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その138

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「元気な男の子にございます!」


私はクリス様に良く似た男の子を出産した。

すでに、クリス様は国王となり、忙しい毎日を送っていたが、私が産気付くと、出産の為に用意された部屋の前に張り付いて、飲まず食わずで、出産が終わるのを待ってくれた。


「シビル!大丈夫か?」

私は出産でヨレヨレだが、そんな私に愛しそうに頬擦りをする、クリス様。

「クリス様…私、汗をかいておりますので…頬擦りは…」
やんわりと離れて欲しいと告げたつもりだったのだが、

「シビルの無事を体全体で確認したいんだ。あぁ、こんなにヨレヨレに…」

ヨレヨレって言葉にしないで欲しい。

「子ども…息子を見てあげて下さい」
と私が微笑むと、

乳母はおくるみに包まれてホギャホギャ泣いている息子を連れて来てくれた。

クリス様は、

「…立派な耳と尻尾があるな…獣人と人間のハーフでも獣人寄りの特徴が出るからな」

確かに、イヴァンカ様のお子様達も立派な耳と尻尾があった。

私はクリス様の特徴を持って生まれてくれた息子が愛しくて仕方なかった。

クリス様が国王だからといって、息子が王太子になるとは限らない。

クリス様もそこには全く拘っていなかった。基本的に、「成るように成る」というスタンスだ。

私も、そこはクリス様と同意見だった。



私は王族には珍しく自分の手で子育てを行った。

うちの実家が貧乏で乳母や侍女を雇う余裕がなかったので、兄も私も妹も母の手で育てられた。
それが良かったとか、悪かった…とかではなく、私がそれしか知らなかったからだ。

それに妹が赤ちゃんの頃、おしめを替えたり、離乳食を食べらせたりしたのは私だ。赤ちゃんの世話には慣れていた。


もちろん、私には王妃としての執務があるため、その時には遠慮せず乳母に任せた。

クリス様は私が息子の世話をしているのを興味深そうに見ていたが、そのうち、自分も手を出したくなったのか、私に訊きながら、育児を手伝ってくれるようになった。

自慢ではないが、クリス様は良き夫であり、良き父親だ。

私は王妃という重責も、クリス様と息子のお陰で乗り切る事が出来ている。

そんな中、私は2人目を妊娠した。






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もう後、1、2話で完結になる予定です。

もう少し、お付き合いしていただけると嬉しいです。
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