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その137
しおりを挟む私とクリス様は結婚した。
もちろん、国民全員が祝福している訳じゃない。
特に、貴族の中にはクリス様にあからさまな不信感を表す者もいた。
それでも、クリス様は王太子として、軍隊の指揮官として、今まで通り、いや、今まで以上に自分の役割を果たした。
しかし、私が王太子妃になった事で、変わった事がある。
それは、人間が治める国との関係性だ。
人間を良く思わない獣人が存在するのと同様、獣人を良く思わない人間が存在する。
国と国の利益の為にベルガ王国と国交や貿易をしている国はわりと多い。
しかし、国交があるとは言え、国民の往来はかなり少なかった。
私が王太子妃となってから、そういった国から王侯貴族が、ベルガ王国へ来訪する事が増えた。
そして、それに伴い国民の往来も増えていった。
それを良しとしない人も確かに居たが、宿を営む者や、観光業を主たる産業にしている領地は、それを歓迎し喜んだ。
貴族のプライドは理解出来なくもないが、柔軟な考えもまた必要なモノなのだと、私もよく考えるようになった。
それはクリス様も同じだ。
クリス様は常々考えていた事を行動に移した。
「今後は侵略による領土拡大を一旦中止とする」
軍部や、昔の考え方の貴族からの反発は大きく、クリス様に反発する勢力も現れた。
しかし、クリス様はそれにめげる事なく、国土の拡大より、国内を豊かにする政策を訴え続けた。
「クリス様、おかえりなさいませ。お疲れ様でした。」
私達が結婚して1年ほど経つ頃には、やっとクリス様の案が通り、賛同する貴族もかなり増えた。
国内を豊かにしたいという政策を当然のように平民は喜んで受け入れており、クリス様は陛下よりも国民の人気が高くなっていた。
それに伴い国王へと推す声も大きくなってきた為に、クリス様は後半年もすれば国王になる事が決まっている。
「体調はどうだ?吐き気は?」
「大丈夫です。 もう悪阻も軽くなってきましたから」
その頃には私は第一子を妊娠していた。
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