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その102

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翌日の昼食。

カッチカッチになった父と共に、クリス様の待つ会場へと案内された。

父は手と足が同時に出ている。それで良く歩けるな…と私は思った。

私達が部屋へ入ると、クリス様は、

「あぁ!貴方がモンターレ伯爵か!昨日は挨拶も出来ず申し訳なかった」
と、立ち上がり父を出迎える。

相変わらず父は手と足が同時に出ていて、私はハラハラとしながらその様子を見守った。

「は、はじめまして。アウグスト・モンターレと申します。いつも、む、娘がお世話になっておりま…」
と言いながら頭を下げる父に、

「堅苦しい挨拶は抜きで。これからは私の義父になるのだからな!」
と豪快に父の背を叩くクリス様。

2人の様子は対照的で、謎に陽気なクリス様と可哀想な程恐縮する父。

私は、

「王太子殿下、今日はお招きありがとうございます」
と2人の様子に割って入った。

「本来なら、昨日出迎える予定であったが、視察が長引いてしまった。晩餐会に出席されるかと思っていたが、断られたと聞いてな。
急遽、この席を用意したんだ。昼食で申し訳ないな。夜は、ライル殿下と約束があって」
とクリス様が言うと、

父は力なく、

「ちゅ、昼食で十分でございます。ただでさえ緊張しております故」
と額の汗をハンカチで拭いながら答えた。

晩餐になれば、フルコース。その分時間は長くなる。
昼食ですら、父の心臓が持つのか心配だ。

父はお人好しで、穏やかだが、社交が上手な訳じゃない。
母の方が、もう少し度胸があるんじゃないかと思うぐらいだ。

貧乏伯爵で、特別、社交が必要であったわけではない我が家が急にベルガ王国の王族と縁付くなど、人生何が起こるかわからないものだとしみじみ思う。

昼食では、クリス様が一方的に父に話しかけ、
父が『あー』とか『うー』とか言っているのを見かねた私が話の続きを引き受けるといった具合だ。

結局、私とクリス様が喋っているようなものだが、それでも父はガチガチで、緊張で喉が渇くからか、水を何杯もお代わりする羽目になっていた。
昼食がなんとか終わり、クリス様と別れた父が直ぐ様ご不浄に飛び込んだのは言うまでもない。


ミシェル殿下がライル殿下とゆっくり話したいと言うので、私も父と話す時間を取らせて貰った。

家族の事、領地の事、領民の事。父から気になっていた事を聞きながらお茶を飲んでいると、

「あぁ、そうだ。お前、オーランドの事を覚えているか?」
と父が私に訊ねる。

…覚えているも何も…私の元婚約者ではないか。
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