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その103
しおりを挟むオーランド・キャンベル子爵令息。
キャンベル子爵の嫡男だ。
我がモンターレ伯爵領と、キャンベル子爵領とは隣り合っており、昔から何かと交流があった。
伯爵家とはいえ、うちは元々裕福ではなく、キャンベル子爵家の方が貴族らしい生活をしていたように思う。
私とオーランドは同じ歳。
両家もなんとなく縁付いても良いよね~っていう緩い感じで決められた婚約者だった。
特にお互い利益があるって程でもなかったし。
2人の間に恋愛感情など皆無だ。
幼馴染みって言う程仲良しな訳でもなく、顔馴染みという言葉がしっくりくるぐらいの関係。それが私とオーランドだった。
一応、婚約者としての義務からお互いの誕生日には贈り物を。2、3ヶ月に1度、気が向けばお茶を共にする程度。
同じ学園に通っている時も、殆んど交流はなく、学園の行事で舞踏会などがあると、私をエスコートするオーランドを見て、初めて周りも2人が婚約者だったのかと気づく始末。
しかし、お互い嫌ってはいなかったと思う。
興味はあまりなかったが、いずれはこの人と結婚して家庭を持つんだなっていう自覚はあったし、それを想像したからといって、気分が落ち込む事もなかった。
父の借金(保証人としてだが)のせいで持参金を用意出来なくなった我が家から婚約の解消を願い出た時にあっさり了承された時には、それはそれでなんとなく寂しかった。
だからといってさめざめと泣くといった事もなかったが。
「オーランドがどうかしたの?」
「実はお前と婚約解消した後、他の子爵令嬢と結婚したんだが…最近、キャンベル子爵家のメイドと浮気して、そのメイドと駆け落ちしたんだと」
「え?あのオーランドが?嘘?!」
「嘘みたいだろ?あのオーランドがだよ」
…オーランドはあまり他人に興味を持つタイプではなかった。
小さな頃から彼は昆虫にしか興味がなかった。
私は昆虫に興味はなかった。それが幼馴染みだと言うには憚られる関係の所以である。
そのオーランドが浮気?しかも駆け落ち?
「ねぇ…そのメイドって…昆虫じゃないわよね?」
「シビル…当たり前だろう。オーランドだって人間なんだ。恋ぐらいするさ。まぁ、私も聞いた時は信じられなかったがな」
…オーランドが駆け落ち…。今だに私は信じられない気持ちでいた。
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