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番外編・その⑤
しおりを挟むそれから程なくして、アンナは男の子を出産した。
アンナが出産を終えて私に言った事は、
「これで、私も乳母になれます!」
だった。
相変わらず私思いの、優しい侍女だ。
産まれた子はアンナに良く似ていた。
アントンと名付けられたその子に、トーマスはメロメロだった。
それから約半年後。私は第二子を出産した。
名前はレオ様が考えたアロイス。
私に良く似た男の子だった。
アロイスはフェリクスと違い、夜泣きが酷かった。
私や、レニー、レオ様があやしても、なかなか泣き止まない。
ところがある日、アレックスお兄様が泊まりに来ていたその晩。
私達があやしても、あやしても、泣き止まなかったアロイスが、
お兄様が抱っこした途端に泣き止んだ。嫌な予感がする。
「アロイスは、私の事が好きなのだな。アロイスはなんともベッキーに良く似ている。
夜泣きが酷い所も、私が抱っこをすると泣き止む所も。
あぁ、なんて可愛いんだ」
嫌な予感的中である。
お兄様はアロイスにメロメロになってしまった。
ある日、レオ様がジョシュア様を連れて邸へ帰ってきた。
ジョシュア様は隣国での商売が上手くいき、なんとこの国にも商会の支店を置く運びになったと言うのだ。あの時語っていた夢がまた1つ叶ったという事だ。
はっきり言って、そこらの低位貴族よりお金持ちになりつつあるジョシュア様。きっと商才がお有りだったのだろう。
しばらくこの国に滞在するとの事で、我が邸にお泊まり頂く事になった。
さらに我が家は賑やかになっていった。
アロイスが3歳になる頃、アレックスお兄様からコッカス伯爵家にアロイスを養子に欲しいとの打診を受けた。
もちろん、お兄様が伯爵を継いだ後の話だ。
私とレオ様はアロイスの気持ちに任せる事にした。
アレックスお兄様もアロイスの意思を尊重するとお約束してくれたし、アロイスが自分で考えられるようになるまでこの話は私達だけの心の中に仕舞う事にした。
そして今私の腕の中でスヤスヤと寝息をたてている娘のソニアは私達の第三子だ。
私は素敵な旦那様。そして3人の子どもに恵まれた。
私があの時、王都の街を歩いてなければ、すれ違う事もなかった人が私にたくさんの幸せをくれた。
私もこれから、もっともっとレオ様を幸せにしたい。
それが私達の運命の答えだと思うから。
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これで、「とりあえず結婚してみますか?」
は完結となります。
拙い文章ではありましたが、最後まで読んで下さいました皆様に、心から感謝いたします。
現在、他の作品も執筆中です。お時間が御座いましたら、そちらもよろしくお願いいたします。 君影草
応援ありがとうございます!
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