変わらず私思いの、優しい侍女だ。産まれた子はアンナに良く似ていた。
アントンと名付けられたその子に、トーマスはメロメロだった。
それから約半年後。私は第二子を出産した。名前はレオ様が考えたアロイス。私に良く似た男の子だった。
アロイスはフェリクスと違い、夜泣きが酷かった。私や、レニー、レオ様があやしてもなかなか泣き止まない。
ところがある日、アレックスお兄様が泊まりに来ていたその晩。
私達があやしてもあやしても泣き止まなかったアロイスが、お兄様が抱っこした途端に泣き止んだ。嫌な予感がする。
「アロイスは、私の事が好きなのだな。アロイスはなんともベッキーに良く似ている。夜泣きが酷い所も、私が抱っこをすると泣き止む所も。あぁ、なんて可愛いんだ」
嫌な予感的中である。お兄様はアロイスにメロメロになってしまった。
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