上 下
54 / 97
Mission2 げきまじゅおくちゅりを克服せよ!

54.お父様の説教

しおりを挟む
 さすがに二時間超え……しかも同じフレーズが延々と繰り返されるヘビーローテーション説教は、聞いているフリであっても疲れてくる。

 オトナでもけっこうくるのに、六歳児の肉体と体力しか備わっていない今のあたしには、なかなかの試練だった。

 寝台の脇で立っているライース兄様の眉が、困惑しているかのようにへにょんと下がりっぱなしだ。

 父親の説教がなかなか途切れないので、なだめるタイミングがみつからないのだ。

 しかし、ここで強引に仲裁に入って――ライース兄様が口をはさむことによって――逆にお父様を興奮させてしまい、変なところに飛び火したらまずいと考えているのだろう。
 あたしでも考える。

 そういうのを前世では『ヤブヘビ』という。

 矛先があたしからライース兄様に変更され、後継者としての自覚が足りないだの、どうだこうだのと再燃されても困る。

 ライース兄様……ものすごく、懸命なご判断だと思います。
 なので、ライース兄様の援護は期待できない。
 隣室に引きこもっているカルティなど、論外だ。戦力外だ。

 こうなってしまったら、もう開き直って、お父様が満足するまで、ひたすら耐えるしかないのだろう。

 だた、ちょっと……お父様の説教が想像以上に長くて、あたしはそろそろ疲れてきました。
 アドルミデーラ侯爵って、こんなにネチッコイ性格だっただろうか?
 ゲームとここの世界には、少しズレがあるのだろう。

 ぼんやりとしだした頭で、あたしはアドルミデーラ侯爵について考えてみる。

 アドルミデーラ侯爵は、アドルミデーラ家の家長であり、広大な領地を所有する裕福な領主であり、攻略キャラの父親で、王太子の伯父……。

 攻略キャラの脇役、サブキャラで、それ以上のことは考えてもなかった。

 アドルミデーラ侯爵が、こんなにも説教大好きなヒトだとは知らなかった。

 お父様、説教はその辺りで終了して、娘の体力の限界についていい加減、気づいてほしいです。
 お願いです。
 それこそ、病み上がりだということを忘れているんじゃないだろうか、というくらい、お父様の説教には遠慮がない。

 ベッドで聞いているから、まだなんとか耐えているんだけど、これが、たとえば、お父様の執務室に呼び出されて、立ったままで説教を聞く……となると、貧血で倒れてしまうレベルです。

 朝礼で校長先生の長い話を聞かされて、貧血で倒れるようなものです。

 でも、こんなにしゃべってばかりで、お父様は疲れないのだろうか……と、逆に心配になってきた。
 水も飲まず、二時間以上、延々としゃべりつづけて喉が辛くないのだろうか?

 高スペックの攻略キャラの父親も、それなりにスペックが高いんだろうね……。
しおりを挟む
1 / 4

この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!


処理中です...