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その101

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私は、ミシェル殿下の支度をする。

今日は、アルティアのライル殿下を歓迎する晩餐会がある為だ。

「婚約破棄された王女が、晩餐会に出る必要あるのかしら?」

ミシェル殿下の疑問も最もだ。
アルティア王国の王女として同席する訳だが、元々はアーベル殿下の婚約者としてこの国に入国し、今は婚約破棄された身だ。
なかなかに複雑な立ち位置と言える。

「それに、あんたも。もう王太子殿下の婚約者なんでしょう?私の世話なんてしてて良いの?」

「私は、殿下がランバンに出立するその時まで、専属侍女です。それは変わりませんから。…さぁ、出来ました」

支度を終えた殿下が鏡を見て、

「このイヤリング、もう少し小さな物に代えて?晩餐会であまり音がするのも良くないわ」
と殿下がイヤリングを外す。

前なら、もっと派手な物をと言っていただろうに。

私は、

「そうですね。失礼いたしました。では、こちらの真珠にいたしましょうか?」
と殿下に見せると、

「そうね。それなら良いわ」
と頷いた。

殿下にとって、ベルガ王国での想い出はきっと楽しい物ではなかっただろう。
でも、殿下を成長させる事になったのは間違いない。


私は殿下と共に晩餐会の会場に向かう。入り口には、ライル殿下が待っていた。

「お兄様、お待たせいたしました」
とミシェル殿下が微笑むと、

「なんだか、ミシェルが大人になったように感じるよ。これなら、ランバンでもやっていける」
とミシェル殿下をエスコートする為、腕を差し出した。

私は2人の背中を見送ると、別の入り口から会場に入った。

晩餐会は変な空気になる事もなく終了した。
色々と思う所はお互いあるだろうが、全ては丸く収まった。イヴァンカ様のお陰だ。

この晩餐会に父も是非にと言われたらしいが、王族だらけでは、食事も喉を通らないと断ってしまった。…多分、正しい選択だと思う。

その代り、明日の昼食は父と私とクリス様でとることになった。その時の父を思うと少し胃が痛い。


晩餐会を終え、ライル殿下は別の客間へと案内された。

私とミシェル殿下と護衛が殿下の部屋へ戻っていると、後ろから、

「ミシェル王女!」
と呼び止める声がし、私達は振り返った。

…アーベル殿下だ。

アーベル殿下は晩餐会には出席していなかった。流石に婚約破棄した元婚約者との同席は憚られたのだろう。

アーベル殿下は足早にこちらに駆け寄ると、

「ずっと…謝らなければと思っていた」
とミシェル殿下を見つめた。

ミシェル殿下は、

「…初めて私の目を見て下さいましたね」
と微笑んだ。

「…ッ」
黙り込むアーベル殿下に、

「私が未熟なばかりに、ずっと殿下に不快な思いをさせてしまっていた事、私も申し訳なく思っております。
しかし、殿下。王族がそんな簡単に謝罪を口にする物ではありませんわ。
私は、ランバンで幸せになります。アーベル殿下にも良いご縁がありますよう、お祈りしております」

そうミシェル殿下は言うと、立ち尽くすアーベル殿下を置いて、

「シビル…部屋へ戻りましょう」
と歩きだした。

私はアーベル殿下に頭を下げると、振り返る事なく歩いていくミシェル殿下を慌てて追いかけた。
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